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着実にキャリアの段階を踏んできたジョッキー、リチャード・キングスコート騎手の香港移籍はごく自然なステップのように思える。しかし同時に、それは世界のトップジョッキーのキャリアが何よりも『タイミング』に左右され得ることの証しでもある。

「イギリスではずっと仕事がありましたから、香港移籍は現実的な選択肢ではありませんでした。ただ、前回の香港での6週間は本当に楽しくて、最後も良い形で終われました」と、キングスコートは経緯を明かす。火曜日の朝、シャティンでの調教とバリアトライアルに騎乗した後、Idol Horseに語ってくれた。

「今はちょうど良い時期、良い機会だと感じたので、まずはやってみて様子を見ようと思ったんです。この6か月間に何が起こるのか、残れるのか、それとも帰るのかは分かりませんが、どちらにせよ自分の騎乗にとってプラスになるはずです」

昨シーズン、シャティンに拠点を置いての6週間の香港滞在中に4勝を挙げ、貴重な経験を積んだキングスコート。母国のイギリスに戻った夏競馬シーズンは、タイムフォーサンダルズとキラートでG1レースを2勝する大仕事をやってのけた。

ロイヤルアスコット開催のコモンウェルスカップでは、単勝26倍の伏兵・タイムフォーサンダルズで金星を挙げ、香港のデヴィッド・ユースタス調教師の兄弟であるハリー・ユースタス調教師にとっても初のG1制覇となった。

さらに、サセックスSでの勝利は、39歳のキングスコートにとって長く記憶に残る一戦となった。

サセックスSでは、フィールドオブゴールドのペースメーカーを務めるために151倍のキラートに騎乗したが、結果として1822年のセントレジャーを201倍で制したセオドアに次ぐ、イギリス国内での大レース大穴勝利記録の立役者となった。

序盤のペースが激しく隊列の位置取りが鍵となる香港競馬で乗った経験が、ある部分で功を奏した結果だったのかもしれないと、キングスコートは示唆する。

「役割としてはペースメーカーでしたが、終わってみればG1勝ち。かなり嬉しかったですね」

「昔から前で運ぶペースは好きでしたが、指定のタイムで動かす、いわゆる “時計通り” の調教を本格的にやり始めたのは香港に来てからです。調教師に何秒で行ってほしいと言われ、その通りに時計を刻む。イギリスの騎手には必ずしも自然なことではありませんから、香港での経験は間違いなく役に立ちました」

「イギリスのシーズンに入る前から自分の状態はとても良かったですし、香港に来ることが決まっていた分、少し気持ちも楽でした。香港でもそれが知られるようになってきたみたいで、プラスに働くはずです」

Jockey Richard Kingscote at Sha Tin
RICHARD KINGSCOTE, RISING FORCE / Sha Tin // 2025 /// Photo by HKJC

キングスコートは、直近の勢いに加え、短期免許の終盤に挙げた3連勝が2025/26シーズンへ向けて追い風になることを期待している。

「私はまだ “新顔” ですから、華々しい大活躍ができるとは思っていません。でも、前回のように少しでもサポートを得られればと思いますし、その点ではあの3連勝は助けになるでしょう。ここのシステムに慣れるのは自分にとって大きな変化です。どう転ぶかはやってみないと分かりません。前回は素晴らしい経験でしたし、そこから積み上げていければと思います」

どの調教師からのサポートを期待したいかと問われると、キングスコートはリッキー・イウ調教師の名前を挙げた。3月のシャティンでのナイター開催で挙げた3勝のうち、2勝はイウ厩舎の馬であり、今回再び関係を深めたいと期待する。

「リッキー(イウ師)は、初めて来た時から本当に助けてくれましたし、デヴィッド・ユースタス調教師も同様でした。今朝はクリス・ソー調教師にもトライアルで乗せてもらいましたし、ここからいくつかの関係を築いて、少しずつサポートを広げていけたらと思っています」

ジャック・ダウリング、Idol Horseの競馬ジャーナリスト。2012年、グッドウッド競馬場で行われたサセックスステークスでフランケルが圧勝する姿を見て以来、競馬に情熱を注いできた。イギリス、アメリカ、フランスの競馬を取材した後、2023年に香港へ移る。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、レーシング・ポスト、PA Mediaなどでの執筆経験がある。

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