クレイグ・ウィリアムズ騎手の完璧な騎乗に導かれ、カップフェラが僅差で香港ダービー(2000m)を制し、1978年のトップゲイン以来、実に46年ぶりに未勝利馬としてこの大一番を制した。
フランシス・ルイ厩舎の管理馬であるカップフェラは、オーストラリアでトムキトゥン、リフロケット、チェオウルフといった一線級を相手に2000mのG1で2着に好走した実績を持つ。香港クラシックマイルと香港クラシックカップ(1800m)では振るわなかったが、この日シャティンで再びその実力を証明し鼻差で勝利した。
この勝利で、1978年にトップゲインがハッピーバレーで勝利して以来、カップフェラは実に47年ぶりとなる『未勝利馬』による香港ダービー制覇を成し遂げた。
ウィリアムズ騎手はレース後「こんな大レースで初勝利を挙げるなんて、たいした馬ですよ」と感嘆。
「私が初めて香港で騎乗したときから、ずっと勝ちたいと思っていたレースがこの香港ダービーでした。数週間前にシドニーのイヤリングセールにいたフランシスから電話がかかってきて『オーストラリアで乗ったことがあるカップフェラに乗らないか』と誘われたんです」
「この馬はいい馬だと思っていましたし、2000mでの実績もありましたので、今回喜んで乗ることにしました」
「クラシックカップの後、フランシスに『この馬をいい状態に立て直せれば走るはずだ』と伝えたんです。それをしっかり実現してくれたのが、彼が名調教師たる所以です。万全の仕上げをしてくれたおかげて、私は勝つべき場所に導かれただけでした」
レースはヒュー・ボウマン騎手のローライダーが淡々としたペースで引っ張る中、カップフェラはその直後の絶好位を追走。直線入り口でローライダーが内ラチから離れると、ウィリアムズ騎手は迷わず内を突いた。
そのすぐ外からは僚馬パッキングエンジェルが猛然と迫る。そして大外から強襲してきたのが、マーク・ニューナム厩舎のクラシックマイル覇者マイウィッシュだった。14番ゲートからルーク・フェラリス騎手が最後方に下げての末脚一閃。ゴールではカップフェラに馬体を並べ、際どい勝負となった。
決着タイムは2分00秒67。だが、勝ち馬の確定にはさらに時間がかかることに。写真判定の末、カップフェラに軍配が上がり、2025年香港ダービーの栄冠を手にした。
フランシス・ルイ調教師にとっては、2020年のゴールデンシックスティ以来2度目のダービー制覇。当時はコロナ禍の無観客開催であったが、今回は満員のシャティン競馬場での堂々たる戴冠となった。
「本当に興奮しています。このレースに勝つことはオーナーの夢でしたから」と語ったのは、勝利を見届けたフランシス・ルイ調教師は話す。
「自信があったわけではありませんが、彼が非常に優れた馬であることは分かっていました。前の2戦は枠に泣かされましたから、今回巻き返しても不思議ではありませんでした。テレビでレースを観ていて、リプレイを何度か見直した後に『勝った』と確信しました」
「クレイグ(ウィリアムズ騎手)はオーストラリア時代にもこの馬に乗っていて、前走でも多くを学んでくれたと思います。すべてがうまく噛み合いましたね」
ウィリアムズ騎手はこれまで20年以上にわたり香港ダービーに挑戦してきた。2004年には後の香港マイル馬、ザデュークで9着、2012年には後に海外G1馬となるミリタリーアタックで6着に入ったが、最も勝利に近づいたのは、2001年のモメンタムでの2着だった。
「長年ずっとこのレースを勝ちたいと思って挑戦してきましたが、なかなか噛み合わなかったんです。でも、ここ香港では本当に特別なレースですし、ようやく勝てて本当に感慨深いです」とウィリアムズは語った。

ルイ調教師、ウィリアムズ騎手、そして馬主のカレン・ロー氏にとっては歓喜の瞬間だったが、その一方で、ニューナム調教師、フェラリス騎手、そして小柄な馬体で健闘したマイウィッシュの馬主陣にとっては悔しさの残る一戦となった。
「とても勇敢な走りでした。彼を表す言葉はまさにそれでしょう」とマーク・ニューナム調教師。
「この4歳クラシックシリーズを通して、最も安定して力を発揮してきた馬だったと思います。木曜日に14番枠を引いた時点で『運命は決まっていたかもしれない』と思ったのですが、それでもここまで迫ってくれました。悔しいのは確かですが、同時に大きな希望も感じています。間違いなく素晴らしい馬ですから」
香港ダービーは、来月のG1・クイーンエリザベス2世カップ(2000m)へのステップとして知られるが、カップフェラはまだ同レースに登録されていない。出走となれば、ゴリアットやリバティアイランドといった強豪との顔合わせが控えている。
なお、馬主のカレン・ロー氏は、すでにリッキー・イウ厩舎のストレートアロンで同レースへの登録を済ませている。