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香港競馬は今シーズン、新たな領域に踏み出した。これまでの調教師スタンドでは馴染みのなかった、F1やオリンピックの自転車競技で見かけるような計測技術が導入されたのだ。

香港ジョッキークラブはIdol Horseに対し、これまで人力で計測されていた調教やバリアトライアルのラップタイムを、0.003秒の精度を誇る最新のタイム計測システムに切り替えたことを明らかにした。

この技術はオランダのマイラップス社(MYLAPS)が開発したもので、F1、NASCAR、オリンピック、東京マラソンなど、世界最大規模のスポーツイベントでも採用されてきた。

「同社は以前から競馬への参入に興味を示しており、2年前から我々にアプローチしてきました。このシステムは精度が高さ、そして誤作動が少なく、馬を扱う上で運用可能であることを実証してくれました」と、香港ジョッキークラブ(HKJC)の競馬運営責任者であるスティーブン・ヒギンズ氏は語る。

「従来の計測は、スタンドから係員がストップウォッチで手動計測し、その後システムに入力するという方法でした。HKJCは十分な人数を揃えて計測していましたし、その精度も非常に高かったものの、センサーを通過したデータが直接システムに反映される今回の方式には及びませんでした」

新システムでは、各馬のゼッケン内に小型電子タグを装着する。タグは防水仕様で洗浄可能、かつ最長5年間交換不要。コース下に設置されたタイミングケーブルが、馬が通過する瞬間を正確に感知し、データを即座にシステムへ送信する。

MYLAPS CHIP / Photo supplied

「400mごとにタイミングケーブルを設置しており、1600m、1200m、800m、400m地点すべてで、通過した馬のラップタイムが正確に記録されます」とヒギンズ氏は説明する。

「昨夏にケーブルを敷設し、試験運用を経て8月1日に正式稼働しました。これにより、香港ジョッキークラブの公式サイトに掲載されるデータは0.003秒以内の精度を持つようになりました」

新システムは、精度向上に加えて、調教やバリアトライアルで調教師が瞬時にデータを確認できることも大きな特徴となっている。

「調教師はスマートフォンやiPadでリアルタイムにデータを確認できます。調教中の馬を見ながら、調教師とアシスタントレーナーの双方にSMSでラップタイムが送信されます。データは即座にアップロードされるため、リアルタイムで確認できるようになります」

今年7月、ガーミンに買収されたことで知られるマイラップス社の新技術は、香港の調教師たちからも歓迎されている。新技術について尋ねられたキャスパー・ファウンズ調教師は、その利便性が画期的だと述べた。

「素晴らしいの一言です。馬がゴールを駆け抜けた瞬間、携帯電話にラップタイムが届くんです。本当に素晴らしいですよ。これまでずっとストップウォッチを手に計測してきたわけですから、この便利さは革命的です」

「時代は変わりつつあります。あらゆるものがデジタル化する流れはこの先も続いていくでしょう」

システムはすでにバリアトライアルでも活用されており、スタート合図と連動してタイムが記録される仕組みだ。さらに、コース外でも各所にセンサーが設置されている。周回馬場、ペンフォールドパーク(馬場内の公園)、そしてオリンピックステーブルの馬場にも導入済みだという。

「センサーを通過すれば、馬が周回馬場に入ったのか、ペンフォールドパークに入ったのかが分かります」とヒギンズ氏は新システムの利便性を説明する。

「バックストレッチにはジャンプアウト用のセクションもあり、芝でのデータも収集できます。ここシャティンの直線1000mトライアルでもデータが取れるように設置しています」

新たな区間ラップデータは、毎朝10時に香港ジョッキークラブ公式サイトで公開される予定だ。

ジャック・ダウリング、Idol Horseの競馬ジャーナリスト。2012年、グッドウッド競馬場で行われたサセックスステークスでフランケルが圧勝する姿を見て以来、競馬に情熱を注いできた。イギリス、アメリカ、フランスの競馬を取材した後、2023年に香港へ移る。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、レーシング・ポスト、PA Mediaなどでの執筆経験がある。

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