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人気歌手のイーダン・ルイがパドックで若いファンを楽しませ、中国本土からは何台もの観光バスが押し寄せた。2024/25シーズンの開幕日を迎えたシャティン競馬場は大いに沸いたが、競馬の最大の魅力が馬であることは間違いない。

そして、香港競馬の新星が、ニューヒーローとしてその名を刻んだ日でもあった。

新しいファン層を獲得し、競馬の衰退を防ぐべく、この日は多くのイベントが行われていた。人気歌手の公演や、X・Y・Z世代など幅広い年齢層を対象にしたハイテクな展示などが行われていたが、この日曜日に見られたカーインライジングの勝利こそが、新しいファンの心を捉える瞬間だったはずだ。

135ポンドのトップハンデを背負いながら、クラス1の猛者たちを突き放すレース内容。鞍上を務めたスタージョッキーのザック・パートン騎手は、スクリーンでその姿を確認する余裕すらあった。アジア競馬会議のようなイベントで議論の的となった馬券売上の話題とは一線を画す、スポーツとしての競馬の魅力を再確認できた瞬間でもあった。

「ちょっと格が違いますね、これは」

調教師のデヴィッド・ヘイズも、驚きの声を隠さない。1200mを1:08.03のタイムで駆け抜けたカーインライジングは今や、香港スプリントへの道を突き進んでいる。

Ka Ying Rising wins on Opening Day
KA YING RISING, ZAC PURTON / Class 1 // Sha Tin /// 2024 //// Photo by Idol Horse

香港ジョッキークラブ(HKJC)によるシーズン開幕日のプロモーションは、見た目と雰囲気という点では、JRAのプロモーションによく似ていた。このような広報活動は、競馬場に若いファンや女性を集め、より魅力的な場所に変えるために役立っている。

HKJCのCEO、ウインフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏もまた、馬を主役と捉えたJRAのマーケティング活動に感銘を受けている人物の一人だ。最終レースと、イーダン・ルイのパフォーマンスが終わった後、Idol Horseの取材に対して語ってくれた。

「馬とスポーツへの愛着をベースにしたファン層を築いた、日本のやり方には感心しています」

「ギャンブル好きの人は次第に馬券を買ってくれますが、まずは馬と競技そのものが根底にある魅力を創り出す必要があります。競馬場に来れば、馬の美しさ、馬の躍動感に魅了されるはずです。私たちは、それを伝える必要があるんです。これが大事な点です」

冷徹な売上高の話題に移ると、香港ジョッキークラブは今シーズン、いくつかの新しい課題に直面している。主要な経済指標、特に株価や不動産市場が不況に陥る一方、馬券売上は昨年の開幕日より8.6%増加の13億2760万香港ドルとなり、エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は『回復力』に喜びを見せていた。

その売上高を支えた要因の一つは、香港競馬全体の頭数増加にある。競走馬の数は1200頭近くまで増加し、レースの出走馬も以前より増えた。関係者によると、今シーズン開幕時点で入厩中の馬は830頭に達し、昨シーズン同時期の740頭から大きく増えた。その結果、昨年開幕日の出走馬は10レースで97頭だったが、今年は119頭が集まった。

観客も43000人が集まり、2019年以来となる開幕日の観客数を記録した。中国本土からは7000人以上の観光客が集まり、そのうち5000人は中国の旅行会社のツアーに参加していたという。

Horse racing fans at Hong Kong's 2024/25 season opener
FANS AT HONG KONG SEASON OPENER / Sha Tin // 2024 /// Photo by Lo Chun Kit

そして、香港の大人気アイドルグループ、MIRRORのイーダン・ルイをお目当てに、シャティン競馬場のパドックに詰めかけた熱心な香港ポップスファンも目立った。

シャティン競馬場のパドックは通常、世界で最も騒々しい競馬ファンが集まる場所だ。2017年、期待馬のラッパードラゴンがレース中の怪我で予後不良になったとき、彼らは鞍上のジョアン・モレイラ騎手に対して容赦ないブーイングを浴びせた。

当時香港で最も人気があった女性騎手、KKことチョン・カーケイ騎手に対しても特に理由なくブーイングを浴びせ、レジェンドのダグラス・ホワイト騎手にも晩年は容赦ないブーイングが飛んだ。これは必ずしも誰かの問題というわけではなく、競馬場の恒例行事の一部に過ぎない。

シャティン競馬場でファン同士が喧嘩するのは、席の奪い合いだけだ。席は新聞紙を座席の上に置くという、昔ながらの方法で先着順の『予約制』となっている。

日曜日は客同士のトラブルを避けるべく、コアな競馬ファン以外、つまりMIRRORのファンには専用エリアが設けられた。常連の競馬ファンにはあまり人気が無いエリアに配置され、住み分けがなされた。

最終レースの後、若いファンが席を埋め尽くす光景は、時代の流れを表す兆候だった。少なくともこの中の何人かが、カーインライジングを見て、香港国際競走でまた競馬場に戻ってきてくれることを願っている。次は、人気歌手の登場に関係なく。

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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