香港競馬の世界は、熾烈な競争と瞬時の変化が支配する厳しい環境だ。しかし、そのチャンスがひとたび香港屈指の『スーパーサブ』カリス・ティータン騎手の手に渡ると、彼は確実にそれをものにし、期待を裏切ることはほとんどない。
ザック・パートン騎手がシャティン競馬場での落馬負傷により戦線離脱するなか、ティータン騎手は再び大舞台での主役を任されることになった。2月23日に行われるG1・クイーンズシルバージュビリーカップでは、世界最強スプリンターであるカーインライジングに騎乗し、3連勝を狙う。
昨年6月、パートン騎手の代役としてカーインライジングに騎乗し、G3競走で圧巻の勝利を収めたティータン騎手にとって、これは再び自身の実力を示す絶好の機会となる。
「結局のところ、ここは香港です。すべてが一瞬で変わる可能性があります」とティータン騎手は今週、Idol Horseの取材に語った。「シーズン序盤に何度か騎乗停止があり、なかなかサポートを得られませんでしたが、シャティンで何度かいい結果を出して、今はカーインライジングに乗ることになった。本当に、状況がこんなにも急転するなんて信じられません」
ティータン騎手の香港でのキャリアは、スターとしての輝きを追い求めるものではなかった。彼の物語は、卓越した騎乗技術、前向きな姿勢、そしてハッピーバレーやシャティンといった難解なコースで最適な位置を確保するための果敢な判断力に支えられている。
「ここでは常に前向きでいなければなりません」と、彼は持ち前の明るい性格を保ちながら語る。「調子が悪いときに落ち込んでいる暇はないんです。いつどんなチャンスが巡ってくるか分かりませんから」
現在ティータン騎手は34歳。2013-14シーズンの開幕とともに香港競馬に参戦し、すぐにその存在感を示した。香港で初騎乗初勝利を収めたのは、実に11年ぶりの快挙だった。それ以来、香港のトップジョッキーの一角として確固たる地位を築き、名馬たちの鞍上を任される信頼できる騎手となった。
香港到着からわずか2か月後、彼はシャティン競馬場の芝を彩った歴史的名馬、エイブルフレンドとデザインズオンロームという2頭と関わることになった。

エイブルフレンドとは4歳時の最初の2戦でコンビを組み、2013-14シーズン終盤にはG2競走で勝利を収めた。これは主戦騎手であるブラジルの名手ジョアン・モレイラ騎手が騎乗停止となったため巡ってきた機会だった。
また、2015年のG2・プレミアボウルでは、モレイラ騎手がペニアフォビアを選んだことでティータン騎手にエイブルフレンドの騎乗機会が回ってきた。結果、彼はこのジョン・ムーア厩舎の名馬を勝利に導き、その輝かしいキャリア最後の勝利をプレゼントすることになった。
「本当に幸運でした。素晴らしい馬たちの騎乗機会が巡ってきたんです」とティータン騎手は語る。「エイブルフレンドのときも、ジョアンが別の馬に乗らなければならなかったために、私に大きなチャンスが回ってきました」
この絶妙なタイミングの良さは、エイブルフレンドの僚馬であるデザインズオンロームとの関係においても同様だった。ティータン騎手は、デザインズオンロームのシーズン初戦となるG2・シャティントロフィーで、トミー・ベリー騎手の代役として見事な騎乗を披露し勝利。その後、G2・ジョッキークラブカップでも引き続き騎乗の機会を得た。
ティータン騎手にとって初の香港G1制覇はミスタースタニングとのコンビによるものであり、彼はこの名スプリンターとともに2度のG1勝利を飾った。さらに、2021年のチャンピオンズ&チャターカップでは、またしてもモレイラ騎手が別の馬(パンフィールド)を選んだことでティータン騎手にチャンスが巡り、見事に優勝を果たした。

直近の名馬との関わりは2022年1月に始まった。ティータン騎手はロマンチックウォリアーに騎乗し、香港クラシックマイルで勝利を収めた。これはモレイラ騎手が別の馬(マスターディライト)を選んだことによるものだった。『モーリシャスの魔術師』の異名を持つティータン騎手は、その後、香港ダービー、G1・クイーンエリザベスII世カップと連勝し、ダニー・シャム厩舎のスター馬を世界の舞台へと導いた。
「デザインズオンローム、ロマンチックウォリアー……素晴らしい馬に騎乗する機会が何度もありました」とティータン騎手は笑いながら語る。
「どの騎手も願うことは同じです。最高の馬に乗って、大レースで戦うこと。強い騎手たちと競い合うことです」
ザック・パートン騎手、ジョアン・モレイラ騎手、ダグラス・ホワイト元騎手といった香港競馬界の『ヘビー級チャンピオン』たちと比べれば、ティータン騎手の名はやや控えめに見えるかもしれない。しかし、彼の実績がそれに劣るわけではない。
水曜日の夜、シャティン競馬場のダート戦で2勝を挙げたことで、ティータン騎手の香港通算勝利数は713勝に到達。これは、バジル・マーカス(694勝)、ジェラルド・モッセ(659勝)、オリビエ・ドゥルーズ(571勝)といった歴代の名手たちを上回る記録であり、香港競馬の通算勝利ランキングで6位に浮上したことを意味する。
しかし、この軽量かつ強靭で勤勉な騎手は、記録や勝利数のことをあまり気にかけていない。彼の関心はただ一つ、カーインライジングという名馬の手綱を取ることのみに集中している。彼は、この馬に最初に騎乗した瞬間から「これは特別な馬だ」と確信していた。
「昨年6月のレース前に調教で騎乗したとき、彼の感触はとても素晴らしかったんです。『これは相当いい馬だ』と思いました。でも、そのときはまだ、まさか世界最強スプリンターになるとは想像していませんでした」とティータン騎手は語る。
「昨シーズンの活躍もすごかったですが、それからの成長ぶりは本当に驚異的です。どんどん強くなっています。そして、オーナーの皆さんが私を信頼して引き続き騎乗を任せてくださったことには、本当に感謝しています。彼らが望めば、世界中のどんな騎手でも乗せることができたはずですから」
ティータン騎手にとって、この状況はこれまで何度も経験したものだった。モレイラ騎手が騎乗を見送ったとき、ティータン騎手がチャンスを掴んだ。トミー・ベリー騎手がレースをソファで見守っていたとき、ティータン騎手は勝利を収めた。そして今、ザック・パートン騎手をはじめ、世界中の競馬関係者が見守る中で、ティータン騎手は再び主役として舞台に立つ。