2025 ヴィクトリアマイル: G1プレビュー
競馬場: 東京競馬場
距離: 1600m
総賞金: 2億8310万0000円 (197万3159米ドル)
G1・ヴィクトリアマイル(1600m)は日本で唯一、古馬牝馬に限定されたG1競走だ。秋にはG1・エリザベス女王杯(2200m)も行われるが、こちらは3歳牝馬も出走可能となっている。
このレースが創設されたのは2006年。それ以来、ウオッカ、ブエナビスタ、アパパネ、ヴィルシーナ、アーモンドアイといった中距離の名牝、ノームコア、グランアレグリア、ソダシ、ソングラインといった名マイラー、そしてストレイトガールのようなスプリンターまでもが名を連ねてきた。
なお、レース名の『ヴィクトリア』は、ローマ神話に登場する『勝利の女神』に由来している。2025年で第20回を迎える伝統の一戦だ。
注目馬その1: アスコリピチェーノ
アスコリピチェーノは今年、このレースが日本国内での初戦となるが、すでにサウジアラビアで勝利を挙げている。リヤドで行われたG2・1351ターフスプリント(芝1351m)では、1400m巧者のウインマーベルを退けて優勝した。
これまでの戦績は非常に優秀で、唯一の大敗は昨年秋に経験したオーストラリア・シドニーの高額賞金レース、ゴールデンイーグル(芝1500m)の一戦のみ。東京芝1600mでは、昨年のG1・NHKマイルカップでジャンタルマンタルの2着に好走している。
キャリアを通じてほぼ全てのレースで1番人気に推された実力馬であり、今回も『最有力候補』として出走するのは確実だ。鞍上は前走に引き続きクリストフ・ルメール騎手だ。同レース自身4勝目を狙って手綱を取る。
注目馬その2: ボンドガール
ハリウッドの世界では『ボンドガール』は決して『介添え』ではないが、このボンドガールに限ってはその限りではない。2023年6月、東京芝1600mの新馬戦で、後にG1を2勝するチェルヴィニアを破って鮮烈なデビュー勝ちを果たして以降、8戦連続で勝利から遠ざかっている。
その間には、重賞での2着が5回、3着が1回と、安定して上位には食い込んでいる。中でもG1・秋華賞(芝2000m)では、再びチェルヴィニアの後塵を拝する形で2着に入った。
東京芝1600mは新馬戦の後3度走っており、G3・サウジアラビアロイヤルカップとG3・東京新聞杯で2着。そして、昨年のG1・NHKマイルカップでは自身最悪となる17着に沈んだ。
注目馬その3: ステレンボッシュ
ステレンボッシュは、本来であれば来週シャティン競馬場で行われるG1・チャンピオンズ&チャターカップ(芝2400m)に出走を予定していた。しかし、陣営はG1・大阪杯(芝2000m)での13着という惨敗を受けて、距離延長ではなく、あえて短縮してヴィクトリアマイルに挑む決断を下した。
ステレンボッシュはもともとマイル適性の高さを示しており、2023年末のG1・阪神ジュベナイルフィリーズ(芝1600m)では、アスコリピチェーノにハナ差で敗れ2着。翌年4月の同コース、G1・桜花賞ではその雪辱を果たして優勝している。
以降は勝ち星こそないものの、G1・優駿牝馬(芝2400m)、秋華賞、G1・香港ヴァーズ(芝2400m)でいずれも好走し、安定した成績を残している。久々のマイル戦で、どんな走りを見せるか注目される。

注目馬その4・5: アルジーヌ/クイーンズウォーク
中内田充正調教師にとっては、先月香港で予後不良となったリバティアイランドの喪失感が今なお癒えない。しかし、そんな中でも、厩舎の空白を埋める可能性を秘めた2頭の牝馬がここにいる。
5歳のアルジーヌは今回がG1初挑戦。昨年6月以降、5戦3勝と着実に力を付けてきた。前走のG2・阪神牝馬ステークス(芝1600m)では、サフィラにハナ差で惜敗したものの、その前走では同条件のG3・ターコイズステークスを快勝している。
一方、良血馬クイーンズウォークは、前走のG2・金鯱賞(芝2000m)でホウオウビスケッツやプログノーシスといった牡馬を破って優勝。昨年初めには芝1600mのG3でも勝利しており、マイルへの距離短縮にどう対応するかが鍵となる。
注目馬その6: アリスヴェリテ
池添謙一騎手といえば、オルフェーヴルの主戦として知られるが、45歳のベテランは、アリスヴェリテでヴィクトリアマイルを制すれば、JRAの限られた名手の仲間入りを果たすことになる。
JRAの牝馬限定G1競走は、牝馬三冠を構成する桜花賞・優駿牝馬(オークス)・秋華賞、ヴィクトリアマイル、エリザベス女王杯、さらに2歳牝馬による阪神ジュベナイルフィリーズの6つだ。
この6競走すべてを制しているのは、武豊騎手、クリストフ・ルメール騎手、蛯名正義元騎手・現調教師の3名のみだ。だが、もしアリスヴェリテが日曜の大一番で波乱を演出すれば、池添もこの偉業を達成することになる。
なお、池添のこれまでのヴィクトリアマイル最高成績は、2016年にジャパンカップ馬ショウナンパンドラに騎乗した3着である。
