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カーインライジングに騎乗するザック・パートン騎手は、先週の火曜朝に行われた1000mのバリアトライアルから、ロイヤルランドウィック競馬場のG1・ジ・エベレストまでの、「今後10日間」をどう過ごすかが勝負の鍵になると見ている。

火曜日に公開調教として行われた “試走” は大きな注目を浴び、賞金総額2000万豪ドル(約20億円)のジ・エベレストで断然人気に推されているカーインライジングの状態が本物かどうか、多くの議論を呼んだ。

2日後、香港で8度のリーディングジョッキーに輝いたパートンは、トライアルでの動きについては大きな不安を感じていなかったと振り返った。調教用の鞍を着用し、翌晩のハッピーバレーで121ポンド(約55キロ)で騎乗する予定だったため、パートン自身もかなり体を絞って臨んでいたという。

ただし、パートンは3位入線の背景に複数の要因を挙げている。カーインライジングは休養を挟んだため、この6か月で実戦はわずか1戦。輸送と検疫を経て、「これまでで最も重い馬体」だったという。さらに馬場状態や不慣れな環境、試走前の不安な様子など、さまざまな要素が重なっていた。

そのため、現地入り後初のバリアトライアルは3位入線という無難な結果に終わったものの、見た目以上に内容は悪くなかったと彼は捉えている。

パートンが、これまでの騎乗馬の中で最高傑作だと確信しているのは間違いない。だが、地元の香港で見せてきたような圧倒的な勝ち方を、ジ・エベレストの舞台でも再現できるとは考えていない。むしろ、参考になるのは2023年のG1・コックスプレートだ。香港のロマンチックウォリアーが遠征先で苦しい競り合いを制したように、「厳しい展開を力でねじ伏せる」必要があると感じている。

「おそらく、そういう展開になるでしょう」と、パートン騎手はIdol Horseに心境を明かした。

「試走のバリアトライアルでは明らかにベストの状態ではありませんでしたし、レースではもっと良くならなければなりません」

「カーインライジングにとってあのトライアルは必要なものでしたし、さらに良化させるにはもう一本の追い切りが必要です。少しコースに戸惑っていましたし、馬場もやや軟らかかった。私が到着したとき、待機馬房ではかなり取り乱していました。みんな特別な走りを見たがっていましたが、レース本番では十分に戦える走りを見せてくれるはずです」

「とはいえ、彼が万全の状態のときどれほど強いかは私が一番よく知っています」と続ける。「当日、それに近い状態で臨めることを願うばかりです。ファンもそうでしょう。彼がしっかりレースに出てきて、全力を尽くす姿を見たいはずです」

パートンは、10月18日の本番でランドウィック競馬場の馬場が緩くなることについては心配していない。自身の感触では、バリアトライアルでの馬場はやや柔らかかったが、天気予報では晴天が続く見込みで、主催者も必要最低限の散水に留めると見ている。

「天候を考えれば、当日は “Good 4(上から4番目の稍重)” になるでしょう」とパートンは語る。

「ランドウィックの馬場管理はとても優秀なので、過度な散水はないでしょう。先日のトライアルでは “Good 4” だったと言われていますが、実際はそれよりも軟らかかったです。ですが、本番は稍重で問題ないと思います。それで十分です」

ここ数週間、パートンはレース当日の精神面を懸念している。カーインライジングはこれまで全16戦中の14勝を、そして直近13連勝をすべてシャティン競馬場で挙げており、ずっとホームの環境下で戦ってきた。今回の遠征先での初試走は、その不安を払拭するには至らなかった。

「馬房でかなり汗をかいているのが分かりました。興奮状態で、立ち止まることができず、歩かせ続けなければなりませんでした。鞍を着けるのも一苦労で、パドックに着いた頃には後脚の間から汗が流れ落ちていました」

「あれほど入れこんでいたのは残念です。なにせ、ただの公開試走ですからね。ランドウィックのレース本番当日は、その比ではありません。今の最大の懸念は、レース前にどれだけ自分を落ち着かせられるかです」

「競走馬というのは海外遠征に出ると、普段のルーティンが崩れます。馬にとって環境の変化は大きい。多くの陣営が海外遠征をためらう理由がそれです」

この公開試走には約1000人が詰めかけ見守った。これらの状況を踏まえれば、その後も専門家、競馬関係者、ファンがポッドキャスト、印刷物、ソーシャルメディアのスレッドでこの試走内容を細かく分析したのも無理はない。「期待外れ」という反応が多くを占めた。

「オーストラリアでは、少し “出る杭は打たれる” という文化があります」とパートンは笑う。

「何でも細かく分析されますし、みんな地元馬を応援したい。それは自然なことです。私だって同じ立場ならそうしますよ。カーインライジングは大きな評判を背負ってここに来ました。だからこそ期待も高かったですし、それに応えられなかったことで批判も出ます。それも競馬の一部ですし、意見が出るのはむしろ健全なことです」

それでも、今回ランドウィックで試走を行えたことは大きな収穫だという。シャティンでは1200mの平坦なコースを、スタートからスピードに乗せて走るのが得意だが、ランドウィックは異なる。右回りながらシュートからスタートし、ドッグレッグを経て、直線入り口にはわずかな上り坂がある。

「実際に走ってみたのは良い経験でした。これでコースを理解したはずですし、本番で観客が入り、フェンス沿いを進むことで気持ちが引き締まるはずです」

戦法について問われると、パートンは淡々とした口調で答えた。

「特別なことはしません。いつも通りの騎乗をするだけです。スタートの出方とレースの流れを見て判断します。前に行きたい馬がいれば控えますし、行かなければこちらが行きます。ゲートの並びが展開を左右するでしょうし、彼自身が自然にポジションを見つけられればそれで十分です」

「試走から本番までの10日間で、レースに向けてしっかり仕上げたい。できることをすべてやるつもりです」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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