時折、世界のどこかでは、同世代の競走馬たちが競馬の流れを一変させることがある。同じ年に生まれた同期の馬は基本、ダービーやオークスのような世代限定戦で互いに優劣を競い合う運命にある。
エプソムで行われる原点のダービー、英ダービーを例に挙げよう。過去を振り返れば、ガリレオやシーザスターズのようなまさに世代を代表する名馬が勝ち馬になるケースもある一方、ウイングスオブイーグルスやサーペンタインのような勝ち馬もいる。全ての世代が平等ではないということだ。
ここで、日本競馬に話を移そう。日本で誕生した2019年生まれの世代、とりわけその世代の牡馬は真の『黄金世代』と言える。
世界王者のイクイノックス、今年の年度代表馬が有力視されるドウデュースを筆頭に、ジオグリフ、アスクビクターモア、ダノンスコーピオン、セリフォス、キラーアビリティ、ブローザホーンといったG1馬がこの世代に名を連ねている。
また、プラダリア、ローシャムパーク、ダノンベルーガ、シュトルーヴェ、マテンロウスカイ、ワープスピード、ガイアフォース、マテンロウレオといった、国内外のG1レースで実績を残している強豪もこの世代を構成する一員だ。
この世代の頂上決戦、2022年の日本ダービーではドウデュースがイクイノックスをクビ差で退けたが、イクイノックスにとってはこれが最後の敗北となっている。
このレースで注目を集めたのは上位2頭のスーパースターに違いないが、強かったのはこの2頭だけではない。後方でゴールした馬にも並外れた強豪が揃っていた。
驚くべきことに、今月上旬のG3・中日新聞杯でデシエルトが優勝したとき、2022年日本ダービー出走馬18頭のうち17頭が重賞ウィナーとなった。残る1頭はダービー後に復帰が叶わず引退を余儀なくされたロードレゼルだが、彼もまたG2・青葉賞でわずか半馬身差の2着という健闘を見せている。
重賞レースの数が限られ、一戦ごとの価値が高い日本競馬において、この記録は2019年世代の層の厚さを改めて証明するものだ。
日曜日、ドウデュースは日本を代表するレース、中山のG1・有馬記念に1番人気として出走する。生涯18度目のレースにして、これが最後の走りだ。レース後には引退式が執り行われ、その後はかつて激闘を繰り広げたイクイノックスも暮らす、北海道の社台スタリオンステーションで種牡馬入りする。
1956年のレース創設以来、有馬記念の出走馬は人気投票での選出馬が大部分を占める。
ドウデュースの凄まじい人気は得票数を見れば明白だ。502万1272票の総数のうち、47万8415票がドウデュースに投票され、これは2022年のタイトルホルダーが記録した36万8304票を大きく上回るものだった。2位のダノンデサイルは28万2521票、これでも多くの票を集めたが、それでもドウデュースとの差は大きく開いている。
この世代のチャンピオンはイクイノックスかもしれないが、ドウデュースもそれに匹敵する人気を誇っている。彼が有馬記念連覇を達成したその日には、中山競馬場のスタンドは大歓声で包まれることだろう。
日曜日は2019年世代の祭典となる一方、2021年世代もまた、虎視眈々と主役の座を狙っている。今年の有馬記念にはダービー馬のダノンデサイルを始め、菊花賞馬のアーバンシックも参戦する。
3歳世代の牡馬が古馬と対戦するのは今回が初めて。牝馬はすでに古馬との対戦が実現しており、チェルヴィニアはジャパンカップでドウデュース相手の4着、ステレンボッシュは香港ヴァーズで3着に入った。2歳時のホープフルステークスで牡馬を撃破し、3歳シーズン序盤は牡馬クラシックで戦っていたレガレイラもまた、有馬記念に出走するこの世代の一頭だ。
しかし、ドウデュースや他の黄金世代の猛者と肩を並べるには、3歳馬たちは途方もなく高い壁を乗り越えなくてはいけない。