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水曜日にハッピーバレーで予定されていた競馬開催が、大型台風『ラガサ』の影響で中止となったことは、デレク・リョン騎手に思わぬ幸運をもたらした。この中止により、日曜日のG1・スプリンターズステークス(1200m)を前に、ラッキースワイネスの最終追い切りに騎乗することができたのだ。

故郷の香港では台風が豪雨と暴風を伴い猛威を振るう中、リョン騎手は晴天に恵まれた日本で愛馬を調教を手伝っていた。先週日曜日のシャティン開催が天候不良の影響を受けたため、これを見越して急遽来日スケジュールを早めたからだった。

「レース前の最終追い切りでしたので、この機会に本当に感謝しています。台風がなければ、金曜日に来て軽めの調教に乗ることしかできなかったでしょう」とリョン騎手は語る。「まさに思わぬ幸運でした。馬場を実際に感じて、馬がどう対応するかを確認できましたから」

ラッキースワイネスは2024年、球節を痛めて手術を受け、1年以上の休養を余儀なくされた。復帰後は少しずつ調子を取り戻しており、7歳となった今シーズンは昨季終盤に2戦を消化。さらに今月初旬の香港開幕日では、“世界最高峰スプリンター” カーインライジングに次ぐ2着と好走した。

リョン騎手は、中山競馬場特有の起伏や急坂を物ともしない愛馬の動きに手ごたえを感じたが、それでも驚きはなかったという。キャリア初期に、さらにコーナーのきついハッピーバレー競馬場で結果を残していたことを知っていたからだ。

「競馬場自体は素晴らしいです。確かに直線は短いですが、最後のコーナーはハッピーバレー競馬場ほど急ではないので問題ないと思います。この馬は若い頃、ハッピーバレーで3勝を挙げましたし、良い走りをしていました。坂も問題ありませんでした。今日の追い切りもスムーズにこなしてくれました」

マンフレッド・マン調教師も現地で立ち会った。両者ともこれまで海外での入着経験はあるものの、勝利にはまだ手が届いていない。マン師は、リョン騎手に特別なことはせず、馬を快適に走らせることだけを指示した。

ラッキースワイネスが本来の力を発揮できれば勝機は十分にあると考えていたが、調教で無理をさせても、結果にはつながらないことを二人は理解している。

「マンフレッド(マン調教師)は『特別なことはせず、馬場の感触を確かめさせて、快適に走らせてやってくれ』とだけ言いました」とリョン騎手。「前走でどんな走りを見せたかは分かっています。あとは良い状態を維持するだけです。朝の調教ではやり過ぎず、気持ち良く走らせることを心がけています」

Jockey Derek Leung and trainer Manfred Man
DEREK LEUNG, MANFRED MAN / Nakayama Racecourse // 2025 /// Photo by Lo Chun Kit

マン師はまた、ラッキースワイネスの中山競馬場でのパドックスクーリングも手配している。

日本での騎乗が中京競馬場しかなかったリョン騎手は、追加の準備も重ねてきた。Idol Horseに対し、香港の英雄・サイレントウィットネスが優勝した2005年以降のスプリンターズSを全レースを繰り返し見て、コースを研究していたことを明かした。

「枠順が決まったら、オーナーや調教師と戦術を話し合います。ただ基本は同じです。良いスタートを切り、スムーズに運び、最後までしっかり伸びることです」

ただし、歴史はラッキースワイネスに味方していない。香港調教馬がスプリンターズSを制したのは、ウルトラファンタジーが2010年に中山で番狂わせを起こして以来、15年間勝利が途絶えている。さらに年齢的にも厳しい。過去30年間で7歳馬がこのタイトルを手にしたのは、2006年に勝利したオーストラリアのテイクオーバーターゲットだけだ。

もし、ラッキースワイネスが年齢と歴史の壁を打ち破ることができれば、リョン騎手が台風のおかげで合流できた思いがけない最終追い切りが勝利の鍵だったとして記憶されることだろう。

「当日はそうなることを願っています」とリョン騎手は話す。「ベストな状態なら、彼は勝つだけの実力を持っています。レース当日が待ち遠しいですね」

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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