シティオブトロイは出走馬の中で最後に鞍を着け、13頭の中で一番遅れてインターナショナルステークスのパドックに姿を現した。
しかし、ゲートが開くと先手を奪い、ヨーク競馬場の1マイル2ハロン56ヤード(2050m)を過去最速タイムのレコードで駆け抜けた。歴史的な名馬の領域にまた一歩近づいたこの馬に、競馬界の注目が集まっている。
パドックに足を踏み入れる前、エイダン・オブライエン調教師は自らの手で装鞍を行い、まるで息子を学校に送り出す父親のような様子でたてがみを丁寧に整えていた。
レースが始まると、シティオブトロイはいきなりライバルたちを出し抜く。鞍上のライアン・ムーア騎手はこのジャスティファイ産駒を先頭に立たせ、逃げの戦略に打って出た。昨年の10月、G1・デューハーストステークスでの勝利以来となる戦法だ。
レース後のコメントで、ムーアは以下のように振り返った。
「スタートが良かったので、下げたくなかったです。全体を通して素晴らしい走りをしてくれました。ラスト2ハロン(残り400m)でゴーサインを出しただけです。ちょっと気を緩めるような場面はありましたが、最後までよく頑張ってくれました。素晴らしい才能のある馬です。本当に凄いエンジンを持っています」
2着のカランダガンはゲート入りを拒み、レース前に一悶着あったが、それが敗因ではないだろう。チャンスは充分にあったが、ラスト2ハロンで驚異的な粘り込みを見せたシティオブトロイに軍配が上がった。同じく3歳馬、ゴーストライターは着差こそ開いたものの、3着に食い込んだ。
日本からの遠征馬、ドゥレッツァはこれが初めての海外遠征だったが、シティオブトロイの前に為す術なく、ムーアの奇策にも対応できなかった。出足が鈍く先手を奪えず、コーナーでは外を回らされ、最後の直線では勝負所で突き放された。尾関知人調教師にとってはグローリーヴェイズでの実績がある、12月のシャティン競馬場のようなコースの方が向いているのかもしれない。
「スタートは少し遅れたが、徐々に位置取りを取り戻してくれた。直線での動きも良かったが、ラスト300mくらいからペースダウンしてしまった。直線での加速が鈍かった。良い状態だったが、このレースを勝つには120%の力が必要です」
ドゥレッツァのレースについて、鞍上のクリストフ・ルメール騎手はこう振り返った。
オブライエン調教師は以前からシティオブトロイを非常に高く評価しており、5月のG1・英2000ギニーで大敗する前には「かつてない馬だ」と評するなど、絶賛のコメントを残していた。

英ダービーでの復活劇、エクリプスステークスでの名誉挽回を経て、大敗の懸念は払拭されたかに思われたが、その一方で後者のパフォーマンスは期待外れだと酷評する声も上がっていた。今回、シティオブトロイはヨークシャーの観客から拍手喝采で迎え入れられ、オブライエン調教師も新チャンピオンとチームの功績に納得の様子だった。
「彼が特別な存在だと、何度も言ってきました…今まで見たことがない馬です」
「英2000ギニーでは完全に道を踏み外し、どん底に落ちました。だからこそ止まって、やり直して、再調整しました。すべてを再調整する必要があったんです」
また、今回の逃げ戦法について尋ねられると、オブライエン調教師は「彼にとって前に出て、ハードで、ペースの速い競馬をするのは自然なことだと思います」と答えた。
シティオブトロイが達成した英ダービー、エクリプスステークス、インターナショナルステークスの3連勝は、2009年のシーザスターズ以来となる。そして、勝ちタイムの2:04.32は、そのシーザスターズが叩きだしたコースレコードを1秒近く上回る大記録となった。
確かに、当日の馬場状態はいつもより速かったが、この勝利について議論の余地はないだろう。オブライエン調教師は以前、シティオブトロイはダートでもスターになれることを期待していると話しており、今後の目標としてデルマーのG1・BCクラシックが視野に入る可能性がある。
今回の競馬は、その期待を裏切るようなものではなかっただろう。次なる舞台は世界だ。