ジョセフ・オブライエン調教師はこれまでも果敢に海外遠征に挑んできたが、今見据えているターゲットは2月22日(土)に開催されるサウジカップデーだ。今回、自身のキャリガノッグ調教場から3頭が遠征し、アイルランド勢の大半を占めることとなった。
メルボルンカップは2度制覇の実績を誇るジョセフ・オブライエンはIdol Horseの取材に対し、アルリファー、トラストユアインスティンクト、アップルズアンドバナナズの3頭がレースの約1週間前にリヤドへ到着する予定であることを明かした。
アルリファーには日本のレジェンド、武豊騎手が再び騎乗し、厩舎の若手エースであり2度の見習い騎手王者に輝いたディラン・ブラウン・マクモナグル騎手が残る2頭の手綱を取る。
アルリファーは昨年10月のG1・凱旋門賞で11着に敗れて以来の実戦となるが、G1・ヴィンセントオブライエンナショナルステークスを制した実績を持ち、昨夏のG1・エクリプスステークスではシティオブトロイの2着、さらにG1・ベルリン大賞では再び勝利を挙げている。

この5歳馬は、総賞金200万ドルのG2・ネオムターフカップ(2100m)に出走予定で、同厩舎のトラストユアインスティンクトも同レースに参戦する。他には昨年のネオムターフCの1〜3着馬であるスピリットダンサー、キラーアビリティ、カリフに加え、凱旋門賞でアルリファーの1馬身後ろだった矢作芳人厩舎のシンエンペラーも名を連ねる見込みだ。
「アルリファーの仕上がりには満足しています。凱旋門賞ではうまく展開が向きませんでしたが、それも競馬ですし、それが凱旋門賞です。立て直して今回のレースに向けて順調に調整できています。サウジのコースは左回りで、馬場も良い状態だと思いますし、問題なく対応できるはずです」とオブライエン調教師は評価する。
武豊騎手は2週間の騎乗停止を経て復帰し、2月9日(日)の東京競馬場で2勝を挙げた。55歳の武豊騎手は、オブライエン厩舎のアルリファーには凱旋門賞前のフランスで追い切りに騎乗しており、その経験が今回のサウジ遠征でもプラスに働くと陣営は期待している。
「武豊騎手がアルリファーに騎乗します。フランスで調教にまたがり馬の感触をつかんでいますし、彼の力を借りられるのは素晴らしいことです。こうしたレースでは実戦経験に勝るものはありません。すでに競馬で騎乗して馬を理解してくれているのは大きなアドバンテージになります」
また、同厩舎のトラストユアインスティンクトも同じG2・ネオムターフC(2100m)に参戦予定だ。オブライエン氏は「イタリアのG2・ローマ賞で惜しくもアタマ差2着と善戦しました。魅力的な馬で、今回も良いパフォーマンスを見せ、賞金を持ち帰ることを期待しています」と前向きに話した。
トラストユアインスティンクトは昨シーズンを通して着実に成長。前年の冬は障害レースにも挑戦し、J.P.マクマナス氏の所有の同馬はアイルランド・ネース競馬場のG3・ジュベナイルハードルで3着に入った。しかし、その後は平地競走に再転向し、レパーズタウン競馬場のG3戦を制し、ローマ賞ではプティマリンの2着になるなど飛躍を遂げた。
「3歳時に平地でデビューし、カラ競馬場のメイドンを勝って順調に成長していましたが、その後、障害へ転向したものの期待ほどの結果は出ませんでした。再び平地に戻してからは着実に上向き、前走のパフォーマンスはキャリア最高と言っていい内容でした」

一方、アップルズアンドバナナズはG3・サウジダービーで、未知の領域となるリヤドのダートコースに挑む。
「ダートは未知数ですが、丈夫でタフな馬ですし、好感が持てる安定した走りをします。ゲートを出るのも速く、ダート適性を示す要素は持っていると思います」
この牡馬は昨シーズン、アイルランドとフランスで3連勝を飾り、最終戦ではフランス・サンクルー競馬場のG1・クリテリウムアンテルナシオナル(重馬場・1600m)でエイダン・オブライエン厩舎のトウェインとマウントキリマンジャロに次ぐ3着。サウジダービーと同距離の1マイル戦で確かな実力を示した。
「重馬場はそれなりにこなしたと思いますし、G1で3着なら決して悪くありません。ゴールまでしっかり走り抜き、強い馬たちを相手に健闘していました。いいシーズンを送った締めくくりとして満足のいく結果でした」
アップルズアンドバナナズの母は故アガ・カーン殿下が生産・所有していた牝馬で、祖母は同オーナーの名馬シンダー(英ダービー馬、凱旋門賞馬)の半妹という良血馬だ。
「血統的に奥深さがあり、スタミナも豊富。父は今や名種牡馬となったウートンバセットで、血統通りのパフォーマンスを見せている」と同氏は高く評価する。
アルリファーやアップルズアンドバナナズにとって、4月5日に行われるドバイの大舞台も視野に入るが、まずはサウジでの結果が焦点となる。
「アップルズアンドバナナズにとってはUAEダービーも選択肢になり得ますが、まずはサウジの結果を見てから判断します。アルリファーについては一戦一戦を見ながらですが、もしサウジで良い結果が出ればドバイを視野に入れるのは自然な流れですし、その先はヨーロッパのシーズンに向かう形になるでしょう」とオブライエン氏は今後の展望を語った。
なお、アイルランド勢としてサウジカップ開催に参戦するもう1頭は、G2・レッドシーターフハンデキャップ出走予定のエイダン・オブライエン厩舎のコンティニュアスとなっている。