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3月に記念すべき第一回開催が行われた、ニュージーランド史上最高賞金レースの『ザ・キウイ』。このレースに出走した3歳馬たちが今、オーストラリアと香港で次なるチャレンジを迎えようとしている。

中でも注目を集めるのが、素質馬と呼び声が高いパブリックアテンションの香港移籍だ。

G3・エスキモープリンスS(1200m)を制し、G2・アローフィールド3歳スプリント(1200m)とG3・コーフィールドギニープレリュード(1400m)でも好走歴を持つ芦毛の素質馬は、香港のデヴィッド・ヘイズ厩舎への転厩を予定している。

父にリトゥンタイクーン、祖母にNZの名牝・ケイティリーを持つ良血馬のパブリックアテンションは、ザ・キウイでは残念ながら8着に敗れたが、これまでの8戦で5着以下に終わった一戦はこのレースのみ。抜群の安定感を誇る一頭だ。

「この移籍は香港にとって素晴らしい補強になるでしょう。この馬はとても扱いやすく、性格も穏やかで従順です。これまで手掛けた牡馬の中でも抜群に素直で、乗り手の指示をしっかり聞こうとするんです。普段は落ち着いていて、でもギアを入れれば一気に加速できます」

共同調教師のマイケル・ケント・ジュニアはIdol Horseの取材に対し、同馬をこのように評した。

「まだ成長の途中でしたが、それでも初めての本格的な遠征でコーフィールドギニーに出走しました。ザ・キウイでは外枠からの競馬で流れが向かず、本来の力を発揮できませんでしたが、アローフィールド3歳スプリントでは流れが厳しい中でも善戦しました」

「スプリントからマイルまでこなせると思いますし、何より頑丈で気性も優れ、能力もある。スピードと馬格を兼ね備え、将来が本当に楽しみな一頭です。しかも、目立つ芦毛馬ですから、香港のファンにもすぐに覚えられることでしょう」

クールモア・オーストラリアの3歳勢は、G1馬のスイッツァランドを始め、プライベートライフ、そして高額取引で注目されたストームボーイらが来季からの種牡馬入りを発表しているが、パブリックアテンションも売却という形で去ることになった。

一方、ザ・キウイで1着を勝ち取った3歳牝馬、ダマスクローズは、テアカウレーシングの豪州拠点に合流。この勝利で出走権を獲得していた総賞金1,000万豪ドル(約9.5億円)の4歳馬限定のビッグレース、G1・ゴールデンイーグル(1500m)を最大目標に据える。

このゴールデンイーグルには、5月にG1・NHKマイルカップを制した日本のパンジャタワーが遠征を表明している。

6月中旬にマーク・ウォーカー調教師のクランボーン厩舎に到着したダマスクローズは、まずはメルボルンでG1に挑戦し、大一番に向けシドニーへと舞台を移す予定となっている。

「ニュージーランドでしっかりリフレッシュさせてから、約3週間前にメルボルン入りしました。8月30日のG3・コックラムステークス(コーフィールド)で始動し、そこからG1・サールパートクラークステークス、トゥーラックハンデキャップを経て、ゴールデンイーグルを目指します」

「これまでゴールデンイーグルに馬を出走させたことはありませんでしたが、ついに挑戦できることになり、とても楽しみにしています」

と、テアカウレーシング代表のデヴィッド・エリス氏はIdol Horseに語った。

このダマスクローズを筆頭に、ザ・キウイ出走組の中からは4頭のニュージーランド調教馬が豪州移籍を果たしている。

G1馬を数多く輩出していたワイカトスタッド所有のセン馬、ソートアフターは、ランス・オサリバン & アンドリュー・スコット厩舎で4着と好走したのち、ピーター・ムーディー & キャサリン・コールマン厩舎へと転厩。

こちらもゴールデンイーグルを目標に据えつつ、夏のニュージーランドでの復帰も視野に入れる。

また、当時9着だった5戦4勝の上がり馬、ペンマンは、クリス・ウォーラー厩舎に新たに加わったゴーレーシンググループの一員に。そして南島のスター牝馬、ピヴォタルテン(13着)は、ヘイズ三兄弟が率いるユーロアの厩舎で再始動している。

一方、このザ・キウイには、NZに縁がある3頭のオーストラリア調教馬も参戦。2着馬のエヴァポレイト(ヘイズ厩舎)は、その後ランドウィックでG3・カービンクラブステークス(1600m)を制し、現在はゴールデンイーグルに向けて再調整中だ。

ビョルン・ベイカー厩舎の5着馬、パフューミストは、バサースト競馬場やマッジー競馬場といったカントリー開催をステップにザ・キウイ出走まで駆け上がった異色の存在。今春のステークス勝ちを条件に、こちらもゴールデンイーグル挑戦を見据えている。

また、ニュージーランド国内に留まっているザ・キウイ組も見逃せない。

3着のチェックメイト、6着のセシト、10着のハンキーアルファはいずれもランス・オサリバン & アンドリュー・スコット厩舎の管理馬だ。スコット調教師は各馬について、このように語る。

「チェックメイトはローズヒルギニー後にしっかり休ませて、いまは順調に乗り込んでいます。9月第1週のG1・タージノトロフィー(1400m)を目標にしており、そこでの内容次第で今後のローテを判断する予定です。体つきも良くなってきました」

「セシトには長めの休養を与えました。3歳時に使い詰めでしたし、4歳馬との再戦に備えて、焦らず戻すつもりです。ワイカトスタッドでの放牧でとてもいい成長を見せています」

「ハンキーアルファは8月1日に帰厩予定。短距離路線に集中させます。瞬発力は優れているのですが、1400〜1500mは少し長かったようです。今後はスプリント戦に専念します」

ザ・キウイは、ニュージーランド産馬または同国セール出身の3歳馬に限定された、NZ国内初の出走枠購入型レース。初年度の総賞金は350万NZドル(約3億円)、2026年には400万NZドル(約3.5億円)への増額も予定されている。

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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ジャック・ダウリング、Idol Horseの競馬ジャーナリスト。2012年、グッドウッド競馬場で行われたサセックスステークスでフランケルが圧勝する姿を見て以来、競馬に情熱を注いできた。イギリス、アメリカ、フランスの競馬を取材した後、2023年に香港へ移る。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、レーシング・ポスト、PA Mediaなどでの執筆経験がある。

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