日曜日、ブレット・クロフォード調教師は香港初勝利を含む2勝を挙げた節目のシャティン開催を終え、競馬場内の自室に戻った。興奮と喧騒から離れ、彼はしばし静かに振り返り、自身のキャリアが脳裏をよぎったという。
思いを巡らせたのは、これまでの道のりを形作るうえで重要な役割を果たした二人の存在だった。一人は、香港シーズン開幕直前に急逝した長年の南アフリカ人アシスタント、バリー・ドネリー氏(享年70)。その訃報はクロフォード師の香港デビューに暗い影を落としていた。
そしてもう一人は、クロフォード師が「すべては彼のおかげ」と語る香港人アシスタント、ロイ・チョン氏である。
「バリーは、まさに厩舎の一部そのものでした」とクロフォード師はIdol Horseに語った。
「私が独立して間もなく加わり、12年間にわたって一緒にやってきました。だから、あまりにも突然の出来事で、大きなショックでしたし、私たちにとって非常に大きな喪失でした。彼は今も私たちのチームの一員であり、すべてに感謝しています。どこにいようと、バリーは永遠にクロフォードレーシングの一員です」
ロイ・チョン氏もまた、クロフォード師のチームに欠かせない存在となっている。彼はベンノ・ユン調教師の引退と厩舎解散を機に、クロフォード厩舎へと加わった。
「ロイをベンノ師からアシスタントトレーナーとして迎えられたことに、とても感謝していますし、本当に幸運でした」とクロフォード師。
「ロイがチームと厩舎を作り上げてくれました。外国人としてここに来ると、物事がどう進むのか分からないし、誰が何をできるのかも全く分からない。ロイはシャティン競馬場と従化トレセンの両方をつなぐチームを作り上げ、素晴らしい仕事をしてくれました。すべての功績はロイのおかげです。彼をチームに迎えられたのは本当に幸運です」


クロフォード師にとって、南アフリカ・ケープタウンでの大規模厩舎から香港の小規模な厩舎へ移ることは、原点に立ち返る機会となった。香港の過酷な環境では、基本こそが重要だと彼は感じている。
「正直に言うと、私にとっては大きなプラスになっています」と彼は語る。
「南アフリカのように大きな厩舎を運営していると、もちろん管理はしますが、1頭1頭と深く向き合うことは難しくなります。今はそれができるようになり、大きな変化です。これができるのは何年ぶりかで、特に香港という環境では本当に素晴らしいことです」
「私がすることはすべて、健康で幸せな馬を作り出すことに直結しています。世界中どこであれ、馬は無事で、健康でなければなりません。もちろんそのバランスを取るのは容易ではありません」
「コンディションに不安がある馬は、望むほど鍛えられないこともありますから。それが鍵だと思いますし、香港では特に重要です。ここではレースが激しく、出走回数も多いので、南アフリカ以上にそのバランスが求められます」
香港競馬には独自のリズムとジンクスがある。好調なスタートは評判を大きく左右するが、クロフォード師は自身の好スタートを幸運によるものだと強調する。ここまで出走7頭で2勝、2着2回、3着1回という好成績を残している。
「皆に『最初が大事だから良いスタートを切れ』と言われました」
「でも、この世界では自分でタイミングを決めることはできません。馬が準備ができたときに教えてくれるんです。私は柔軟な気持ちでここに来て、馬が準備できたと感じた時にレースに送り出すことを常に目標にしてきました」
「今回、馬たちがシーズン序盤から結果を出してくれたのは、単に運が良かっただけです。新しい調教方法や環境に慣れるのに時間がかかる馬もいますが、彼らは変化をうまく乗り越えているようです。私はただ馬たちの声を聞いただけで、非常に恵まれていました」
「現在、新しい輸入認可を得てオーストラリアから数頭の良い馬を確保できています。新しい血が入るのは嬉しいことです。香港では常に “今” が重要な場所ですから、今回の結果で注目を集めることで、さらに支援を受けられればと思います。そしてチームがそこからさらに成長できると信じています」
クロフォード師にとっては、6月上旬にパートナーのグウェン・マクレガー氏とともにシャティンへ移住して以来、仕事面でも私生活でも大きな転換期となった。
「仕事のやり方がまるで違います。朝に調教に出す頭数は、南アフリカとはまったく異なります。そして、調教もバリアトライアルもすべてが一か所に集まっているのは素晴らしいですね。本当に楽しんでいます」
「前と比べたら、いくつか変えなければならないこともありました。南アフリカにはバリアトライアルがないので慣れるまで時間がかかりましたが、馬たちも順応しているようですし、このままうまくいくことを願っています」
「香港は本当に素晴らしい場所です。街のエネルギーは驚くほどです。グウェンも私もよく馴染めていますし、生活も楽しんでいます。そして、ついに長く背負っていた重圧から解放され、新たな一歩を踏み出せたと感じています。ここからさらに上を目指していきたいです」