Aa Aa Aa

香港ジョッキークラブ(HKJC)のウインフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲスCEOは、日曜日の午後にシャティン競馬場で発生したデータベースの障害により、数億香港ドルの発売金が失われ、レースが最大約40分遅延する事態となったことを受けて、「今のテクノロジーは、300億から400億香港ドル規模のビジネスに見合うものではない」と厳しく断じた。

問題が発覚したのは第9レースの直前。HKJCは、海外からの投票を香港のパリミュチュエル方式のプールに組み込む中核システムである混合投票用データベースに不安定な動作を検知した。

影響を受けたのは、HKJCと提携する60の国際的な馬券発売事業者のうち約3分の2にのぼった。ブレスゲスCEOが「断続的」と表現したこの不具合に対し、クラブは前代未聞の措置を決断。番組表の残る3レースについては、すべての海外投票を『ゼロ処理』し、完全にプールから除外することを決めた。

「売上は少し下がりました。おそらく3億5000万香港ドル(約64億円)ほどの減少です」とブレスゲス氏。「私たちは、今使っているテクノロジーが300億から400億香港ドル規模のビジネスにふさわしいとは思っていません」

「混合投票に使っているデータベースは、海外との間で投票情報を常時やり取りする仕組みなのですが、午後4時40分以降、このデータベースが不安定になり、断続的に停止と再起動を繰り返していました」

午後4時48分に第9レースが施行されたものの、海外からの投票が確実にプールから除外されているかどうかをクラブが確認する作業に追われるなか、的中配当は一切表示されず、ファンは状況を把握できないまま取り残された。

「クラブは海外のパートナー各社と『慌ただしい協議』を続けていましたが、こういった問題というのは、普通は10分や15分で簡単に解決できるものではありません」とブレスゲスCEOは説明した。

「プールの公正性を守るための決断であり、いかなるリスクも取りたくなかったのです。混合投票を停止し、すべての海外投票を『ゼロ処理』してプールから除外しました」

Winfried Engelbrecht-Bresges at Asian Racing Conference
WINFRIED ENGELBRECHT-BRESGES / Asian Racing Conference // Sapporo /// 2024 //// Photo by JRA

「9レースについては、完全に海外票を除外する必要がありましたが、それ自体が大きな問題でした。その後は、投票管理のためのデータベースを含め、すべてのシステムを再起動しなければなりませんでした」

「最初に想定していたよりも時間がかかりましたが、それでも海外からの票が一切プールに残っていないことを二重にも三重にも確認する必要がありました。そのうえで、配当の再計算を始めたのです」

その作業の影響で、第10レースは連鎖的に発走が遅れた。馬たちは一度パドックで周回したものの、何のアナウンスもないまま下見所に引き返し、再びパドックに戻るという、奇妙で混乱を招く展開となった。

一時は2000m地点のゲート裏で馬たちが装鞍を始めようとしていたが、そのさなかに騎手たちが次々と下馬し、何が起きているのかを確認しようとトニー・スピーチリー発走委員のもとに集まり始めた。

最終的にレースは午後5時57分に発走。予定より37分遅れで施行された。第9レースと第10レースの的中配当は、いずれも国内発売分のみを基に再計算され、確定した。続く第11レース(午後6時39分発走)も、海外投票を受け付けずに行われた。

ブレスゲスCEOによれば、今回の障害については「事前にシステムの不具合を示す兆候は一切なかった」という。

「ハッキングではないかという憶測も出ましたが、それは完全に否定します。今回の問題は、あくまで当クラブと60の混合投票パートナーとの間のものであり、セキュリティ上の問題は一切ありません」

さらに、今回の不具合は一部のグローバルパートナーが使用している旧式のデータベースに限定されたものであり、最新のシステムではまったく問題がなかったことも明かした。

「興味深いのは、新しい投票プロトコルを使っていたパートナーからは、一切トラブルの報告がなかったという点です。問題が発生したのは、古いデータベースを利用していたところだけでした」と同氏は補足した。

「これは純粋に技術的な問題であり、我々と世界中の混合投票パートナー双方に関わるものです。だからこそ、大きな投資が必要になるのです」

SHA TIN RACEDAY / Sha Tin // 2025 /// Photo by Donald Lee

この障害の影響で、日曜日にカラ競馬場で行われたWorld Poolの馬券発売対象2レースに関しては、HKJCが国内投票のみを受け付ける対応を取らざるを得なくなった。エンゲルブレヒト=ブレスゲスCEOは、この措置により「1レースあたり500万から600万香港ドルの損失が出た」と見積もっている。

同氏は「多大なご不便」と「レース間の長い待機時間」について謝罪した上で、「プールの公正性の確保が最優先事項だった」と強調。「もし少しでも問題があれば、レースそのものを中止していたでしょう」と語った。

月曜日の午後時点で、HKJCは今回の障害に関するさらなる詳細や、翌水曜日にハッピーバレー競馬場で予定されている開催までに修復が間に合うかどうかについては明らかにしていない。

ブレスゲスCEOは「水曜日までに我々のチームがこれを解決できると強く信じています」と日曜の開催後に語った。

タイムライン:5月25日(日) シャティン競馬場での混乱

午後4時40分  HKJCが混合投票用データベースの不安定な動作を検知

午後4時48分  第9レース発走。的中配当は未確定のまま

午後5時02分  第10レースのパドック周回開始

午後5時08分  馬がパドックから下見所へ戻るが、場内アナウンスなし

午後5時14分  HKJCが「10分間の発走遅延」を発表。ただし詳細の説明なし

午後5時18分  第10レースの発走時刻が午後5時40分に再延期。詳細は依然として不明

午後5時28分  馬が再びパドックに登場

午後5時37分  馬が本馬場へ入場

午後5時42分  馬が発馬機裏(スタート地点)に集合

午後5時49分  不具合が発生している旨のテクニカルメッセージが、発見から約1時間後に場内スクリーンで告知される

午後5時52分  騎手がゲート裏で下馬し、指示を仰ぐため集まる

午後5時55分  騎手が再騎乗し、枠入り開始

午後5時57分  第10レース発走。予定より37分遅れで施行。第9レースおよび第10レースの配当が確定(いずれも国内発売分のみ)

午後6時39分  第11レース発走。こちらも海外投票は受け付けずに施行

ジャック・ダウリング、Idol Horseの競馬ジャーナリスト。2012年、グッドウッド競馬場で行われたサセックスステークスでフランケルが圧勝する姿を見て以来、競馬に情熱を注いできた。イギリス、アメリカ、フランスの競馬を取材した後、2023年に香港へ移る。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、レーシング・ポスト、PA Mediaなどでの執筆経験がある。

ジャック・ダウリングの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録