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2024 阪神ジュベナイルフィリーズ: G1レビュー

競馬場: 京都競馬場
距離: 1600m 
総賞金: 2億5920万0000円 (173万0943米ドル)

アルマヴェローチェは日曜日、京都競馬場で行われたG1・阪神ジュベナイルフィリーズ(1600m)を制し、世代ナンバーワンの牝馬としての座を確かなものにした。また、鞍上の岩田望来騎手はこれがキャリア初のG1制覇だった。

通常、阪神JFは兵庫県の阪神競馬場で施行されるレースだが、現在は改修工事中であるため、1990年以来となる京都競馬場での開催が実現した。

また、このレースは日本競馬の歴史に残る一戦でもあった。というのも、日本の2歳G1レースに外国馬が出走するにはこれが史上初であり、栄えある第一号となったのはジョセフ・リー厩舎のメイデイレディだった。この馬は10月にキーンランドでG2・ジェサミンステークスを制し、先月デルマーで行われたG1・BCジュヴェナイルフィリーズターフでは2着に入っている。

阪神JFはこれまでにウオッカ、ブエナビスタ、ソダシ、リバティアイランドといったスターホースたちが制しており、アルマヴェローチェも歴代の勝ち馬リストにその名を連ねることとなった。

レース展開

フランキー・デットーリ騎手を背に参戦したメイデイレディは、スタートからのダッシュに成功。アメリカ馬は理論上スタートが速いとされているが、テンの速さを見せつけた形となった。枠順も17番枠と外に置かれていたため、スタートは大事な要素の一つでもあった。

しかし、デットーリと双璧を成すもう一人のレジェンド、リリーフィールドの武豊騎手がその直後に主張して先手を奪う。ミストレス、モズナナスター、ショウナンザナドゥも先行争いに加わり、メイデイレディは5番手まで位置を下げる。勝ち馬のアルマヴェローチェがメイデイレディのすぐ内側にいたことを考えると、位置取りは最悪ではなかったが、それでも厳しい競馬を強いられることになった。

先行争いは最初の500m地点まで繰り広げられたが、その後は流れも落ち着き、坂井瑠星騎手のミストレスがハナを取る展開でレースは進行。

直線に入ると、各馬は内と外に散らばって京都のコースをワイドに使う展開に。特に、直線入り口の段階で内側にいたビップデイジーの幸英明騎手は一気に外へと持ち出し、瞬く間に外側へ。そこから一気の追い上げを見せたが、アルマヴェローチェの末脚はそれを上回り、最終的に1馬身差をつけて勝利した。

Arma Veloce wins the Hanshin Juvenile Fillies
ARMA VELOCE, MIRAI IWATA / G1 Hanshin Juvenile Fillies // Kyoto /// 2024 //// Photo by Hiroki Yamanaka

勝ち馬・アルマヴェローチェ

アルマヴェローチェはこれまでそれなりの実績を積んでいたが、最有力候補からは一歩離れた存在だと見做されていた。しかし、今となっては最優秀2歳牝馬の一番手候補だ。

8月の札幌で行われた新馬戦を逃げ切って完勝し、同じ月に同じ条件で行われたG3・札幌2歳ステークスではマジックサンズのハナ差2着に入る善戦を見せている。

当歳時には、2022年の北海道セレクトセールにて3300万円(22万米ドル)で落札。伯父のモンドキャンノは、2016年のG1・朝日杯FSで2着に入った実績を持っている。

2010年のキングジョージ勝ち馬、父のハービンジャーにとっては8頭目のG1馬誕生だ。ディアドラ、ノームコア、チェルヴィニア、ナミュールといった他のハービンジャー牝馬と同様に、この馬もマイルから中距離で活躍する牝馬となりそうだ。

勝利ジョッキー・岩田望来

メルボルンカップ、香港スプリント連覇、ジャパンカップ3勝などの実績を持つ岩田康誠騎手を父に持つ24歳の岩田望来は、長い間期待を集めていた存在だった。

Yasunari Iwata wins the Melbourne Cup
YASUNARI IWATA (R), DAMIEN OLIVER / G1 Melbourne Cup // Flemington /// 2006 //// Photo by Mark Dadswell

2023年のWASJでは、レイチェル・キング、武豊、クリストフ・ルメール、ウンベルト・リスポリ、坂井瑠星、川田将雅、ジョアン・モレイラといった錚々たる騎手たちを上回る結果を残し、総合優勝のタイトルを獲得している。

しかし、JRAのG1レースは未だに未勝利。2022年のJpn1・JBCレディスクラシックをヴァレーデラルナで制覇して以降、G1レースは60回騎乗するも勝利には手が届いていなかった。

それでもこの日、61回目の騎乗で転機が訪れた。決して鮮やかなレース運びではなかったのかもしれない。だが、その手綱捌きは勝利への後押しとなった。

外々で馬群に揉まれる中、岩田はアルマヴェローチェを6番手、メイデイレディを見る位置で追走させることを選択。周りの各馬がレース中に動きを見せる中、その位置でじっと構えて直線を待つ。その後、メイデイレディは手応えが悪くなり、外に持ち出して加速態勢を整えることができた。

父の通算記録に並ぶには、G1レースであと34勝(うち海外5勝)を積み重ねる必要がある。今日はその一歩だ。まだ30年余り残されている残りの現役生活の中で、新たな伝説を創り上げるチャンスは充分あるだろう。

海外からの刺客

厳しい展開を強いられたメイデイレディだったが、勝負所でも残り500m地点であっさりと手応えを失い、残念な結果に終わってしまった。

リー調教師とデットーリ騎手曰く、馬場がこの馬にとって柔らかすぎたこと、そして初めての右回りコースが影響したという。また、ローテーションが厳しかったのかもしれないという見解も述べた。

結果は伴わなかったが、リーとオーナーたちが未知への挑戦を試みたことは、賞賛に値する。来年のメイデイレディは恐らく、ニューヨークで夏場に行われる芝のG1レースを狙うことになるだろう。

敗れた1番人気馬

フォーエバーヤングの半妹、ブラウンラチェットはこのレースに1番人気で出走。中山競馬場の1800mで行われた新馬戦を快勝、続く東京のG3・アルテミスステークス(1600m)も勝利しており、無敗の2連勝が評価された形となった。

しかし、レースでは馬群の中でもがき続け、末脚を伸ばすことなく終わってしまった。

今回の走りは不完全燃焼、彼女の本来の実力を考えれば度外視しても良い内容だった。

勝利騎手コメント

岩田望来騎手(アルマヴェローチェ・1着): 「6年間ずっと悔しい思いをしてきたので、この舞台に立てて、本当に嬉しいです。この馬に乗り始めたときからレースセンスの良さを感じていましたし、レースもスムーズで最後も良い脚を使ってくれました。ゴール寸前まで必死に追っていましたが、右を見たら誰もいなかったので、その瞬間に勝ったと分かりました。本当に操縦性が高い馬ですし、追ったらすぐに反応してくれる良い馬です」

Mirai Iwata wins the Hanshin Juvenile Fillies
MIRAI IWATA / G1 Hanshin Juvenile Fillies // Kyoto /// 2024 //// Photo by Hiroki Yamanaka

この先は?

通常、阪神JFの勝ち馬は、翌シーズンの牝馬クラシック第一戦であるG1・桜花賞(1600m)を目指すことになる。牝馬三冠の初戦でもあり、例年は阪神JFと全くの同条件で開催される。

アルマヴェローチェの場合もそのローテーションを使う可能性が高い。来年の3月には阪神開催が再開する予定となっており、そのタイミングで阪神競馬場での初出走を迎えることになる。

レースリプレイ: 2024 阪神ジュベナイルフィリーズ

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの国際担当。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。

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