香港ジョッキークラブ(HKJC)が中国本土に建設した新しいトレーニングセンターでの競馬開催実現は、夏季の降水確率が「比較的高い」ため、延期される見通しとなった。
香港と中国の国境地帯から北に150キロほど離れた、中国本土の従化トレーニングセンター(従化競馬場)。ここでは、HKJCが2026年4月から定期的な競馬開催をスタートさせ、アジア競馬の新たな一歩となる計画が立てられていた。
しかし、例年の雨が多い夏シーズンを避けること、そして新しい競馬場での十分なテスト期間を確保することを理由に、競馬開催の開幕日は半年間延期されることが決まった。HKJCのウインフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲスCEOはIdol Horseの取材に対し、以下のように語っている。
「4月にスタートした場合、雨期とシーズンが重なってしまうため、開始日を10月に延ばすことにしました。スケジュールが始まった後に中断期間を設けるのは好ましくない話です。なので、いっそのこと10月から稼働を開始するように計画を変更しました」
「インフラ整備は4月からの稼働開始に充分間に合う見込みです。ですが、完全に新しい施設なので、テスト期間をきちんと確保した方が得策ではないかと考えています」
150ヘクタールの敷地に建設された従化トレセン(従化競馬場)は、香港のシャティン競馬場と比較すると2倍以上の面積を誇る。もともとは、2010年に広州で開催されたアジア競技大会の馬術競技会場として、設計・建設がされた。
現在は600頭を超える競走馬が入厩可能となっており、香港の調教師たちはローテーションの合間に休ませるための放牧先としてこの施設をよく利用している。

デヴィッド・ヘイズ調教師は以前、Idol Horseの取材に対し、「カーインライジングはあの施設がお気に入りのようです」とコメント。また、リッキー・イウ厩舎のヴォイッジバブルも、G1レースに向けた調整拠点として従化トレセンをよく利用している。
しかし、トップクラスのトレセンを競馬場に改造するのは至難の業だ。定期的な競馬開催の実現、大人数の観客が集まる施設へと変貌を遂げるには、綿密な計画と入念なテストが必要だと、エンゲルブレヒト=ブレスゲスCEOは考えている。
「決して簡単な話ではありませんが、絶対に素晴らしい競馬場になると信じています。一般向けのスタンドは建設が進んでおり、今年の11月に完成する予定です。見た目も素晴らしく、先進的な施設だと言えます」
HKJCはこれに先立ち、2019年3月に従化競馬場でエキシビションレースを5レース開催している。当時、3000人の観客が場内に集まったが、馬券は発売されず、香港では15分遅れでの中継が行われた。
なお、従化競馬場の所在地は軍の『飛行禁止区域』に重なっており、シャティンからの移動は車で3時間かかる。同施設での競馬開催を巡っては計画が二転三転しており、今回の延期も関連事例の一つだ。