Aa Aa Aa

エイダン・オブライエンはアイルランド競馬史上最も成功を収めた調教師であり、世界的に見ても歴代屈指の名伯楽の一人である。競馬界における最も著名な人物の一人であり、1990年代半ばに頭角を現した頃と変わらぬ、眼鏡をかけた若々しい風貌を今もなお保っている。

彼はアイルランドの名門バリードイル調教場を拠点とし、世界競馬の伝説的な調教師ヴィンセント・オブライエン(血縁関係はない)の後を継いだ。彼の成功は、ジョン・マグナー率いる大馬産地クールモアの繁殖事業と深く結びついている。

1999年以降アイルランドのリーディングトレーナーの座を守り続けており、イギリスでも6度のリーディングトレーナーに輝いている。また、エプソムダービーでは歴代最多の10勝を挙げるなど、圧倒的な実績を誇る。

Horse trainer Aidan O'Brien and jockey Ryan Moore

エイダン・オブライエンの父デニス・オブライエンは、アイルランド・ウェックスフォード県の農家でありながら、数頭の競走馬を調教していた。オブライエン自身も障害競走のアマチュア騎手として騎乗し、P・J・フリン調教師のもとで働いた後、ジム・ボルジャー厩舎に移り、そこで才能を発揮した。

オブライエンはアン=マリー・クロウリーと結婚し、1993年6月に彼女の家族が所有するピルタウン・ステーブルズの調教師免許を引き継いだ。アン=マリーは1992-93年シーズンのアイルランド障害競走リーディングトレーナーであり、その才能を受け継ぐ形となった。

オブライエンは24歳で初めてアイルランドの障害競走リーディングトレーナーの座に就くと、その後5シーズン連続(1993-94~1997-98)でタイトルを獲得。その間の1996年にはバリードイルに移り、クールモアの一員として本格的に平地競走の調教師としてのキャリアを築き始めた。

その1996年、デザートキングがナショナルステークスを制したのがオブライエンにとって初のG1タイトルとなった(同馬は翌年の愛2000ギニーと愛ダービーも勝利)。1997年にはクラシックパークが愛1000ギニーを制し、クラシック初勝利を達成。2023年の愛ダービーをオーギュストロダンが制し、オブライエンは通算100勝目の欧州クラシックタイトルを獲得した。

Horse trainer Aidan O'Brien and jockey Mick Kinane

オブライエンは、世界屈指の良血馬が揃うバリードイル調教場を預かるという恵まれた立場にあるが、それも彼が卓越した調教師であるからこそ実現している。細部へのこだわりは並外れており、管理馬一頭一頭の性格や特性を把握し、それぞれに適した調教を施すことで知られる。

調教のスタイルに決まったパターンはなく、早熟な2歳スプリンターの育成から、じっくりと成長を待つ長距離馬の育成まで、あらゆるタイプの競走馬を自在に仕上げる。厩舎スタッフを重視し、チームとしての結束力を大切にするのもオブライエンの特徴である。

Horse trainer Aidan O'Brien and jockey Jamie Spencer

イギリスやアイルランドでは、障害競走の名馬イスタブラクをオブライエンの最高傑作に挙げる声も多い。チェルトナム・チャンピオンハードルを3連覇し、G1・13勝を挙げた障害競走界の象徴的存在だった。しかし、国際的な視点で見た場合、やはりガリレオこそが筆頭に挙げられるだろう。

ガリレオはサドラーズウェルズ産駒としてオブライエンに管理され、デビューから6連勝。ダービー、アイリッシュダービー、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSを圧勝し、ゴドルフィンのファンタスティックライトと激闘を繰り広げたアイリッシュチャンピオンSでは、フランキー・デットーリの巧みな騎乗に屈して2着となった。ラストランとなったブリーダーズカップ・クラシック(ダート)6着は度外視できる内容だった。

ガリレオは競走馬としても超一流だったが、『アイアンホース』の異名を持つジャイアンツコーズウェイや、ハイシャパラル、ディラントーマスらオブライエンの歴代名馬と比べて突出していたかと言えば意見が分かれるかもしれない。

しかし、種牡馬としての圧倒的な成功が彼を唯一無二の存在へと押し上げた。ガリレオは20年近くにわたりクールモアとオブライエンにG1勝ち馬を次々と送り出し、現代競馬の血統を決定づけた大種牡馬として、その名を永遠に刻んでいる。

Aidan O'Brien's Epsom Derby winner Galileo

オブライエンの偉業は数多い。ブリーダーズカップでの通算20勝(2024年現在・最多タイ記録)なども歴史に名を刻むものだが、中でも2017年に達成した年間G1・28勝は特筆すべき快挙である。この記録は、かつてカリフォルニアの名伯楽ボビー・フランケルが持っていた年間G1・25勝を上回るもので、しかも14頭の異なる馬によって成し遂げられた。

オブライエンと息子のジョセフは、エプソムダービーで史上初の『親子制覇』を達成した。2012年、ジョセフが騎乗したキャメロットで初の父子制覇を成し遂げると、2014年にはさらに、コックスプレートでも親子タッグで優勝し、オーストラリアでも同じ偉業を繰り返した。

海外競馬のスタートレーナーについて

すべて表示

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録