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2025 オークス: G1プレビュー

競馬場: 東京競馬場

距離: 2400m 

賞金: 3億2650万0000円 (226万2835米ドル)

日本の最強3歳牝馬たちが、今週日曜日、東京競馬場の芝2400mに集う。G1・優駿牝馬(オークス)は、牝馬クラシックの頂点を決める伝統の一戦である。

1938年の創設以来、名牝たちがその名を刻んできたこのレースの勝ち馬には、エアグルーヴ、シーザリオ、ブエナビスタ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ、ラヴズオンリーユー、そしてリバティアイランドといった歴代のスター牝馬が名を連ねる。

レースの主役: エンブロイダリー

エンブロイダリーは、桜花賞に続くこのレースで2冠制覇を狙う。これまでに17頭の牝馬がオークスと桜花賞の2冠を成し遂げており、その偉業に続けるか注目が集まる。

桜花賞ではジョアン・モレイラ騎手を背に鮮やかな勝利を収めたが、そのモレイラ騎手は今週末、ブラジル・リオデジャネイロのガベア競馬場で騎乗予定。今回はクリストフ・ルメール騎手に乗り替わる。ルメール騎手は、オーストラリアでローシャムパークに騎乗していたため桜花賞を欠場していたが、ここで待望のコンビ再結成となる。

エンブロイダリーはマイル戦で輝きを放ってきたが、最も印象的な勝利は昨年の1800m戦だろう。新潟の芝1800mで、2歳コースレコードを1秒近く更新しての勝利を収めた。これは、同条件でイクイノックスやチェルヴィニアといった素質馬が勝っていることを思えば、相当なパフォーマンスだったと言える。

母系には2009年のオークス馬ブエナビスタがいるとはいえ、血統的には必ずしも2400m向きとは言えない。しかし、そのクラスの高さは誰もが認めるところであり、距離の壁を乗り越え、再び戴冠を果たす可能性は十分だ。

正念場の逸材: アルマヴェローチェ

1995年、上村洋行騎手が唯一騎乗したオークスではヤングエブロスで最下位に終わった。あれから30年、今度は調教師として初のオークス挑戦を迎える。送り出すのは阪神ジュベナイルフィリーズの覇者アルマヴェローチェだ。

この10年で、阪神JFとオークスの2歳女王・3歳女王の二冠を制したのは、ソウルスターリングとリバティアイランドの2頭のみ。そこに続く可能性を秘めた存在である。

桜花賞ではエンブロイダリーにクビ差まで迫ったアルマヴェローチェ。キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制したハービンジャーを父に持ち、血統的には中長距離への適性により強みがある。オッズ面でも本命候補の一角として注目される存在だ。

騎乗するのは岩田望来騎手。3度目のオークス騎乗で、2014年にヌーヴォレコルトで勝利した父・康誠騎手に続くクラシック制覇を狙う。

Arma Veloce wins the Hanshin Juvenile Fillies
ARMA VELOCE, MIRAI IWATA / G1 Hanshin Juvenile Fillies // Kyoto /// 2024 //// Photo by Hiroki Yamanaka

伏兵の一撃: カムニャック

2001年、レディパステルでケント・デザーモ騎手が短期免許騎手として初のクラシック制覇を飾って以来、外国人の短期免許騎手によるオークス勝利は途絶えている。

その長い空白に風穴を開ける可能性があるのが、アンドレアシュ・シュタルケ騎手とコンビを組むカムニャックだ。

前走のG2・フローラS(2000m)を快勝し、距離延長が明確にプラスに働いた。マイル戦ではスピード負けする場面も見せていたが、中距離以上での伸び脚は秀逸。2400mはさらに良さそうな印象だ。

牝系には1995年のオークス馬ダンスパートナーがいる良血馬。展開次第では上位進出も十分可能だ。

名誉挽回: ビップデイジー

本来ならオークス有力候補として迎えられるはずだったサトノダイヤモンド産駒のビップデイジー。しかし、年明け以降はやや評価を落としている。

昨年の阪神JFで2着と好走し、3月のG2・チューリップ賞でも一度は勝利を意識させる走りを見せた。だが最後はクリノメイとウォーターガーベラに差し返され、惜敗。

続く桜花賞では後方待機策から伸びきれず11着。上位勢に加わることはできなかった。

いずれも雨中で行われ、馬場発表は良・やや重だったが、特に桜花賞はそれ以上に馬場状態が悪かったように見えた。

VIP DAISY / Shigiku Sho // Kyoto /// 2024 //// Photo by @nanashi_keiba_7 (X)

名門の良血馬: ブラウンラチェット

オークスほど、日本競馬で良血馬の存在感が際立つレースはないかもしれない。

昨年の勝ち馬チェルヴィニアは、オークス2着馬チェッキーノの娘。2023年の覇者リバティアイランドは、オーストラリアのG1勝ち馬ヤンキーローズの産駒。スターズオンアースの母はG1・6勝のスタセリタの娘であり、そのスタセリタ自身も2017年の勝ち馬ソウルスターリングを産んだ名牝である。

そして今年の出走馬の中で、最も血統的な華やかさを持つのがブラウンラチェットだ。

アメリカG2勝ち馬フォエヴァーダーリングを母に持ち、世界的ダート王フォーエバーヤングと母を同じくし、父もディープインパクト産駒同士という、血統的に極めて近い関係にある一頭だ。

昨年の阪神JFでは1番人気に支持されたが、アルマヴェローチェから11馬身離された16着に沈んだ。今年の桜花賞でもエンブロイダリーに9馬身差の9着と、期待に応える走りはできていない。

鞍上には初騎乗のダミアン・レーン騎手を迎える。

Brown Ratchet wins at Nakayama
BROWN RATCHET, CHRISTOPHE LEMAIRE / Nakayama // Newcomer /// 2024 //// Photo by @s1nihs (X)

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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