2024 安田記念: G1レビュー

競馬場:東京競馬場
距離:芝1600m
賞金総額:3億8880万円 (約275万8000米ドル)

世界中で圧倒的な成績を残しているジェームズ・マクドナルド騎手騎乗の香港馬ロマンチックウォリアーが今年の安田記念の一番の注目馬となった。そしてロマンチックウォリアーと冷静沈着なJ.マクドナルド騎手は人気に相応しいパフォーマンスを披露した。

GI4連勝中のロマンチックウォリアーは正々堂々たる形でレースを運んだ。マクドナルド騎手の手綱の元でスタートから好位につけて先行し、終盤で前詰まりにならないよう注意を払った。

ロマンチックウォリアーの後ろに付けた騎手もいた。2番人気のソウルラッシュ(鞍上ジョアン・モレイラ)とナミュール(鞍上武豊)が後ろの好位でロマンチックウォリアーをマークした。結果的にこの2頭がゴール直前でロマンチックウォリアーの脅威となったが、ロマンチックウォリアーは持ち前の粘り強さで半馬身差で2頭を退けた。

2024 安田記念: レース映像

ROMANTIC WARRIOR / G1 Yasuda Kinen // Tokyo /// 2024 //// Video by JRA

久々の勝利

GI7勝馬で世界中で実績を残しているロマンチックウォリアーにとって3.6倍のオッズはなかなか美味しいと思われるが、これは近年香港馬の安田記念での不振が背景にある。

香港馬による安田記念制覇は2006年のブリッシュラック以来18年ぶりとなるが、この間には23頭の香港出走馬が敗れている。馬券内に入ったのも2008年のアルマダ(2着)のみで、その後の16頭の平均着順はわずか10着だった。

しかしそれらの馬と比べてロマンチックウォリアーは格が違った。同一シーズンに2カ国に遠征してGI制覇を達成したのは、ケープオブグッドホープ(2004‐05)とエアロヴェロシティ(2014‐15)に次ぐ香港史上3頭目となった。

レース後コメント

ジェームズ・マクドナルド騎手「本当に誇りに思いますし、日本に来て、この馬の強さを日本の情熱的な競馬ファンの方々にお見せでき、非常に光栄だと思います。チーム全体が非常に良い仕事をしてくれました。レースは完璧に計画通りに進みました。レース前から馬群前方につけるプランを立てていて、この馬のおかげで常に快適なポジションにいることができました。スタート前に少し落ち着かず興奮気味でしたが、それはただ馬の闘志が溢れ出ているので心配ないと思いました。そしていつも通り、最高のパフォーマンスが求められる際にこの馬は応えてくれました。残り200メートルで先頭に立ったとき、よほど強い馬でない限りこの馬を抜けられないと確信していました。

DANNY SHUM, JAMES McDONALD / G1 Yasuda Kinen // Tokyo /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

レースの最後の100メートルで絶好調のこの馬を差せる馬はそこそこありません。この馬は既に自身がチャンピオンホースであることを証明しており、オーストラリアの難関レース・コックスプレートを勝ち、強い相手の中で香港カップを2連覇し、そして今回日本に遠征してきて自分の最適距離より少し短いマイルレースも勝ってみせました。この馬はいつもビッグレースでベストを尽くし、これがこの馬の良いところです。この馬は獅子の心と尋常ならざる能力を兼ね備えています」

豆知識

ロマンチックウォリアーの半馬身差の勝利は、同馬の今シーズンのGI5勝の内、着差が一番大きいものであった。それ以前の勝利は、ハナ差、アタマ差、クビ差、クビ差であった。

ロマンチックウォリアーは2015年のモーリス以来初めて1番人気として安田記念を制した。

次走は?

チャップシン・シャム調教師はこれまでロマンチックウォリアーの遠征を大した恐れなく敢行してきたが、今回ロマンチックウォリアーは今月下旬に参戦が予定されていた宝塚記念(GI)への出走を見送り、十分な休養を取ることにした。

ロマンチックウォリアーのシーズンは去年10月オーストラリアから始まり、ターンブルSの4着からコックスプレート、香港カップ、香港ゴールドカップ、クイーンエリザベス2世カップなどのGIを転戦した。

馬主のピーター・ラウ氏は今後の日本遠征にも意欲的であり、来年安田記念の連覇を目指す可能性を示した。

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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