2025 G1 マイルチャンピオンシップ
京都のG1・マイルチャンピオンシップは1984年に創設されたレースで、6月上旬のG1・安田記念に続く、日本におけるシーズン2つ目の定量マイルG1である。
マイルのチャンピオンを戴冠できる舞台であると同時に、ここ20年ほどの間に、数週間後に行われる香港国際競走への重要な前哨戦としても位置づけられるようになってきた。今年の一戦は、そうした要素がすべて絡み合い、まさに真のチャンピオン決定戦となることを予感させる。
競馬場: 京都競馬場
距離: 1600m
総賞金: 3億9060万0000円 (約260万4000米ドル)
ジャンタルマンタル、春秋マイルG1制覇なるか
社台レースホースのジャンタルマンタルは、デビュー以来3シーズン連続で、毎年マイルの大舞台を制してきた。
2歳時にはG1・朝日杯フューチュリティステークス、3歳時にはG1・NHKマイルカップ、そして今季6月にはG1・安田記念を制覇。安田記念とマイルCSは、日本における定量マイルG1の二大競走であり、ジャンタルマンタルは同一年にこの2レースを制する史上9頭目の馬を目指す。
直近でこの偉業を成し遂げたのは5年前のグランアレグリアで、そのほかにもモーリス、ダイワメジャー、タイキシャトルといった名マイラーたちが名を連ねる。
ジャンタルマンタルは、G2・富士ステークスで手堅い前哨戦をこなし、ここに臨む。その富士Sでは、安田記念で1馬身半差の2着だった大人気の芦毛馬・ガイアフォースに、半馬身差の2着。さらに安田記念と富士Sの両方で、昨年のマイルCS覇者のソウルラッシュが3着に入っている。
これら2戦の内容からも分かるように、今年のマイルCSは、日本のマイル王タイトルを決める直接対決になる公算が大きい。

ドックランズ、歴史を塗り替えられるか
歴史を振り返れば、海外馬の険しさははっきりとしている。
外国馬が初めてマイルCSに挑戦してきたのは2003年のことだが、このときはデュランダルが勝利し、トロフィーは日本に留まった。当時、フランスのデヴィッド・スマガ厩舎が送り込んだスペシャルカルドゥーンは9着、フォルク・ジョンソンホートン厩舎のイギリス馬、トゥスールは16着に敗れた。
その後も7頭の外国馬が、このシーズン終盤の大レースに計9回挑んできたが、フランスのサプレザは複数回挑戦しており、3着、4着、そして2011年の最後の挑戦で再び3着という成績だった。
ドックランズは、その2011年以降では2頭目の海外馬となる。昨年は同じイギリス調教馬のチャリンが、5着に健闘したばかりだ。ハリー・ユースタス厩舎の5歳馬、ドックランズは堅実なG1級の実力馬へと成長を遂げ、今年6月にはアスコットのG1・クイーンアンステークスで優勝し、キャリア最高の栄誉を手にした。
戦績全体から見ると、まだ“世界の超一線級”とまでは言えないかもしれない上、マイルCSという舞台自体も簡単には攻略できないレースだ。それでも、後方から鋭く差してくる彼のスタイルは、例年ペースが流れやすいこのレースにフィットする可能性がある。世界を転戦してきた経験値も、この大舞台で必ずプラスに働くはずだ。

マイルCS経由、香港行き?
ドックランズを含むマイルチャンピオンシップの有力馬10頭は、いずれも12月にシャティン競馬場で行われるG1・香港マイルに登録している。
その10頭の中にはジャンタルマンタルも名を連ねているが、陣営は現時点では国内に専念する方向に傾いている。一方で、今年2月のサウジアラビア遠征で勝利を挙げた牝馬のアスコリピチェーノ、安田記念2着馬のガイアフォース、そして前年マイルCS覇者のソウルラッシュは、香港マイルの主役候補としても名前が挙がる存在だ。
ソウルラッシュは昨年、香港マイルで2着に惜敗しているが、過去には2005年のハットトリック、2015年のモーリスがマイルCSに続いて香港マイルも制している。その流れを踏まえると、2025年も再び日本勢が香港マイルを制する年になってもおかしくない。
ベテランマイラー、連覇となるか
昨年の勝ち馬、ソウルラッシュは今年も勝利すれば、7歳でのG1制覇となる。2009年、8歳でこのレースを制したカンパニーに次ぐ、マイルCS史上2番目の高齢馬優勝記録だ。
ただし、このレースの連覇自体は決して珍しいことではない。初代勝ち馬のニホンピロウイナーは1985年に連覇を達成しており、その後も合計6頭が2勝目を挙げている。直近の連覇馬は、2020年と2021年を連覇した名牝、グランアレグリアだ。

シルバーステート、待望のG1タイトルへ
2022年4月のG1・桜花賞で、ウォーターナビレラがハナ差の2着に敗れたとき、シルバーステートの産駒がG1を制するのは時間の問題だと思われていた。
ディープインパクト産駒の逸材、シルバーステートは、故障に苦しんだ現役生活を5戦4勝で終えたものの、種牡馬入り初年度から大きなインパクトを与え、2021年の新種牡馬ランキングではドレフォンに次ぐ2位と、“鮮烈デビュー”を飾っていた。
しかし、あの桜花賞の惜敗から3年7か月が経った今も、そのブレイクスルーの瞬間は訪れていない。今週日曜の大一番では、ラヴァンダとランスオブカオスが、父シルバーステートのジンクス打破に挑むことになる。
昨年のG1・秋華賞で4着に入ったラヴァンダは、ここへ2連勝中で臨む。そのうち直近の一戦は、3歳以上牝馬によるG2・アイルランドトロフィーで挙げた勝利だ。
一方、G3勝ち馬のランスオブカオスは、昨年のG1・朝日杯FSで3着に入った実績を持ち、今回はG2・スワンステークスで3着と堅実に好走した勢いのまま、京都の芝1600mに挑む。


