香港競馬を代表する春の祭典、3つのG1レースが開催される香港チャンピオンズデーを前に、シャティン競馬場も盛り上がりを見せている。
昨晩、香港は雨に見舞われたが、今朝には上がって本日の開催は良馬場想定。現地表記の馬場状態は『Good(稍重寄りの良馬場)』から『Good to Firm(良馬場)』が見込まれている。レース前から早くも数千人の競馬ファンが詰めかける見通しだ。
G1・チェアマンズスプリントプライズ (1200m)
PLACING | HORSE | JOCKEY |
1st | カーインライジング | Zac Purton |
2nd | サトノレーヴ | Joao Moreira |
3rd | ヘリオスエクスプレス | Hugh Bowman |
4th | インビンシブルセージ | Matthew Poon |
IDOL HORSE ANALYSIS:
Idol Horseのマイケル・コックス編集長が戦前に「時計との勝負」と表現したとおり、カーインライジングがG1・チェアマンズスプリントプライズで敵無しの走りを見せつけた。サトノレーヴとヘリオスエクスプレスに2馬身1/4差を付ける圧勝、最後は馬なりで流す余裕の競馬だった。
勝ち時計は自身が持つコースレコードを更新することはできなかったが、ここ数週間ほど高速馬場ではなかった芝コースで、1:07.88という優秀なタイムをマーク。まさに王者による圧巻の競馬だった。
後方では、前年勝ち馬のインビンシブルセージが復調を予感させる4着。ルガルも香港スプリントから大幅に良化して5着に食い込んだ。また、怪我明けのラッキースワイネスは6着に健闘し、まだ燃え尽きていないと証明するような走りを見せた。
レース後コメント:
ザック・パートン騎手(カーインライジング、1着) – 「もう言うことなしです。走るたびに圧巻のパフォーマンスを魅せてくれる馬なんです。今日も手前を替えることなく、圧巻の走りを披露してくれました。突き抜けるまで一瞬でしたね」
「日本の皆さんにも称賛を送りたいと思います。日本馬陣営は世界中、どんな相手でも果敢に勝負を挑みます。その姿勢は称賛に値しますが、今日はカーインライジングの方が一枚上手だったということですね」
デヴィッド・ヘイズ調教師(カーインライジング、1着)– 「無事に終えられて良かった!完璧なシーズンでした。単勝1.0倍台の馬をG1レースに送り出すなんて、さすがに初めてでした。勝てたので最高の気分ですが、神経がすり減る思いでしたね。カーインライジングはまさに『超常現象』ですよ」
THE IDOL HORSE VIEW
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G1・チャンピオンズマイル (1600m)
PLACING | HORSE | JOCKEY |
1st | レッドライオン | ヒュー・ボウマン |
2nd | ヴォイッジバブル | ジェームズ・マクドナルド |
3rd | サンライトパワー | クリストフ・スミヨン |
4th | マイウィッシュ | ルーク・フェラリス |
IDOL HORSE ANALYSIS:
わずか90秒のレースが、20分間にも及ぶドラマを演出した。
裁決委員はリプレイを入念に確認し、香港のスターホースであるヴォイッジバブルを1着に繰り上げるべきなのか徹底的に議論した。審議の結果は入線通り。着順が覆ることは無かった。
確かにヴォイッジバブルはレッドライオンからぶつけられる場面があったが、着順を入れ替えるほどの不利ではないという判断は妥当にも思える。このレースは過去にも番狂わせが起きているが、今年は文字通りの歴史に残る大波乱だったと言えるだろう。
レッドライオンはこれまでに1400mのクラス1戦を2勝しており、そのうちの一つでは前年のチャンピオンズマイル勝ち馬のビューティーエターナルを破り、もう片方ではムゲンにクビ差で勝っている。
しかし、重賞レベルでは12戦して未勝利。昨年のチャンピオンズマイルではビューティーエターナルの2着、G1スチュワーズカップではヴォイジーバブルに3馬身差の3着と健闘はしていたが、今回ヴォイッジバブルを打ち負かすまでの力を秘めているとは想定しづらい馬だった。
三連単もこれまた大荒れ。サンライトパワーが最後突っ込んできて、勝ち馬から半馬身差の3着。レッドライオンとサンライトパワーという人気薄が上位に来た結果、2頭のワイドは182倍という高配当を記録している。
マイウィッシュは粘り強い走りで4着を勝ち取った。トップレベルのメンバー相手でも通用するという走りを見せた。ギャラクシーパッチも強烈な追い込みで突っ込み、5着に入った。一方、オーストラリア勢は精彩を欠き、ロイヤルパトロネージとミスターブライトサイドは下から2番目と最下位に終わった。
関係者コメント:
ヒュー・ボウマン(レッドライオン、1着) – 「まさか勝てるとまでは思っていませんでしたが、この馬が勝ったということ自体には驚きはありません。昨年も2着でしたし、何度も乗っているので持ち味はよく分かっています。ジョン(・サイズ調教師)、そして馬主のアークリ夫妻にお祝いを申し上げたいです」
「安定感は抜群の馬なので、彼はG1馬という称号に相応しいと思っています。正直、もう言葉が見つからないくらいです」
「本当に素晴らしい走りでした。レースではいつも大崩れしませんし、度胸のある馬です。何度か乗った経験から自信はありました。逃げる展開は予想外でしたが。ジョンと厩舎のチームには心から感謝しています。素晴らしい状態に仕上げてくれましたし、馬場が少し湿っていたのもレッドライオンにとってプラスに働きました。この馬を誇りに思います」
ジェームズ・マクドナルド騎手(ヴォイッジバブル、2着) – 「よく頑張ってくれました。彼の頑張りを誇りに思います」
G1・クイーンエリザベス2世カップ (2000m)
PLACING | HORSE | JOCKEY |
1st | タスティエーラ | ダミアン・レーン |
2nd | プログノーシス | ジェームズ・マクドナルド |
3rd | カリフ | アドリー・デフリース |
4th | エンスード | ブレントン・アヴドゥラ |
IDOL HORSE ANALYSIS:
このレース最大の焦点は「プログノーシスが出遅れずにゲートを出たら?」だった。その答えは?今回はまともにゲートを出たものの、結局は最後方へ控える形になり、結果としてそれが明暗を分けた。ダミアン・レーン騎手が完璧にエスコートしたタスティエーラを差し切るには至らなかったのである。
先月はドバイシーマクラシックをダノンデサイルが制したが、タスティエーラはそれに続いて海外G1を制した日本ダービー馬となった。そして、堀宣行調教師はこれが香港チャンピオンズデー3勝目。2016年のモーリス(チャンピオンズマイル)、翌2017年のネオリアリズム(QE2世C)に続いて、久しぶりに勝利を手にした。
香港国際競走では凡走に終わったカリフだが、今回は積極的なレースを展開して3着。バーレーンから遠征してきた関係者にとっては嬉しい結果となった。キングジョージ馬のゴリアットは力を出し切れず9着。残念ながら、日本のリバティアイランドは直線で故障を発症し、予後不良と診断された。
関係者コメント:
ダミアン・レーン騎手(タスティエーラ、1着) – 「堀先生は仕上げの天才、そしてこの馬はスターです。オーナーのキャロットファームの皆さんにとっても大きな一勝です。こうして騎乗の依頼をもらえただけでも光栄ですが、素晴らしい馬でのチャンスを貰えて本当にありがたいです。このような世界的な開催で乗せて貰えるなんて、騎手冥利に尽きます。まさにやりがいを感じます」
ジェームズ・マクドナルド騎手(プログノーシス、2着) – 「ちょっとゲート内でもたつきました。それでも、よく頑張ってくれたと思います」
アドリー・デフリース騎手(カリフ、3着) – 「この結果には大満足です。良い位置を取れましたが、向正面で少し行きたがったので手綱を抑える場面がありました。それでも直線ではしっかり伸び、元の流れを取り戻した走りを見せてくれました」
競馬場便り
シャティン競馬場で開催されたIdol Horse主催のスペシャルイベントは盛況のうちに終了。Idol Horseが制作したサッカーユニフォームや、ロマンチックウォリアーの限定カードを日本から来た競馬ファンに配布しました。
第1レース開幕前にはオープニングイベントが開演。(G)I-DLEに所属するK-POPスターのMINNIEや、歌手のジョイ・ヨンが出演して場内を盛り上げた。

シャティン競馬場の現地取材班からのリポートは随時更新予定です。