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今週末のG1、チャンピオンズ&チャターカップ。トム・マーカンド騎手は取材中、ドバイオナーの可能性について問われ、少し考え込む場面があった。地の利を活かす地元のヴォイッジバブル、2400mで実績豊富なドバイオナー、どちらが優位なのかは難しい問題だ。

Idol Horseの取材に対して、マーカンドは「難しい質問ですね」と語った。

「大一番のG1に臨むとき、距離をこなせる自信があるならば、こちらの方が有利と言えるのではないでしょうか」

イギリス出身のマーカンドは日曜日のG1に騎乗すべく、香港のシャティン競馬場に戻ってきた。このレースではヴォイッジバブルが史上2頭目の香港三冠制覇を目指しているが、自身が騎乗するドバイオナーで偉業阻止を目論んでいる。

ヴォイッジバブルは今シーズン、1月のG1・スチュワーズカップ(1600m)と2月のG1・香港ゴールドカップ(2000m)で地元馬を一蹴。香港三冠に王手をかけた。しかし、今回立ちはだかるのはG1・4勝、2400mを得意とするウィリアム・ハガス厩舎のドバイオナー。三冠最終戦には過去一番の試練が待ち受けている。

「一番警戒している相手はヴォイッジバブルです」とマーカンドは語る。

「マイルと2000mで強い走りを見せている相手です。もちろん、未経験の2400mでは勝手が違う可能性はあります。もしそうであれば、その隙を突いて足下をすくいたいですね。ドバイオナーは2400mでは本当に強い馬なので狙い目です」

「ドバイオナーは乗りやすいスーパースターです。G1を4勝しているのも納得です。再びの香港遠征を楽しみにしています」

ニューマーケット、サマーヴィルロッジ調教場を拠点とするドバイオナーだが、これまでのG1勝利はすべて海外。4勝のうち、3勝はオーストラリアでのG1制覇だ。

2023年にG1・ランヴェットステークス(2000m)とG1・クイーンエリザベスステークス(2000m)を制し、その後は距離を延長して昨年のG1・サンクルー大賞(2400m)を制覇。先月には、ローズヒルガーデンズ競馬場で行われたG1・タンクレッドステークスも制した。

シャティン競馬場での出走もこれが初めてではない。9頭の地元香港馬と対戦する上で、コース慣れも役に立つとマーカンドは見ている。

「香港競馬、そしてシャティン競馬場は地元勢にとってホームアドバンテージが大きいです。地元馬はこのコースの走り方を熟知しており、外国馬にとって地の利を覆すのは並大抵のことではありません」

「とはいえ、ドバイオナーはこれまでに何度も香港で走っています。好走歴もあります。距離への不安もありませんので、レースに向けて自信を持って臨めます」

DUBAI HONOUR / Sha Tin Trackwork // 2025 /// Video by Idol Horse

ドバイオナーにとって今回の香港遠征は5回目。2021年のG1・香港カップ(2000m)ではラヴズオンリーユーの4着。ロマンチックウォリアーが連覇した2023年と2024年のG1・QE2世カップ(2000m)では、それぞれ3着と7着に入った。

そして、昨年12月には2400mの香港ヴァーズにて、同じイギリス調教馬のジアヴェロットに次ぐ2着に入っている。

今年はすでにオーストラリアで2戦使っているドバイオナーだが、ハガス調教師は先月のQE2世カップは登録のみで見送った。3月のタンクレッドステークスで快勝を収め、4月のG1・クイーンエリザベスステークス(2000m)ではヴィアシスティーナの2着。今のドバイオナーにとって、2000mの距離は少し忙しいかもしれないとマーカンドは話す。

「年齢を重ねるに連れて、2400m向きの馬にシフトして行っていると思います。タンクレッドSとクイーンエリザベスSでのパフォーマンスの違いはまさにそれでした。2000mでは勝負どころで遅れることがありますが、2400mでは強い馬です」

展開としては、バンドルアワードが制した前哨戦のG3・クイーンマザーメモリアルカップ(2400m)のように、序盤から探り合いになる可能性があるとマーカンドは見ている。

スタミナ勝負では分があるとされているドバイオナーだが、機動力の高さは重要な位置取り争いでも有利に働くとマーカンドは説明する。

「こういう展開になれば、持ち前の多才さはプラスに働きます。日曜日の本番では流れを見て、ペース次第でどこで追走するかを決めることになるかと思います。ここ2年間で乗り難しさは消えたので、ポジションについてはあまり拘る必要はないかなと思っています」

日曜日のチャンピオンズ&チャターカップは、マーカンドにとって悲願の香港G1を手にする絶好のチャンスでもある。自身も香港競馬のことはとても気に入っており、妻のホリー・ドイル騎手と今後もまた訪れたいと考えている地だ。

「ホリーと私は香港に行くのを毎年楽しみにしています。今後もさらに多くの時間を香港で過ごすことができたら良いなと思っています」

「香港でG1制覇はやはり特別です。これまでいくつもの国でそういった機会に恵まれてきましたが、やはりビッグレースで自分たちの力を示したいという意気込みはあります。日曜日、それが叶えば良いですね」

ジャック・ダウリング、Idol Horseのレーシングジャーナリスト。2012年、グッドウッド競馬場で行われたサセックスステークスでフランケルが圧勝する姿を見て以来、競馬に情熱を注いできた。イギリス、アメリカ、フランスの競馬を取材した後、2023年に香港へ移る。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、レーシング・ポスト、PA Mediaなどでの執筆経験がある

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