Aa Aa Aa

クリスチャン・デムーロ騎手はこれまでに2度、G1・凱旋門賞を制している。しかし、まだ満足していない。今週日曜日、このイタリア人ジョッキーの野望は “2勝から3勝に” 積み重ねることだ。今回のパートナーはルファールだが、まだ真価を示す必要がある。

もし、仮に3度目の勝利を逃しても、デムーロの挑戦は来年以降も続くだろう。一度その味を知った以上、勝負師として現状にとどまることはない。

「ヨーロッパの騎手は皆、騎手を志したときからこのレースを勝ちたいと夢見ています。だから勝てたときは特別なんです。2度勝てたのはさらに特別で、良い馬に恵まれた幸運だと思います」とデムーロはIdol Horseに語る。

「世界最大級のレースのひとつです。自分が死んでも、名前は記録に残る。世界最高のレースのひとつに名前が刻まれて残るのです」

その記録に名を刻みたいのは、オイシン・マーフィー騎手も日本競馬も同じだ。日本からは今年、前哨戦を勝った3頭が参戦し、マーフィーは伏兵のビザンチンドリームに騎乗する。

マーフィーの野望は明快だ。「凱旋門賞は、私が他のどんなレースよりも勝ちたい一戦。だから、私にとって非常に非常に大事なんです」と、Idol Horseに今週語ったその言葉は、日本の競馬ファンの思いを代弁するものでもあった。

日曜の大一番で坂口智康厩舎のこの4歳馬を勝利に導けば、1969年にスピードシンボリが初挑戦して以来、日本勢が今まで果たせなかった悲願を成し遂げた騎手として、その名は永遠に語り継がれるだろう。

レヴモスの11着に敗れたスピードシンボリ以来、これまでに35頭の日本調教馬が挑戦。1999年、エルコンドルパサーがモンジューの末脚に屈して以来、31頭が挑んでいる。そこにはディープインパクト、オルフェーヴルといった歴史的名馬も含まれてきた。

JRAの冬開催で常連騎乗するデムーロは、日本勢の中でマーフィーが最も有力馬に乗っていると見ている。今年の参戦は、8月のG2・ギヨームドルナノ賞を快勝したアロヒアリイ、G1・日本ダービー馬のクロワデュノール(前走G3・プランスドランジュ賞勝ち)、そしてビザンチンドリームの3頭だ。

「実力だけならクロワデュノールが日本勢で一番。ただ、ビザンチンドリームはフォワ賞で距離と舞台に適性を示しました。今年、日本調教師管理馬の中から1頭選ぶなら、この馬だと思います」とデムーロ。

「クロワデュノールはロンシャンのG3ではあまり見せ場がなかった。良馬場のほうが合うのかもしれません。一方、ビザンチンドリームはどこでも走れる。今年の日本勢の最有力はこの馬だと見ています」

マーフィーはその見立てに期待を寄せる。英国4度のリーディングジョッキーは、2月にサウジで3000mを勝たせた相棒が2400mで真価を発揮すると信じている。ただし、クロワデュノールについてはデムーロとは異なる見解を示した。

「ビザンチンドリームはフォワ賞を良い形で勝ちました。末脚も鋭く、ソジーを基準にしても高い評価ができます」とマーフィー。

「ただ、超長距離で強いステイヤーだとは思いません。サウジアラビア・リヤドで勝った時も、直線で一気に突き抜けた後に最後は止まりかけていました。速い馬場で小回りのトラックだったこともあります。2400mが一番合う距離でしょう」

「加えてクロワデュノールやアロヒアリイも前哨戦を良い形で勝ちました。クロワデュノールは特に印象的でした。2000mでスローペースのレースを、しっかりリラックスして走り、直線では力強く伸び切りました」

デムーロ自身の手綱を取るルファールは、7月のG1・パリ大賞を快勝したものの、前走G2・ニエル賞ではゴドルフィンのクアリフィカーに2馬身3/4差をつけられ6着。

「パリ大賞は強い勝ち方でした。あの走りを再現できればチャンスはあります。ただ前走では同じ馬だとは思えませんでした」とデムーロは振り返る。

「パリ大賞後は休養に入っていましたし、前走は100%ではなかったのでしょう。外枠から後方に控えましたが、鋭い脚を繰り出せなかった。ただ、最後に少し伸びてきましたし、使ったことで良化するはずです。ただし今年は厳しい戦いになるでしょう」

一方、マーフィーが注目するのは牝馬勢だ。

「アヴァンチュールとミニーホークは上位人気にふさわしい存在。アヴァンチュールは完璧なローテ-ションで臨んできましたし、エイダン・オブライエン師はこのレースで実績抜群。ミニーホークも高く評価されるべきです」

1973年9月29日、セクレタリアトがキャリア4敗目にして最後の敗北を喫した。舞台はウッドワードステークス、距離は2400m。泥のような馬場でプルーヴアウトに4馬身半差をつけられたのだった。その後セクレタリアトは、芝のマンノウォーステークスとカナディアンインターナショナルを圧勝し、華やかなキャリアを締めくくることになる。

1902年10月2日、英国ジョッキークラブの裁決委員が衝撃の決断を下した。前年度のチャンピオンジョッキー、レスター・レイフ騎手に対し、警告処分と騎手免許の取り消しを言い渡したのだ。当時、英国のリーディング上位をアメリカ人騎手が席巻しており、レイフもその一人だった。

しかし、彼の周囲には不正や賭け事に関する疑惑が絶えず、9月にマンチェスターで行われたニューバーンズプレートでは、同年のダービー勝ち騎手であるにもかかわらず、デレイシー号の走りを意図的に止めたと地元の裁決委員に判断された。

1920年10月3日、第1回凱旋門賞が行われた。優勝賞金は15万フラン。勝利したのはエヴルモン・ド・サンタラリ氏の所有馬カムラッド(3歳牡馬)。英国のピーター・ギルピン厩舎で調教され、フランク・ブロク騎手が騎乗し、6歳馬のキングズクロスに1馬身差をつけて歴史的一戦を制した。

先週末、アダム・ペンギリーはローズヒル競馬場を取材。クリス・ウォーラー厩舎は、ダレン・ビードマン氏が頼れる右腕として加わったおかげもあり、快進撃が続いている。

「人々を再び競馬場へ戻す方法はないのか?」一方、売却・解体を逃れた競馬場は別の課題にも直面している。

1990年、ジェラルド・モッセ騎手が凱旋門賞を制した。昨夏、デヴィッド・モーガン記者が取材したモッセは、騎手から調教師へと転身する節目を迎え、数々の名レースや名馬、そして子供時代に乗り続けたポニーの思い出を振り返った。

今年2月、アガ・カーン殿下が88歳で逝去。その死は競馬界の多くから惜しまれ、当時クリストフ・ルメールもIdol Horseに思いを語った。凱旋門賞を4度制し、数十年にわたりロンシャンの象徴的存在でもあった大馬主兼生産者。その勝負服が今年、ダリズの背に託されるとなれば、感慨はひとしおだ。

先週末、英国のニューマーケット競馬場ではG1レースが2鞍行われ、ゴドルフィンの牡馬・ワイズアプローチがG1・ミドルパークステークスを、クールモアの牝馬・トゥルーラブがG1・チェヴァリーパークステークスを制した。

だがその24時間前、ニューマーケット競馬場・ローリーマイルコースの舞台では、来春のクラシック候補として注目すべきもう一頭の牝馬が現れた。それが、サイモン&エド・クリスフォード厩舎のザントスだ。彼女はG2・ロックフェルステークスの勝ち馬だ。

ザントスは7月のニューマーケット競馬場でデビュー勝ちを飾ったものの、9月初旬のレスター競馬場ではトゥーリーンの後塵を拝して大差の2着に敗れていた。そのためロックフェルSではトゥリーンが本命に推され、ザントスは単勝8.5倍の伏兵評価に過ぎなかった。

しかし、クリスフォード師親子の期待馬は、スタンド側の内ラチ沿いから主導権を握ると、力強さとしぶとさを兼ね備えた走りで堂々と押し切った。


近年、ロックフェルSの勝ち馬はG1制覇こそ果たしていないが、ハイレベルな実績を積み上げてきた馬も少なくない。

さらに過去を振り返れば、1989年の勝ち馬ミュージカルブリスが翌年のG1・1000ギニーを制覇。1999年のラハン、2006年のスペシオーサも同様に1000ギニーを勝っている。2007年のフィンシャルベオに至っては、英・愛両国の1000ギニーを制した。

ほかにも、1998年のフラエンジェル、2012年のジャストザジャッジはいずれもアイルランド1000ギニーを制し、2004年のメイズコーズウェイはその後G1・コロネーションステークスを制覇している。

🇫🇷 凱旋門賞デー
10月5日 
G1・凱旋門賞(IHFAレーティング5位)、G1・フォレ賞(同98位)

注目のG1・凱旋門賞には18頭が出走予定。“トリプル” オークス制覇のミニーホーク、前年2着馬のアヴァンチュール、日本勢3頭の筆頭には日本ダービー馬のクロワデュノールが名を連ねる。

そのほか6つのG1が組まれる豪華な番組の中で、G1・仏1000ギニー勝ち馬ザリガナは、G1・モーリスドゲスト賞馬のサジール、G1・サセックスステークス覇者のキラートと激突するG1・フォレ賞に挑む。また、快速牝馬のアスフォーラは、G1・アベイユドロンシャン賞で豪州調教馬として初のフランス勝利を狙う。

🇦🇺 マイトアンドパワーデー
10月11日
G1・マイトアンドパワーステークス

先週末の前哨戦を経ても、G1・コーフィールドギニーの勢力図は混沌としている。G1・ゴールデンローズで人気に応えられなかったオータムボーイは、少なくともマイルの距離が必要に見えた。

一方、G1馬ヴィンロックはG2・スタットステークスで出遅れて5着まで。勝ったウェストオブスウィンドンや、サンダウンのハンデ戦を勝ったネイビーパイロットも新たな候補に浮上した。また、ゴールデンローズ2着のウォートンはジ・エベレストからギニーへ路線変更している。

G1・マイトアンドパワーステークスの主役は、先週のG2・フィーハンステークスでプライドオブジェニに敗れたものの2着と健闘したトレジャーザモーメント。さらに当日はマイルのG1・トゥーラックハンデキャップも行われる。

🇬🇧 デューハーストステークスデー
10月11日
G1・デューハーストステークス

ニューマーケット競馬場では、G1・ナショナルステークスで接戦を演じたザヴァテリとグスタードが再戦。カラ競馬場ではアタマ差を分けた両者が、今度はザヴァテリの本拠地で激突する。先週のG3・タタソールズステークスを勝ったディスタントストームも加われば、さらに熱を帯びそうだ。

この開催ではG3が3鞍に加え、1839年に創設された伝統のチェザレウィッチハンデキャップ(ロシア皇太子ハンデキャップ)も行われる。

🇦🇺 ジ・エベレスト
10月18日
G1・ジ・エベレスト(IHFAレーティング29位タイ)/G1・キングチャールズ3世ステークス(同59位タイ)

香港のスーパースター、カーインライジングは、世界最高賞金の芝レース・総額2,000万豪ドルのG1・ジ・エベレストを前に、滞在先のカンタベリー競馬場ですでに大きな注目を集めている。来週火曜のランドウィック競馬場での試走を経れば、その熱はさらに高まるだろう。

今週末のランドウィックでのG2・プレミアステークス、フレミントンでの3歳馬限定G2・デインヒルステークスと古馬スプリントG2・ギルガイステークスが、残された出走枠を狙う最後のチャンスとなる。

🇦🇺 コーフィールドカップデー
10月18日
G1・コーフィールドカップ

コーフィールドカップの前哨戦は今週末、フレミントン競馬場とランドウィック競馬場で行われる。過去10年の豪州・NZ調教馬による勝ち馬のうち7頭は、G1・ターンブルステークスかG1・ザ・メトロポリタンを経由していた。さらにG3・ザ・バートカミングスにも有力馬が出走する。

前売り市場上位6頭のうち、ハーフユアーズ、アエリアナ、バードマン、ランドレジェンドの4頭が今週末に出走予定。加えて、メイダーン、ゴールデンスナップ、プレサージュノクターン、アブサードといった国際勢も今週メルボルンに到着した。

🇬🇧 ブリティッシュ・チャンピオンズデー
10月18日
G1・チャンピオンステークス(IHFAレーティング16位タイ)/G1・クイーンエリザベス2世ステークス(同29位タイ)

アスコット競馬場では5つのG1が並ぶ豪華プログラム。中でもG1・チャンピオンステークスには注目が集まる。G1・愛チャンピオンステークスとG1・エクリプスステークスを制したドラクロワと、G1・インターナショナルステークスでそれを破ったオンブズマンの再戦が期待される。カランダガンも10ハロン戦線に戻る見込みだ。

一方、マイルのG1・クイーンエリザベス2世ステークスでは、フィールドオブゴールドがG1・サセックスステークスの雪辱を期す。

🇧🇷 ラテンアメリカ大賞デー
10月18日
G1・ラテンアメリカ大賞

南米競馬の頂点に立つG1・ラテンアメリカ大賞が、2016年以来となるブラジル・ガベア競馬場に帰ってくる。出走はすでに確定した16頭。内訳はアルゼンチン2頭、チリ3頭、ペルー6頭、ウルグアイ1頭に、迎え撃つブラジル4頭。ジョアン・モレイラ騎手は日本から戻り、サンパウロのオバタイェとのコンビを継続する。

🇦🇺 コックスプレートデー
10月25日
G1・コックスプレート(IHFAレーティング10位タイ)

1883年からタイトなコース形状で親しまれてきたムーニーバレー競馬場は、この日をもって現行コースでの最後の開催を迎える。第104回となる看板レースのG1・コックスプレートが終了後、改修工事に入り、現在の800m地点に新スタンドが移設される予定だ。

記念すべきコックスプレートの主役はヴィアシスティーナ。史上14頭目となる複数回制覇を狙うが、4歳牝馬のアエリアナ、トレジャーザモーメント、元フランス馬のサーデリウス、そしてアンティーノやバッカルーといった歴戦のG1馬が立ちはだかる。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

デイヴィッド・モーガンの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録