ベン・トンプソン騎手が香港ダービーの出走権を手にするまでに要した時間は、わずか1分47秒足らずだった。先週日曜日、香港クラシック戦線に急浮上したバンドルアワードに騎乗し、落とせない一戦だったクラス2戦を制した際の騎乗ぶりは、まさに『ダービー』を予感させるものだった。
この勝利により、ジョン・サイズ厩舎のこの4歳馬はレーティングを11ポイント引き上げ、86まで上昇。香港移籍後の4戦1勝という戦績だけでなく、ヴィクトリア州で走っていた移籍前の4戦3勝という実績も評価された形となった。
さらにサイズがトンプソンを引き続き騎乗させると決定したことで、トンプソンにとっても香港で自身の可能性を証明し、本格的に評価を高める絶好の機会が訪れた。現在は6勝、リーディング争いでは26人中20位という立場にいるが、香港競馬界の中核とも言えるレースにチャンスをつかんで挑むことになったのだ。
バンドルアワードと共に挑む2025年の香港ダービーは、かつてのゴールデンシックスティとヴィンセント・ホー騎手、デザインズオンロームとトミー・ベリー騎手、ルガーとザック・パートン騎手がそうであったように、トンプソンにとっても飛躍のきっかけとなるかもしれない。
もし、ホーがゴールデンシックスティで勝利していなければ、今のような成功を収められたかどうかは分からない。ベリーもまた、デザインズオンロームとの勝利がなければ、香港でのフルタイム契約を勝ち取ることは難しかっただろう。そしてパートンにとっても、ルガーの代打騎乗で掴んだダービーで、サイズのダービー3勝のうちの2勝目の制覇がなければ、後にサイズとの強固な関係を築くことはなかったかもしれない。
トンプソンは、3月23日に行われる2000mの大一番が持つ重要性をしっかりと理解している。
「オーストラリア出身の私の考えでは、香港ダービーは香港の人々にとってのメルボルンカップのような存在です。もし勝つことができれば、これまでの競馬人生で最大の成果となるでしょう」とトンプソンはIdol Horseに語った。
「香港で騎乗するようになって12ヶ月が過ぎましたが、昨年のダービーデーにも騎乗する機会があったのは幸運でした。そのときの熱気は特別で、ダービーには他のレースにはない独特の雰囲気がありました。このレースを勝つことはすべてのオーナーの夢。だからこそ、騎手にとっても特別なレースであるべきなのです」

27歳のトンプソンは、バンドルアワードと意外な縁を持っている。このセン馬は、オーストラリア時代にはプリンスプローンの名で走っており、香港の名血統アドバイザーとして知られるデヴィッド・プライス氏が1歳時に見出した馬だった。
その後、香港への移籍に向け、アラン&ジェイソン・ウィリアムズ厩舎で調教されていたが、彼らはキャリア初戦と2戦目で手綱を取った名手、クレイグ・ウィリアムズ騎手の父(アラン)と兄弟(ジェイソン)である。
「彼らは自分が見習い騎手だった頃の師匠でした。だからこそ、この馬との縁には特別な思いがありますし、こうして手綱を任されるのはまさに運命のように感じます」とトンプソンは語る。
「彼がデビューから4戦を走ったのと同じ厩舎で学んでいたことを考えると、何かしらの縁があるのかもしれません。実は、騎手になる前にクレイグのバレット(身の回りの世話役)を短期間務めたこともありました。彼の専属のバレットが不在のときの代理でしたが、それ以来ずっと連絡を取り合っています。騎手としてだけでなく、人としても、クレイグのような存在に電話一本で相談できるというのは、とても貴重なことです」
トンプソンはミック・ケント厩舎で騎手としてのキャリアをスタートさせたが、見習い1年目の終わりにウィリアムズ厩舎へ移籍。両親はグレイハウンド(ドッグレース)の調教師で、15歳になるまで馬に乗ったことがなかった。
その後はキャリアを積み、ヴィクトリア州からクイーンズランド州へと活動の場を広げた。2023年にはG1・オークリープレートを制し、2024年2月に香港からのオファーを受けた。
だが、香港は評判通りの厳しい世界だ。昨シーズン、トンプソンは5ヶ月間で7勝を挙げまずまずの結果を残したものの、今シーズンは半年が経過した時点でまだ6勝。しかし、12回のリーディングトレーナーに輝いたジョン・サイズ調教師は彼を支える大きな存在となっている。
「どの騎手も上位に食い込みたいという気持ちは当然あります。でも私の考えとしては、与えられたチャンスに向けてしっかり準備をし、ベストを尽くすことがすべてです。どの地域でもそうですが、特に香港では長期的な目標を見据えることが重要です。短距離戦ではなく、ほとんどの場合マラソンのようなものです。自分は必要なだけ粘り強くやっていく覚悟です」
「サイズ調教師は、騎乗に関して求めることを非常に明確に伝えてくださいます。そして、ジョン・サイズという名伯楽のもとで乗れること自体が大きな自信につながります。こうしてチャンスをもらえるのは本当にありがたいことです」
その自信は、トンプソンがバンドルアワードを外枠から最後方に落ち着かせ、リズムよく折り合いをつけた騎乗ぶりにも表れていた。シャティンの直線400メートルを22秒11の鋭い末脚で駆け抜けたのは、まさにサイズ調教師が求めた通りのプランだった。
「香港でのもう1つの勝利したレースでは、前めの位置から競馬を進めていましたが、今回は一転して後方から強烈な決め手を見せました。こうして異なる戦法ができるようになったのは大きな強みですし、道中の落ち着きぶりとエネルギーの温存、そして直線での脚の使い方、すべてが印象的でした。ダービーに向けても、大きな武器になるはずです」
トンプソンは、デビュー戦のバンドルアワードの手綱を任されていたが、その後はアレクシス・バデル、ブレントン・アヴドゥラ、ジェームズ・マクドナルドといったトップジョッキーたちが代わる代わる騎乗。彼が再び騎乗できる保証はなかった。それでも、サイズ調教師はこれまでも実力のあるジョッキーには、たとえ序列の低い立場からでもチャンスを与えてきた歴史がある。
「ずっと、また乗れることを願っていました」とトンプソンは語る。「この馬は非常に成長が見込める馬だと感じていましたし、デビュー戦で外枠から1400メートルを走ったときの感触からも、ただの馬ではないと確信していました。こうして再びチャンスをもらえて、本当にありがたいです」