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ガイアフォースは白髪のおじさんなのか、それともやんちゃな坊やなのか?

実は、杉山晴紀調教師自身も確信を持っているわけではない。しかし、この6歳を迎えた芦毛馬が魅せる子供のような振る舞いには、すっかり魅了されているという。

「年も結構取ってきた割にお子ちゃまというか、幼い仕草はいまだにあるが、それが可愛さにつながっていると思います」と、Idol Horseの取材に応じた杉山調教師は語った。

日本では、競走馬は有名人だ。ディープインパクト、イクイノックス、アーモンドアイのような伝説級の名馬が尊敬を集める一方、ファンから根強い人気を誇る個性派も存在する。

たとえば、ソダシもその一頭。競走成績もスター級ある上、世にも珍しい白毛という毛色が人々の注目を集めた。そして、ゴールドシップも忘れてはいけない。チャンピオン級の才能を併せ持つ反面、何をしでかすか分からない、「暴れん坊」として愛された名馬だ。

ガイアフォースの場合、ゴールドシップほどの武勇伝はないかもしれないが、日本の競馬ファンの間で根強い人気を誇る一頭だ。もっぱら、ファンの間では「ロックスター」というキャラ付けで親しまれている。

その個性的な性格がキャラクターを決定づけた理由でもある。インフルエンサー顔負けの多彩な表情やポーズを見せてくれるため、『写真映え』するパドックではいつも注目を集めている。2022年には、元騎手の田原成貴氏がロック歌手・内田裕也氏のコスプレをしてガイアフォースを紹介するという、ユニークな企画も話題を呼んだ(そのため、一部ファンの間でのあだ名は『シェケナ』だ)。

Gaia Force ahead of the 2025 G1 Champions Mile
HARUKI SUGIYAMA (L), GAIA FORCE / Sha Tin Trackwork // 2025 /// Photo by Shuhei Uwabo

今週、G1チャンピオンズマイル(1600m)を前にしたシャティンでの調教でも、ガイアフォースは芝の上を闊歩し、首を左右に揺らして大胆不敵かつ自信満々の様子を見せつけた。まさに馬の姿をしたロックスターである。

「やんちゃで、生意気なところがありました。最初は騎手を振り落としたことも何回かありました。その後、新馬戦の後に怪我をして、リハビリから帰ってきた後は大人しくなっていましたが、それでも残っている部分はあります」

今回が8回目のG1レース挑戦となるガイアフォースは、今回ついに世界デビューとなる。チャンピオンズマイルの海外ツアー公演では、香港、オーストラリア、バーレーンの強豪たちと対戦することになる。

昨年のG1・安田記念では2年連続の4着に終わったが、今振り返ればその価値は高いと言える。勝ち馬のロマンチックウォリアーからは1馬身半差、ソウルラッシュからも1馬身差と、格上相手にも差のない競馬だったからだ。

イクイノックス、ドウデュース、ローシャムパーク、ソングライン、ウシュバテソーロといった日本が誇る精鋭たちとも互角に渡り合ってきた実績があり、昨年の安田記念ではヴォイッジバブルに7馬身の着差を付けている。

「年齢も年齢で、海外遠征をする機会も今後減っていく中で、オーナーと相談して『行けるときに一度海外を経験させたい』という流れで決まりました」と、調教師の杉山は海外遠征の経緯を明かす。

ガイアフォースの強みは、その万能さにある。3歳時には2200mのG2セントライト記念を制したが、今ではマイル戦でより高いパフォーマンスを見せている。昨年のダートG1・フェブラリーSではペプチドナイルの2着に入り、これがG1での最高成績となっている。

「ダートも走っているし、香港のような洋芝が決して合わないことはないんじゃないかと思います」と調教師は自信を見せる。

木曜日の枠順抽選では、ガイアフォースは13頭立ての大外枠に入るという試練が課されたが、杉山調教師は鞍上の川田将雅騎手にとってむしろプラスに働く可能性があると考えている。

「この馬の勝ちパターンはいつも外差し。なので、変に内枠に入ると、綺麗な走り・ストライドをしているだけにもまれてブレーキ掛けるシーンがある可能性がある。そうなると、あまりいい結果が出ていないので、外の方が良いですね。11、12番のような中途半端な外枠よりは大外枠のほうが競馬はしやすいと思います」

Haruki Sugiyama
HARUKI SUGIYAMA / Sha Tin Trackwork // 2025 /// Photo by Shuhei Okada

『チーム杉山厩舎』の遠征馬はガイアフォースだけではない。G1・チェアマンズスプリントプライズ(1200メートル)にはドゥラメンテ産駒のルガルを出走させる。ルガルは昨年12月、カーインライジングの11着に敗れたが、杉山調教師は再挑戦の価値があるとみている。

「海外遠征も2回目で非常に落ち着いています。前回とは多分違う良い状態でレースに向かえると思います」

ガイアフォースの相棒として、ルガルの存在は不可欠だ。ロックスターの側にはそれを支える人物が欠かせない。ビートルズにとってのブライアン・エプスタイン、エルヴィス・プレスリーにとってのトム・パーカー、そしてガイアフォースにとってのルガルだ。

「ガイアフォースは初めての海外遠征で、体重も減って、精神的にもナイーヴなところを見せていました。しかし幸い、今回は帯同のような形でルガルがずっと一緒に居る分、ガイアフォースにとってはルガルの存在が大きいんじゃないかと思います」

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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