2024 東京優駿 (日本ダービー): G1レビュー
競馬場:東京競馬場
距離:芝2400m
賞金総額:6億4800万円(約459万6000米ドル)
レース前日、皐月賞でペースを引っ張った逃げ馬のメイショウタバルが、蹄を痛めて出走取消。その結果、ダービーは明確なペースメーカーが不在のレースとなった。多くの騎手が牽制し合う中、ダノンデサイルの横山典弘騎手はゲートを出ると真っ先に内ラチ沿いを目指した。結果的に、この積極策が決定的な勝負の分け目となる。
5番枠からスタートしたダノンデサイルは第一コーナーを回る前に絶好のポジションを確保し、横山騎手はレースの展開を見守りながら競馬を進めることができた。
出遅れから始まった1番人気のジャスティンミラノは、先頭集団に加わるべく戸崎圭太騎手が促しながら追い上げていった。
次に待っていた展開は、JRAのG1としては珍しいスローからミドルペースの緩やかな流れだった。岩田康誠騎手のエコロヴァルツがキャンターで馬群を引っ張るが、2000mから1000mまでの5ハロンは63.6秒だった。ゆったりとした流れはレース中盤の動きを誘い、1000mを超えた辺りからプレッシャーを掛ける馬が現れ始める。そんな中、ラチ沿いをスムーズに走り、最終コーナーの時点で好位置にいたのはダノンデサイルだった。
2024 東京優駿: レース映像
調教師の努力
41歳の安田翔伍調教師にとって、有望なキャリアをさらなる高みへと導く勝利となったのは間違いないだろう。
ダービーを勝ったというだけでなく、難しい調整過程を乗り越えたことに価値がある。皐月賞では跛行のためゲート裏で無念の競走除外となったが、安田調教師は4週間の間に立て直して最高の仕上げで送り出すことができた。
裏切られた人気
2.2倍の1番人気で敗れたジャスティンミラノには、明確な敗因があったのか?そうとは言い切れないが、できる限りのことはしていただろう。15番枠は不利な外枠だったが、それに加えてスタート失敗、戸崎騎手は序盤から苦戦していた。しかし、勝ち馬との着差が2馬身差であることを考えると、内枠や好スタートという条件が付け加えられたとしても、勝てていたと断言するのは難しいだろう。ダノンデサイルは直線終盤でさらに突き放し、ステイヤー適性の違いを見せつけた。
2番人気のレガレイラに対する評価は、検討の余地があるかもしれない。クリストフ・ルメール騎手は2番枠から好位置をキープして10番手を走っていたが、スローペースの位置取り争いでは波に乗れず14番手まで後退してしまった。
レガレイラは上がり3ハロン33.2秒の最速タイムを叩き出し、5着に入った。展開に左右されがちなタイプの追い込み馬かもしれないが、それがハマったときは要注意だ。
血統
エピファネイアは2013年の日本ダービーでキズナに次ぐ2着だったが、今回は復讐劇とも見て取れる結末だった。キズナ産駒は5頭出しだったが、2着・9着・10着・12着・15着に終わった。
14歳の種牡馬エピファネイアにとっては、勢いを取り戻す絶好調のシーズンが続いている。ダノンデサイルのダービー勝利は、ステレンボッシュ(桜花賞)とテンハッピーローズ(ヴィクトリアマイル)に続く、今年3度目の産駒G1制覇だった。
勝利コメント
横山典弘騎手「展開は、前に行く馬がいなくなりペースが普通か遅くなるかと思っていました。エコロヴァルツが行ってくれたのでちょうどいいポケットに入れて、直線までじっとできたので、最後はよく弾けてくれました。ダービーを勝ったことは嬉しいですが、皐月賞で走らせなかった決断は間違っていなかったのだなと。これからまた無事に走ってくれることを願うだけです」
ファクトファイル
横山騎手は56歳3ヶ月4日でダービーを制し、ダービー最年長勝利記録とJRA・G1の最年長勝利記録を更新した。横山騎手にとっては、ワンアンドオンリー(2014年)とロジユニヴァース(2009年)に次ぐ3度目のダービー制覇であり、通算では28度目のG1勝利だった。
その他の注目馬
3着のフランス産馬・シンエンペラーは凱旋門賞に登録がある。今後に向けて、収穫の多い良い走りだったと言えるだろう。