2021年、ミスターブライトサイドがユーロアのリンジーパーク調教場に初めてやってきたとき、この馬が世界レベルのトップマイラーに成長すると予想できた者は、ほとんどいなかった。
唯一の出走時は5着。ニュージーランドでのマタマタ競馬場で走ったときのものだ。ザ・キラーズの名曲から取られた馬名を除けば、目を引くような要素は持ち合わせていなかった。
血統も冴えない。父はマイナー種牡馬のブルバーズ、母は未出走馬。ただし、4代母のタイオナは、ソヴリンレッド、ガナーズレーン、トリシェルといった活躍馬を輩出しており、ニュージーランドの年度代表繁殖牝馬に2回選ばれている。
当然、競りでの評価も芳しくなかった。2歳時のトレーニングセールではリザーブ価格の5万NZドルに届かず、主取りの憂き目に。
さらに、悪い要素はそれだけではない。気性が一番の問題だった。調教ではとにかく乗り手を困らせ、もしどれだけ能力があったとしても、気性難が邪魔して大成しないだろうと言われるほどであった。
アンドリュー・ルジューンが司会を務めるIdol Horseのポッドキャストに出演した際、厩舎を共同で運営するベン・ヘイズ調教師はこのように当時のミスターブライトサイドを振り返った。
「昔は少し手こずりましたね。初めて厩舎に来たとき、6回も騎乗者を振り落としました。まあ、とにかく生意気な性格で、よくクルッと回って鞍上を振り落としていました」
「ですが、調教にも慣れて年齢を重ねるに連れて、今では厩舎で一番賢い馬と言えるほどに大人しくなりました。とても落ち着いた馬です。明るい性格でもあるので、馬房の近くに行くといつも顔を出して挨拶してくれます」
ミスターブライトサイドの主戦ジョッキー、クレイグ・ウィリアムズ騎手はこの馬を辛抱強く育てた功労者の一人だ。7歳までに43戦のレースを渡り歩いてきたが、そのうち手綱を取ったのは39戦。4年前、ジーロング競馬場のメイドンを圧勝したとき以来、負傷離脱中だった2023年のドンカスターマイルとオールスターマイル以外はずっとコンビを組んできた。
「私にとっても特別な一頭です」とウィリアムズはIdol Horseの取材に対して語る。総賞金500万豪ドルのザ・クオッカに騎乗するため、この日はパースに滞在していた。香港には夜の航空便で向かうという。
「これまで乗ってきた相棒の中でも一番の馬です。気性も走るたびに良くなっていきましたし、そのおかげでワールドクラスの馬に育つことができました」
「ヘイズ兄弟(調教師)のゆっくりと条件戦から使っていく方針は正解でした。2021年の春から徐々にステップアップしていき、それが大舞台に挑む上での基礎として役立ちました」
ミスターブライトサイドは日曜日、シャティン競馬場で行われるG1・チャンピオンズマイル(1600m)に出走する。待ち受けるのは地元香港のヒーロー、ヴォイッジバブルだ。
香港とは一つの因縁がある。World Poolの対象レースとして香港でも中継された2023年のコックスプレートでは、香港最強馬のロマンチックウォリアーにハナ差で敗れた。オーナーたちにとって、今回は雪辱を果たす絶好の機会でもある。
共同オーナーの一人は「香港の競馬ファンがこれほど応援してくれるなんて、今でも信じられません」と話す。
「ロマンチックウォリアーに敗れたときのことは今でも忘れていません。ですが、彼のその後の活躍はブライドサイドがどれだけ強い馬なのかを証明しています。あの走りがきっかけで香港でもファンが増えましたし、おかげでずっと応援してくれています。こればかりは完全に予想外でしたが、私たちと同じくらい愛してくれているんです」
「このレースで良い走りを見せるようなら、12月(香港国際競走)にまた連れてこなくちゃいけませんね」