デイヴィッド・モーガン
ヨーク競馬場のイボアフェスティバル開催は、一流レースの迫力、歴史ある舞台、優れた運営、そして知識豊富な観客が織りなす、世界屈指の競馬イベントだ。初日には、世界的に名声高いG1・インターナショナルステークスが行われ、さらにダービー馬ランボーンがG2・グレートヴォルティジュールステークスに臨む。
インターナショナルSは幾度も波乱を生んできた。今年は6頭立ての少数精鋭。その中にはゴドルフィンのペースメーカー、バーキャッスルもいる。
バーキャッスルは、同厩舎のG1・プリンスオブウェールズステークス覇者オンブズマンと、その鞍上ウィリアム・ビュイックを援護する役割だ。彼らはG1・エクリプスステークスで敗れた相手、ドラクロワとライアン・ムーアとの再戦に臨む。サンダウンでは序盤から3頭分外を回らされ脚を使ったビュイックに対し、ムーアの巧みな手綱さばきが勝敗を分けた。最後の急坂は、末脚を武器とするドラクロワに有利に働いた。
一方、ヨークは平坦で長い直線を備え、実力が問われる舞台だ。前々で運ぶ馬に分があるコースであり、果敢な先行馬がしばしば好走する。その点で日本のダノンデサイルは有力候補だ。
昨年のG1・東京優駿を制したダノンデサイルは、今年4月のG1・ドバイシーマクラシックも勝利。2400mの実績は折り紙付きだ。自在に立ち回れる脚質で、時にハナを切ることも可能。20年前にゼンノロブロイが成し得なかった頂点を、日本調教馬として狙う。ただし2000m戦は2024年1月以来となる。
フランスからは無敗の3歳馬ダリズが参戦。ここまで4戦4勝で毎走進化を遂げてきたが、更なる上積みが求められる。
また、シーザファイアの母アラビアンクイーンは10年前、このレースで逃げ粘り、ダービー馬ゴールデンホーンを50倍の大波乱で破った。シーザファイア自身も5月のヨークで大差勝ちしており、侮れない存在だ。
イチオシ推奨馬: R3・1番 ランボーン
ジャック・ダウリング
ダービー馬がグレートヴォルティジュールSに出走するのは珍しく、最後に勝ったのは1987年のリファレンスポイントまで遡る。しかしランボーンは秋に向けてセントレジャー、凱旋門賞、あるいは両方を見据え、この道を選んだ。
父オーストラリア産駒のランボーンは、エプソムでは逃げ切り勝ち。6月のG1・愛ダービーでは主導権を握れなかったが、それでも僚馬で香港移籍予定のシリアスコンテンダーを辛うじて振り切った。
今回、7頭立てで唯一、斤量を課される立場となるが、ライアン・ムーアを背に人気を集める見込みだ。

対する1頭は、パディ・トゥーミー厩舎のカルマーズ。デビューから3戦無敗で、ロイヤルアスコットのG2・クイーンズヴァーズを制した実力馬だ。このレースの勝ち馬はその後も活躍している。さらに、両ダービーでランボーンに敗れたプライドオブアラスも参戦。5月にはヨークのG2・ダンテステークス(2000m)を圧勝しており、巻き返しを狙う。
イチオシ推奨馬: R4・4番 シーザファイア
アンドリュー・ホーキンス
アイルランドのトニー・マーティン調教師は、大金が動くヨークのハンデ戦では特に怖い存在だ。
9年前にはイボアハンデキャップでハートブレイクシティを送り込み、直前に支持を集めてその期待に応えた。さらにその前年には、同馬でイボアフェスティバル初日の2マイル戦を楽勝している。
今年、マーティン師はその2マイル戦にチェザレウィッチハンデキャップの覇者、アルフォンスルグランデを送り込む。すでに出馬確定後から着実に支持を集めており、この流れが続けばWorld Poolの1番人気となりそうだ。
アルフォンスルグランデは、昨秋のチェザレウィッチハンデキャップで鞭の使い過ぎにより一度は失格となったが、後の再裁定で勝利を認められた経緯を持つ。ただし今季は不振続きで、ロイヤルアスコット以来の出走となる。
また、イアン・ウィリアムズ調教師もこのレースで実績を持つ。2017年には、後に重賞を制したマジックサークルで勝利した。今回はダンシングインパリを送り込み、前走グッドウッドではオーストラリア遠征予定のサムホーケンスの2着と好走している。
この2マイル戦は初日の裏カード4つのハンデ戦のひとつ。他の3レースはいずれも短距離戦だ。
イチオシ推奨馬: R2・4番 イタリー