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ここ最近、勝ち星を量産しているジェームズ・マクドナルド騎手だが、今週末ローズヒル競馬場で開催されるゴールデンスリッパーフェスティバル最終日には、勝利の雨ではなく本物の雨を心待ちにしている。

先週末、オーストラリア競馬最大級の開催で行われたG1・ランヴェットステークス(2000m)をヴィアシスティーナで、G1・ローズヒルギニー(2000m)をブロードサイディングで、そしてリステッドのダービーマンローステークス(1200m)をオータムグローで制し、3勝の固め打ちを決めたマクドナルド。

『世界最高のジョッキー』の異名を取るこのチャンピオンジョッキーは、勝利に酔うよりもむしろ敗れたレースにおいて何ができたかを自問している。特に、G1・ジョージライダーステークス(1500m)でファンガールでの鼻差2着、そしてG1・ゴールデンスリッパー(1200m)でウォートンでの頭差2着に強い想いを残している。

「あとで振り返ると、あの時こうしていたらと思うことはあります」とマクドナルドはIdol Horseに語った。

「でも、それがスポーツであり競馬というものです。勝つこともあれば、負けることもあります」

「G1を4勝していてもおかしくなかったんです。ファンガールは本当に全力でしたし、ウォートンはその能力の高さを証明してくれました。ブロードサイディングとヴィアシスティーナで2勝できたのは幸運でした。今週末も、またグループ1を2つ獲れたらと思っています」

2025年のシドニー秋開催は、例年とは異なり乾いた馬場が続いている。例年であれば雨の影響を受ける時期だが、今年は今のところ、重馬場で行われた重賞レースはわずか1レースのみだ。

だが、マクドナルドは『天の恵み』を期待している。というのも、今週末に騎乗する馬の多くは道悪もこなせるうえ、枠順には恵まれていないからだ。今週末の騎乗馬の枠番は9、13、14、10、7、11、13、13、6番、と全体的に不利な外目だ。

「雨が降れば、全体のバランスが少し取れるんです。そうなってくれれば、乗る馬の何頭かは助かるかもしれません。幸い、私が乗る馬の多くは道悪をこなせるタイプなので、少しでも降ってくれたらいいですね」

その『雨乞い』はどうやら効いているかもしれない。レース前24時間以内のローズヒルではにわか雨が予想されており、当日はまとまった降雨になる可能性もあるという。

James McDonald and Chris Waller celebrate their Cox Plate win
JAMES McDONALD (L), CHRIS WALLER / G1 Cox Plate // Moonee Valley /// 2024 //// Photo by Vince Caligiuri

マクドナルドは今週末、ヴィアシスティーナの馬主ユーロンインベストメンツ、そして管理するクリス・ウォーラー調教師と再びコンビを組み、ローズヒルで2つのG1レースに臨む。

マクドナルドは今週末、G1・タンクレッドステークス(2400m)で英国からの移籍初戦となる牝馬・リヴァーオブスターズ、そしてG1・ヴァイナリースタッドステークス(2000m)でニュージーランドの牝馬・ムーヴィンアウトに初めて騎乗する。

リヴァーオブスターズは、昨年12月のタタソールズ・ディセンバーメアセールでユーロンが165万ギニー(約356万豪ドル・約3.4億円)で落札した高額輸入馬。以前はラルフ・ベケット厩舎で管理されており、直近のレースではロンシャン競馬場で行われたG1・ロワイヤリュー賞(2800m)で重馬場の中2着に好走している。

「彼女の調教内容は非常に良好です」とマクドナルドは語る。

「この秋には、北半球から何頭かの馬がオーストラリアにやって来ていますが、その中でも最もスムーズに環境に馴染んでいるのはリヴァーオブスターズだと感じています。調教の動きだけを見れば、彼女が一番良いと言えるでしょう」

「もちろん、それがレースでの好走を示唆する材料になるかどうかは当日になってみないと分かりませんが、彼女は距離にも不安がなく、どんな馬場でも加速できる馬ですから、チャンスは十分あると思います」

一方、ムーヴィンアウトはG1・ニュージーランド1000ギニー(1600m)で3着に入ったあと、ビル・サーロウ厩舎からタスマン海を越えてオーストラリアへとやってきた。

なお、同レースで2着だったアラバマラスも、今週末フレミントン競馬場で行われるリステッド・HKJCワールドプールスプリントクラシック(1100m)に出走予定で、わずか15分違いでの出走となる。

オーストラリアでの初戦となったG2・ファーラップステークス(1500m)では、同厩舎の主役ラズーラの4着に敗れたが、今回は初めて2000mという距離に挑戦する。父はG3・富士S勝ち馬、ディープインパクト産駒のステファノスだ。

「初戦の後からかなり良くなっています。先日調教で乗りましたが、素晴らしい感触でした。動きも非常に良く条件的にも合っていそうです。ただし、ユーロンの持ち馬トレジャーザモーメントが大本命になるでしょうけどね」

また、マクドナルドはマーク・コナーズ厩舎のウィレイドウにも騎乗予定。3月開催のイングリス・デジタルセールでわずか7,000豪ドルで購入された『掘り出し物』だ。

今回のG3・ドンカスタープレリュード(1500m)で結果を出せば、来週のG1・ドンカスターマイル(1600m)への優先出走権を手にし、『成り上がり』の物語にさらなる一章を加えることになる。

「マークはこの馬を本当にうまく育ててくれました。調子は上がっていますし、前走の1500mも良い内容でした。馬場が多少渋ってくれればさらにチャンスが広がるはずですから雨が降ってくれるといいですね」

そして今週末のオーストラリア競馬が終われば、マクドナルドの関心は中東へ。ドバイワールドカップデーでの騎乗に切り替わり、そこでは4回の騎乗が確定している。

Romantic Warrior wins the G1 QE II Cup of 2024
JAMES McDONALD, ROMANTIC WARRIOR / G1 QE II Cup // Sha Tin /// 2024 //// Photo by HKJC

G1・ドバイターフ(1800m)では、長年のパートナーであるロマンチックウォリアーと再びコンビを組む。G2・ゴドルフィンマイル(1600m)ではソードポイントに騎乗し、香港を代表して出走する。

マクドナルドは、ドバイワールドカップデーにおいて名門クールモアと再び手を組むことになった。今回、クールモアの主戦であるライアン・ムーア騎手がマクドナルド不在時の代役としてシドニーに派遣される形となり、その代わりにマクドナルドがドバイでの騎乗を担う構図となる。

マクドナルドは、エイダン・オブライエン厩舎が管理するコンティニュアス(日本産のハーツクライ産駒)に騎乗し、G2・ドバイゴールドカップ(3200m)に出走する予定だ。同騎手がオブライエン厩舎の馬に騎乗するのは、実に約7年ぶりとなる。

一方で、G1・アルクオーツスプリント(1200m)ではジョン・サイズ厩舎のハウディープイズユアラブとのコンビがすでに決まっているため、クールモアが新たに獲得した注目馬・ビリーヴィングへは騎乗しない。

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの国際担当。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。

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