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ナチュラルライズが右回りコースで本来の走りを取り戻した。大井競馬場で行われたJpn2・京浜盃(1700m)で、同馬は豪快な差し切り勝ちを収め、来月行われる日本ダート三冠初戦、Jpn1・羽田盃(1800m)に向けて大きな弾みをつけた。

伊藤圭三調教師が管理するナチュラルライズは、昨年7月の札幌競馬場でのデビュー戦を6馬身差で圧勝。昨年11月には東京競馬場で行われた『Road to the Kentucky Derby』シリーズの初戦であるカトレアS(1600m)では接戦を制した。

その勝利を経て、昨年12月のJpn1・全日本2歳優駿(川崎・1600m)では1.4倍の圧倒的1番人気に推されたが、結果は4着。同レースは過去にデルマソトガケ、フォーエバーヤングといったケンタッキーダービー挑戦馬を輩出してきたが、牝馬のミリアッドラヴに敗れ、ナチュラルライズは初の黒星を喫する形となった。

伊藤調教師はこの結果について、東京・川崎の左回りコースが気性面に課題を抱えるナチュラルライズに合わなかったと分析。これに加え、全日本2歳優駿ではゲートで他馬に気を取られ、序盤から折り合いを欠いた点も響いた。

「能力があるのは充分認識していたのですが、前走の川崎のJpn1戦で負けてしまって、道中もリズムよく走れない競馬だったので悔しい思いもしました。間を空けて立て直して、今日は右回りでいい走りができたのではないかと思います。現時点では右回りの方が数段いい走りができます」と伊藤調教師と説明する。

1.9倍の1番人気に支持された京浜盃では、横山武史騎手が騎乗。ゲートを五分に出ると、速い流れを演出したリコースパローのやや後ろの好位をキープ。しかし、向こう正面でペースが緩むと再び行きたがる場面が見られ、横山騎手が手綱を抑えるもなだめるのに苦労する場面があった。

それでも、多くの馬にとって致命的になり得るこの状況を、ナチュラルライズは見事に乗り越えた。直線入口でリコースパローが一杯になる中、このキズナ産駒は内で砂を被る場面でも、外から他馬が迫る場面でも怯まず、しっかりと対応して見せた。

最後のコーナーで先頭馬の外に出す際、一瞬大きく外にヨレたものの、立て直すと一気にギアを上げて抜け出し、直線では独壇場の走りを披露した。

結局、中央所属のナチュラルライズは地元大井の2着馬リコースパローに6馬身差をつける完勝。さらに同じく大井所属の3着馬、ナイトオブファイアには9馬身半の差をつけ、堂々の復活劇を演じた。

NATURAL RISE, TAKESHI YOKOYAMA / Jpn2 Keihin Hai // Oi Racecourse /// 2025 //// Video by Idol Horse

「スタート地点からすぐにコーナーが来るので、どうしても前に行かなければと思いました」と、鞍上を務めた横山武史騎手はレース後のインタビューで振り返る。

「その分、序盤は少し行きたがる面もありましたが、途中からはしっかり落ち着いてくれましたし、直線の加速は見事でした」

「まだまだこの馬はやれると思います。直線の走りは素晴らしかったですが、最後に右へとヨレたあたりには、まだ若さを感じました」

一方、伊藤調教師はこの馬の特徴について以下のようにコメントした。

「前走はいいフォームで走れていなかったので、フォームの改善を心がけて、なるべくまっすぐ頭が上がらないように走れることを主眼において矯正してレースに向かってきました。数も使っていないですし、まだまだ伸びしろがあると思います」

「(ナチュラルライズは)賢いですね。我慢するところは我慢しますし、走りたいときは走るし、馬力がありすぎるので調教が大変なところがあるのですが、そこをうまくはみ出さずコントロールしやすいようにこれからも管理していきます」

左回りのコースに対する苦手意識が明らかになった時点で、ケンタッキーダービーをはじめとする米クラシック路線は早々に断念することとなった。

しかし、昨年新設された日本国内のダート三冠競走、4月29日のJpn1・羽田盃、6月11日のJpn1・東京ダービー(2000m)、10月8日のJpn1・ジャパンダートクラシック(2000m)まで続くこのシリーズは、ナチュラルライズにとって新たな大目標となっている。

今回の京浜盃でJRA勢上位2頭に与えられる羽田盃優先出走権を、ナチュラルライズとJRA所属で2番目に入線した5着のアメージングが獲得。

また、地方勢上位2頭のリコースパローとナイトオブファイアも同様に羽田盃への優先出走権を手にした。

なお、昨年の京浜盃で2着に入ったアンモシエラは、後に羽田盃でアマンテビアンコの2着に好走している。

フランク・チャン、Idol Horseのジャーナリスト。世界を旅する競馬ファンとして、アメリカ、カナダ、チリ、イギリス、フランス、ドバイ、オーストラリア、香港、そして日本の競馬場を訪れた経験を持っている。

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