「カーインライジング対オータムグロー対シーザアリバイ」夢の対決は実現するのか?豪州で誘致合戦が加熱、関係者に取材
カーインライジングと豪州二大牝馬による3頭対決を巡り、シドニーとメルボルンが誘致に動いていることがIdol Horseの取材で分かった。ジョン・メッサーラ氏は前向きだが、実現の鍵を握るのは香港ジョッキークラブだ。
「カーインライジング対オータムグロー対シーザアリバイ」夢の対決は実現するのか?豪州で誘致合戦が加熱、関係者に取材
カーインライジングと豪州二大牝馬による3頭対決を巡り、シドニーとメルボルンが誘致に動いていることがIdol Horseの取材で分かった。ジョン・メッサーラ氏は前向きだが、実現の鍵を握るのは香港ジョッキークラブだ。
2026 09 23シドニーの競馬主催者に多少なりとも演出のセンスがあるなら、来月、ジ・エベレスト発走の2時間ほど前から、PR活動を一気に本格化させるべきだろう。
ロイヤルランドウィック競馬場で、名牝ウィンクスの名を冠したスタンドの陰にある待機馬房エリアは、大舞台で名馬をひと目見ようと押し寄せた人々でごった返し、暑さと汗と人いきれが渦巻く混沌とした空間になる。
香港競馬界が誇る英雄、カーインライジングもそこに入り、総賞金2000万豪ドル(約22億4000万円)のジ・エベレスト連覇に向けて出番を待つ。ならば、カーインライジングの馬房を「青コーナー」と名づければいい。
そのエリアには、豪州最強馬クラスの牝馬、オータムグローもいる。
カーインライジングが最も得意とする1200mのジ・エベレストで両馬を対決させたいと大衆がいくら声を上げても、オータムグローが出走を待つのは、マイルで行われる総賞金500万豪ドル(約5億6000万円)の豪キングチャールズ3世ステークスだ。
2頭が最も近づくのは、カーインライジングがコースから引き揚げ、オータムグローが入場する際、夜の海を行き交う船のようにすれ違う瞬間だろう。ならばこちらの馬房を「赤コーナー」と呼ぼう。
遊び心を働かせ、2頭を厩舎地区の向かい合う馬房に入れてはどうか。互いに目を合わせられるようにするのだ。彼から彼女が見え、彼女から彼が見える。デートというわけだ。もちろん、ロマンチックな意味ではない。
次に2頭が顔を合わせる日取りは、3月でどうだろう。
豪州競馬界の実力者たちの思惑どおりに進めば、次に2頭が顔を合わせる時は、世界屈指の3頭を一堂に集める、テレビ中継向けの特別企画の一環となるからだ。
今月初め、デヴィッド・ヘイズ調教師がメルボルンのラジオ番組で、豪州競馬界の二大牝馬、オータムグローとシーザアリバイとの対決について打診を受けたと口を滑らせて以来、競馬ファンの間では「本当に実現するのか」との疑問が広がっている。
一言で答えるなら、話はそう単純ではない。
世界最高評価を受け、21連勝中の馬を招くことは、どの有力競馬主催者の幹部にとっても魅力的だろう。しかし、実現するかどうかは別として、この特別レースの開催地を巡り、シドニーとメルボルンの間では半ば戦争のような誘致合戦がすでに始まっている。
間違いなく、主導権を握るのはカーインライジングと香港ジョッキークラブ(HKJC)だ。このレースにとって同馬は不可欠だが、カーインライジングにこのレースが必要なわけではない。
「マッチレースについて考えるのは、まず春シーズンを乗り切ってからだと思います」とヘイズ師は話した。
「ただ、個人的には、夢の対決がぜひ実現してほしいですね。カーインライジングの馬主であるレオン・シェク・コン(梁錫光)氏は五分五分というところで、HKJCがどう考えているかは分かりません」
「こうした馬を世界各地へ輸送するには、ある程度のリスクが伴うため、3者全員が賛成しなければなりません」

2027年に実施するとすれば、時期は3月しか考えられない。
シドニー側はゴールデンスリッパーデーを希望し、メルボルン側はその1週間後のオーストラリアンカップ開催日に組む計画だ。この日程なら、カーインライジングは検疫を終え、G1・チェアマンズスプリントプライズに向けて香港へ戻る時間を確保できる。
カーインライジングの2度目のシドニー遠征がすでに決まり、同馬が現地の環境を経験済みであることは、オーストラリアンターフクラブ(ATC)にとって有利に働くはずだ。ATCはローズヒルガーデンズ競馬場の1500mでこの対決を行う案について、各陣営の意向を探っている。
ゴールデンスリッパーデーは、すでに5つのG1が行われる豪州最大のG1デーだ。そこへこの対決が加われば、一時は閉鎖寸前まで追い込まれたローズヒルガーデンズ競馬場にとって、大きな追い風となる。
同競馬場を「ミニシティ」へ再開発するニューサウスウェールズ州政府の50億豪ドル(約5600億円)規模の計画が持ち上がっていたが、ATC会員が売却案を否決した。
レースの実施方法には二つの選択肢がある。一つは、3頭が既存のG1レース、ジョージライダーステークスに出走する案だ。
この場合はほかの馬も出走できる。現在100万豪ドル(約1億1200万円)の賞金に、3頭の各陣営がそれぞれ自己資金100万豪ドルを拠出し、さらに企業の支援金を加える。3頭のうち最先着した馬が、その上乗せ分を総取りする仕組みだ。
この記事の取材に応じた複数の情報源によれば、もう一つの案は、カーインライジング、オータムグロー、シーザアリバイのためのレースを当日の番組に新設することだ。
各陣営が自ら資金を拠出し、大口スポンサーが賞金を上積みする。香港でも中継され、World Poolの対象として馬券が発売されるのに都合のよい時間帯に合わせ、開催後半、おそらく最終レースに組まれることになる。
3頭にとって最良の妥協点は1500mのようだ。カーインライジングは、これまで経験のない距離まで守備範囲を広げなければならない。一方、今年のジョージライダーステークスを圧勝したオータムグローにとっては絶好の条件だ。
マイルで抜群の強さを見せてきたシーザアリバイが最も不利を受けるかもしれないが、1500mにも対応できるだけの自在性はあるはずだ。
共同調教師のピーター・ムーディー師は、シーザアリバイが力を発揮できる淀みのない流れを生むため、3頭だけのレースではなく、ジョージライダーステークスのような多頭数戦で3頭を対決させる案を支持しているという。
ATCのスティーブ・マクマホン最高経営責任者は「もちろん、実現の可能性は決して高くありません。それでも、私たちは何としても実現させるつもりです」と語った。
「ローズヒルにとって、ここ何年かで最高の宣伝になります。競馬場は満員になるでしょう。競馬界に必要な革新を、さらに一歩進めるものです」
しかしメルボルン側も、カーインライジングが名高いフレミントン競馬場の芝を初めて駆け抜ける姿を、是が非でも実現させようとしている。
当時は広く報じられなかったが、Idol Horseの取材により、昨年カーインライジングがシドニーでジ・エベレストを制した後、ヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)が同馬の豪州2戦目を実現させる寸前まで話を進めていたことが分かった。
その舞台となるはずだったのは、フレミントン名物の直線6ハロンで行われる総賞金300万豪ドル(約3億3600万円)のチャンピオンズスプリントだった。
ただし、そこには条件が一つあった。
ジ・エベレストの2週間後もシドニーに残り、ラッセルボールディングステークスを勝った場合に得られる金額と同水準になるよう、カーインライジングが勝利した際のボーナスをVRCが用意しなければならなかったのだ。不足額は約150万豪ドル(約1億6800万円)だった。
結局、カーインライジングはシドニーでもメルボルンでも豪州2戦目を走らず、香港へ戻ることが決まった。
今回はVRCが、対決レースの構想でシドニーに後れを取っているとの報道を一蹴している。VRC側は、5月の時点ですでにヘイズ師と計画について話し合いを始めていたと強調する。
VRCで競馬部門のエグゼクティブ・ゼネラルマネージャーを務めるリー・ジョードン氏は「VRCは3月の時期に対決レースを開催することに非常に前向きで、各陣営には1400mで走る機会を提案します」と述べた。
「ほかの距離についても話し合う用意があります。レーシングヴィクトリア、TAB、そしてVRCが、この企画の資金を共同で負担できればと考えています」
豪州の関係者は、豪州での対決後に、香港でも同じ3頭によるレースを行う案に前向きだと強調する。ただし実現には、オータムグローとシーザアリバイの各陣営から相応の協力を取り付ける必要がある。


オータムグローの共同馬主を代表するジョン・メッサーラ氏は、競馬界でも筋金入りの伝統主義者として知られる。
豪州の主要競走の日程やサラブレッドの資産価値を左右する重賞・リステッド競走の体系を巡り、各州は長年対立を続けてきた。メッサーラ氏は、この膠着状態を最も強く批判してきた一人である。
同氏は来年、オータムグローを海外遠征させたいと考えており、最有力候補はロイヤルアスコット開催だ。しかし同時に、カーインライジング、シーザアリバイとの対決案も歓迎している。
メッサーラ氏はIdol Horseに「秋に既存のレース、または3頭による対決でシーザアリバイ、オータムグロー、カーインライジングを顔合わせさせようと、競馬クラブの関係者間で協議が行われていることは承知しています」と語った。
「胸が躍る対決になると思いますし、共同馬主と調教師との話し合いを前提に、私も賛成です。素晴らしい一戦になるでしょうし、実現すれば競馬にとって大きな呼び物になると思います」
香港ジョッキークラブ(HKJC)は、すでにWorld Poolの推進を通じて、豪州の各競馬主催者との関係を深めている。
カーインライジングは香港の競馬ファンから絶大な人気を誇り、レースに出るたびに単勝式の投票のほぼすべてを集めている。今月初めのシーズン初戦では、単勝売上の97.52%が同馬に集中した。単勝オッズは1.05倍で、HKJCがその払戻額を確保するため、自ら投票プールへ資金を補填しなければならないほどだった。
香港では、1~3着に入る2頭を当てる「ワイド」が特に人気のある券種の一つで、豪州では「デュエット」と呼ばれる。
香港の看板馬を含む3頭立てのレースが豪州で行われれば、この券種はたちまち意味をなさなくなる。HKJCと、長年そのトップを務めてきたウインフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲス最高経営責任者にとっては懸案であり、検討すべきことは多い。
来月、エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏らHKJCの幹部はシドニーへ飛び、カーインライジングがジ・エベレスト連覇を果たすかを見届ける。昨年、香港の英雄が敵地で豪州のトップホースを圧倒したことは、彼らにとって大きな誇りだった。
その眼下では今年も、カーインライジングとオータムグローをひと目見ようと観客が行き交う。その一方で、関係者用スイートルームでグラスを合わせながら交わされる非公開の会話もまた、重要な意味を持つ。
その話し合いが、夢の3頭対決を現実にできるかどうかを大きく左右するかもしれない。