オイシン・マーフィー騎手は、一つの勝利が騎手のキャリアに与える影響を熟知している。それだけに、リヤドでのビザンチンドリームとの勝利が、日本馬への騎乗機会、将来的にはJRAに短期免許で戻ってこれることを期待している。
29歳のマーフィーが日本調教馬で海外勝利を挙げたのは3年ぶり。キングアブドゥルアジーズ競馬場で行われたG2・レッドシーターフハンデキャップ(芝3000m)で、後方待機から一気の末脚を炸裂させ、悠々と勝利を収めた。
ノーザンファーム代表、吉田勝己氏の妻である吉田和美氏の勝負服を身にまとい、笑顔でガッツポーズを見せながらウィナーズサークルへ戻ったマーフィー。日本馬との勝利は、2021年11月のG1・ブリーダーズカップディスタフ(ダート1800m)での矢作芳人厩舎のマルシュロレーヌでの劇的な勝利以来だった。
「日本馬で海外のレースに勝つのは本当に久しぶりで、最高の気分です」と、マーフィーはリヤドでIdol Horseに語ってくれた。
「この馬に乗れるだけでも夢のようでしたが、結果を出せたのはさらに素晴らしいことです。しかも、とても重要なオーナーのために勝つことができました」
「日本馬にこれまでも何度か騎乗してきましたが、日本ではしばらく乗っていません。こうして大舞台でいい馬に乗れたことは本当に嬉しいです。オーナーたちも観ていてくれたらいいのですが、日本は深夜2時だったからちょっと遅かったかもしれませんね」

マーフィーが日本に魅了されたのは、2018年末にJRAで短期免許を取得したときだった。6週間の冬季滞在で25勝を挙げ、東京競馬場での最終週にはG3勝利を含む圧巻の5勝をマーク。素晴らしい成績を残して日本を後にした。
2019年にイギリスへ戻った後も、日本調教馬との縁は続いた。日本馬がイギリスのG1を初制覇したのは、2000年のG1・ジュライカップにおけるアグネスワールドの勝利だったが、それから約20年後、マーフィーはディアドラとの歴史的快挙を演出することとなった。
橋田満厩舎のディアドラは、グッドウッド競馬場のハイライトとなる開催に初めて出走した日本調教馬だった。マーフィーはその期待に応え、G1・ナッソーステークスで鮮やかな勝利を収めた。
さらに、その5か月後には再び日本へ短期免許で来日し、今度は世界屈指のビッグレース、G1・ジャパンカップでの栄冠を手にする。スワーヴリチャードとの勝利は、当時24歳だったアイルランド南部キラーニー出身の若き才能が、国際的なG1戦線で台頭しつつあることを証明するものだった。
その冬の短期免許は2020年2月に終了したが、マーフィーにとっては日本での最後の騎乗期間となってしまった。
2020年7月、フランスでの薬物検査でコカイン代謝物が検出され、3ヶ月間の騎乗停止処分を受けた。さらに新型コロナウイルスの規制違反や2度の呼気検査の不合格により、英国競馬統括機構(BHA)からさらに14ヶ月の騎乗停止処分を科された。
2023年2月に復帰すると、イギリス、フランス、香港でG1勝利を挙げ、さらに昨シーズンには4度目の英国リーディングジョッキーのタイトルを獲得した。
マーフィーは過去の問題を乗り越えつつあり、リヤドでのビザンチンドリームでの勝利のような成功が、日本の競馬界への復帰に向けた後押しになることを願っている。しかし、日本の競馬界、特にJRAは規律に厳しく、過去の処分が復帰への大きな障壁となる可能性は否めない。
それでもなお、マーフィーは「ぜひまた日本で乗れるようになりたいです。これからも挑戦を続けていきますし、それでどうなるかを様子見していきたいです」と前向きな姿勢を示した。


その前に、今週末にドバイで開催されるスーパーサタデーで、日本馬との再タッグの機会が待っている。
矢作芳人調教師の管理馬アメリカンステージに騎乗し、G3・マハーブアルシマール(ダート1200m)に挑むとともに、テーオーサンドニに騎乗してG3・バージナハール(ダート1600m)に出走予定だ。
「今週末は自分にとって非常に重要です」とマーフィー。「スプリンターのアメリカンステージは好調ですし、マイラーのテーオーサンドニも素晴らしい馬です。素晴らしいチャンスをいただいたので、良い結果を出せるよう頑張りたいですね」
「この時期にこうした騎乗機会を得られるのは素晴らしいことです。勝利したり好走したりすれば最高ですし、こういうチャンスがあると遠征も楽しみになります。飛行機に乗るのもずっと楽になりますよ」