南アフリカ最大のレース、G1・ダーバンジュライ(2200m)。このレースでザリアルプリンスを勝利に導いたディーン・カンネマイヤー調教師は、その慧眼を改めて証明することとなった。同馬にとってマイル戦よりも長い距離は初挑戦、この偉業を成し遂げた馬は130年の歴史上で2頭目だった。
クレイグ・ザッキー騎手が騎乗したザリアルプリンスは、勝利にあと一歩まで迫った3歳馬のエイトオンエイティーンを見事に退け、アフリカを代表するレースを制覇。勝ち馬から約3馬身差の3着には、軽ハンデのセルクウェが食い込んだ。
そもそも、本来のザリアルプリンスは中距離やマイルどころか、1400m以下の距離が主戦場。今年2月にケニルワース競馬場のリステッド、ジェットマスターステークス(1600m)を制したときが、たった一度のマイル挑戦だった。
父のギミーザグリーンライトはオーストラリア産種牡馬。全兄弟は短距離G1を3度制している快速馬、ギミーアプリンスという血統。距離延長への疑問は戦前からの大きな懸念点だった。
「ここへ辿り着くまでが本当にチームの総力戦だった」とIdol Horseに語るのは、調教師のカンネマイヤー師。
「初めてマイルに挑戦したときは5馬身差の圧勝でした。良い枠も引けて、ゴールドチャレンジで好走してハンデを上げられたりすることもなく、『伏兵』として潜り込めました。ダーバンジュライはどんな時もタイミングとチャンスが全てなのですが、今回はまさにそれがハマりました」
マイルを超える距離未経験でダーバンジュライを制した馬は、今回で史上2頭目。初代は1972年に勝ったデヴィッド・ペイン厩舎のインフルフライトで、ペイン師は1968年にも騎手としてこのレースを制している。
ザリアルプリンスの勝利はカンネマイヤー調教師にとって同レース4勝目、クリスティーン・レイドロー夫人が率いる馬主のカヤステーブルは2勝目、そしてザッキー騎手にとっては初のダーバンジュライ制覇となった。
2着のエイトオンエイティーンは57kgを背負っての挑戦だったが、この斤量で勝った3歳馬は過去にいない。わずかな鼻差で記録達成を逃したものの、ジャスティン・スネイス調教師は前を向いて同馬の海外遠征を視野に入れている。
「まだ若い馬ですが、実績はすでに充分です」とスネイス師。「慎重に調整して(ケープタウンで)夏を迎え、その後は海外遠征を検討します。いくつかの国なら走れるタイプだと思います。ドバイはその最有力でしょう。ただ、実際に行くのは2027年シーズンかもしれません」
「彼を誇りに思うのは変わりませんし、この馬はファイターです。ゴール前でも力強く戦い、闘志に満ちあふれた走りを見せてくれました」