ダミアン・レーン騎手は、今後数週間にわたりオーストラリアのG1レースで多くの有力馬に騎乗する予定だ。シドニーの秋のG1シリーズを足掛かりに、再び日本で充実した数カ月を過ごすことを目指している。
東京行きのフライトに乗る前に、メルボルンを拠点とするレーンは、G1・ニューマーケットハンデキャップを制したジョリースターと共にG1・TJスミスステークス(4月5日・ランドウィック・芝1200m)に挑む。
さらに、連勝記録を伸ばしているトレジャーザモーメントはG1・ヴァイナリースタッドステークス(3月29日・ローズヒルガーデン・芝2000m)に出走予定。そして、日本調教馬のジオグリフにはG1・ドンカスターマイル(4月5日・ランドウィック・芝1600m)でコンビを組む。
レーンは、日本調教馬が海外で活躍する際に多くの成功を収めてきた。これまでにG1・コーフィールドカップ(メールドグラース)やG1・コックスプレート(リスグラシュー)など、ノーザンファーム関連のキャロットファームの所有馬でG1勝利を挙げている。ジオグリフもまた、ノーザンファームと関係の深いサンデーレーシングの黒・赤・黄の勝負服をまとっている。
2022年のG1・皐月賞馬であるジオグリフは、ドンカスターマイルでは55kgを背負う。中山競馬場でクラシック制覇を果たしてから3年が経ち、現在は14連敗中の苦境にある。
「シドニーのハンデ戦でまともな馬に乗るのは難しいです。自分の最低騎乗斤量は53kgなので、出走馬の4分の3には乗れないからです」とレーンはIdol Horseに明かす。
「ジオグリフには明らかに素質があるけれど、最近は成績が安定していない。でも、彼がデビュー当初の輝きを取り戻してくれることを期待しています」
「彼はクラシックを勝っているのに、それ以降勝てていない。でも、能力があるのは間違いないし、あとはうまく噛み合うことを願うばかりです。海外遠征の経験もあるから、もしかすると、遠征競馬のほうが合うのかもしれないですね」
「今回この馬に乗ることを決めた理由の一つは、比較的負担重量が軽かったから。ドンカスターマイルで良い馬に乗るのは本当に難しいです」
美浦の木村哲也厩舎に所属するこの6歳馬は、これまで1600mから2400mまでの幅広い距離、さらにダート戦を含め、日本国外の4カ国でのレース経験がある。昨年11月のG1・ブリーダーズカップマイルでは5着と健闘した。
「彼にとってベストな戦法は、ハイペースのレースで後方待機から脚を溜める形だと思う」とレーンは続けた。「この時期のシドニーの天候は読めないし、馬場状態もどうなるかわからない。乾いていても湿っていても対応できる準備は必要ですね」

今シーズン、レーンは3歳牝馬のトレジャーザモーメントとのコンビで好成績を収めている。彼女はG1・ヴァイナリースタッドSに出走予定で、7連勝を目指す。
「彼女は素晴らしい馬です。本当にワクワクしている」とレーンは語った。「メルボルンでは牝馬相手に圧勝を続けているけれど、来週のヴァイナリーではシドニーの強豪牝馬たちと対戦することになる。彼女にとっては新たな試練だけど、今までのレースを見る限り、状態は最高だと思う」
「彼女はとても万能型のタイプです。ゲートも上手だし、前に行っても後ろからでも競馬ができる。本当に順応性の高い馬だから、シドニーでどこまで通用するのか楽しみにしています。もしこのまま良い状態をキープできれば、オークスにも向かうことになるでしょうね」
今シーズン、レーンはG1・ニューマーケットHでクリス・ウォーラー厩舎のジョリースターに騎乗し、見事な勝利を挙げた。その結果、彼女とはG1・TJスミスSでもコンビを組むことが決まった。
「TJスミスでの騎乗を予定しています。ニューマーケットの勝ち方を見る限り、彼女には大きなチャンスがあると思います」とレーンは自信を見せる。「カンタベリーステークスの結果を考えれば、特に警戒すべき相手はいない。だからこそ、とても楽しみにしているんですよ」
ジョリースターの今後のローテーションについては、TJスミスS後の予定は未定だが、10月に行われる賞金総額2000万豪ドルのビッグレース『ジ・エベレスト』を目標とする可能性が高いとされている。
レーンは「オーナーのブレンダン&ジョー・リンジー夫妻は、彼女の主戦騎手を決めて継続的に乗せたいと考えているそうです。私としてもぜひその役割を担いたいと思っています。彼女はどんなレースに出ても活躍できる馬でしょうから」と語った。
「彼女は高額賞金のレースに出ることになるだろうけれど、クリス(ウォーラー調教師)とオーナーがどんな話し合いをしているのか、私には分かりません。TJスミスの後のことはまだ決まっていないけど、もしチャンスがあるなら手を挙げたいですね」
また、レーンは4月下旬から日本での短期騎手免許を取得し、JRAで2カ月間騎乗する予定だ。彼が最後に日本で短期騎乗を行ったのは2023年6月初旬、それ以降は週末ごとの短期遠征を3回行ったのみだった。
「今はとても楽しみにしています。ここ数年、ある程度まとまった期間を日本で過ごすことができていなかったのでね。昨年はたった2、3回の短期間の訪問だったし、今回はじっくりと腰を据えて乗れるのが楽しみです」
今回の日本滞在中、昨年誕生した息子のチャーリーくんは生後6カ月を迎える。
「彼にとっては初めての日本滞在になるんですよ。(息子との)日本での生活がどんなものか、実際に過ごしてみて今後の可能性を探りたいですね」とレーン騎手は語った。