日曜日に行われるG1・凱旋門賞。芝の世界最高峰とも言われるレースだが、日本勢にとっては今年で23度目の挑戦となる。
今年こそエベレストの頂上に登り詰める、日本陣営はそうした期待を胸にロンシャンへと挑む。天気予報では小雨にとどまり、馬場が極端な重馬場になる可能性は低いと見られる。今年のフランス、イギリス、アイルランド勢も決して無敵ではなく、勝機は十分にある。
日本からはクロワデュノール、アロヒアリイ、そしてビザンチンドリームの3頭が参戦。いずれもフランスの前哨戦を制して凱旋門賞に挑む彼らは、まるでエベレスト初登頂を成し遂げたサー・エドモンド・ヒラリーのような存在になる可能性を秘めている。
戦績だけ見れば、日本ダービー馬のクロワデュノールが最有力と映る。9月中旬に行われたG3・プランスドランジュ賞(2000m)ではタフな馬場を克服して僅差で勝利。より速い馬場で距離が2400mに延びれば、この馬にとって有利に働くはずだ。
しかし、ある一つの統計では、クロワデュノールは日本初の凱旋門賞制覇から最も遠い位置にいる。その指標が『馬体重』だ。日本や香港ではレース当日の基本データとして必ず公表されるが、欧米ではほとんど知られていない。
オーストラリアンダービー馬のアエリアナを見ればその馬体が小柄なのは一目瞭然であり、BCクラシック馬のフライトラインが巨漢馬だったことは誰もが知っている。だが、実際の体重を正確に把握している人は少ない。
日本馬3頭はフランス到着後、公には馬体重が公表されていないが、出国前の数値は存在する。ビザンチンドリームはG1・天皇賞(春)2着時に454kg、アロヒアリイはG1・皐月賞8着時に492kg、クロワデュノールはG1・東京優駿優勝時に504kgだった。
興味深いことに、軽い馬体重は過去の凱旋門賞で好成績と相関している。
これまで日本からは35頭が凱旋門賞に出走しており、その出国前の馬体重は442kgから536kgの範囲にあった。興味深いことに、日本馬で上位6頭に入った全てが480kg未満だ。
470kg未満で掲示板(5着以内)に届かなかったのは、1969年に初出走したスピードシンボリのみ。当時の日本競馬の実力を考えれば、24頭立て23番人気という低評価からレヴモス相手の11着に入った走りは、期待を上回る成績だったといえるだろう。
2011年には462kgのナカヤマフェスタも11着だったが、前年の2010年にはワークフォースにアタマ差の2着と、日本馬史上最も制覇に近づいた一頭となった。
伝説級の名馬、ディープインパクトは35頭中最軽量の442kgながら、3位入線に終わった。その後、呼吸補助薬イプラトロピウムの陽性反応で失格となった。
2着のオルフェーヴル(456kg、464kg)、エルコンドルパサー(472kg)、4着のスルーセブンシーズ(446kg)、キズナ(478kg)らが、この「軽い馬体重が有利」という仮説を裏付けている。逆に480kgを超える日本馬が7着以内に入った例は、過去に一度もない。
この理論が本当に正しいのかを検証するため、日本や香港で出走し、馬体重が公開されている歴代の凱旋門賞馬11頭を比較してみると、さらに興味深い結果が見えてくる。
6頭(ヴァルトガイスト、デインドリーム、アーバンシー、ソレミア、トニービン、オールアロング)は480kg未満、3頭(モンジュー、バゴ、エリシオ)は480~490kg、そして500kgを超える大型馬はわずか2頭(キャロルハウス、ディラントーマス)しかいなかった。
統計的に見れば、軽い馬がわずかながら有利といえるだろう。ただし、凱旋門賞制覇には他にも数多くの要素が絡む。
それでも、もしビザンチンドリームが勝利すれば、今後は軽量な日本馬が次々とパリに挑む姿が見られるかもしれない。