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G1レースで対照的な結末を迎えたエルヴェンセドールとミスターブライトサイドだが、それぞれの前走の結果から、来月の香港チャンピオンズデーへの参戦が確実となった。

エルヴェンセドールはG1・”ボーンクラッシャー” ニュージーランドステークス(芝2000m)で3連勝を達成し、通算4つ目のG1タイトルを獲得。直線の攻防では、実力馬のラクリークを抑え込む激戦を演じ、同レースの名を冠したボーンクラッシャーを彷彿とさせる走りを見せた。

この勝利により、エルヴェンセドールは4月27日のG1・クイーンエリザベス2世カップ(シャティン・芝2000m)に出走することが決まった。

「彼は今、まさに絶好調で、飛ぶ鳥を落とす勢いです」とスティーブン・マーシュ調教師はIdol Horseに対してコメント。「今朝、彼の状態を確認しましたが、見た目も素晴らしく、これ以上ない仕上がりです。本当にタフな馬で、競馬を心から楽しめています。1カ月で3つのG1レースを勝ったので、ここで少し楽をさせてもいい頃でしょう」

「今日(月曜)は放牧に出して、厩舎を離れてリラックスさせる予定です。リフレッシュした後は、レース当日に向けた調教を行い、場合によってはトライアルを挟むことも考えています。飛行機に乗る前に、しっかり準備を整えます」

エルヴェンセドールはメルボルンカップを制したショッキングの産駒で、オーナーであるマーク・フリーマン氏とデイヴィッド・プライス氏の自家生産馬だ。2021年の香港ダービー馬、スカイダーシーの半弟でもあり、デビュー当初はスプリンターとしての適性を探られたが、次第に父譲りの中距離適性を発揮。”ボーンクラッシャー” ニュージーランドS(連覇)、G1・ハービーダイクステークス(芝2000m)、G1・オタキマオリWFAクラシック(芝1600m)といったG1タイトルを獲得してきた。

「デビュー当初は折り合いが難しく、正直なところレース運びに苦労しました」とマーシュ調教師はこの馬に過去を振り返る。

「オープンクラスの短距離戦に出走していましたが、徐々に成長し、リラックスできるようになりました。我々はずっと素質を信じていましたが、レースを重ねるごとに本領を発揮し、最適な距離がマイルから2000mであることがはっきりしました」

エルヴェンセドールは4月17日に香港へ出発し、その際にはマーシュ調教師が『秘密兵器』と呼ぶエマ・スミス氏が同行する。

「エマは毎日、調教で彼に騎乗しており、シャティン競馬場の環境にも精通しています。彼女は香港国際セールのために、アスコットファームのブルース・ハーヴェイ氏とともに6回もシャティンを訪れており、その経験がエルヴェンセドールの順応を助けるはずです」

「遠征において、何をすべきか分からない状況は非常にストレスになりますが、彼女がいることでスムーズに適応できるでしょう。チームにとって欠かせない存在であり、まさに我々の秘密兵器です」

エルヴェンセドールを香港で迎え撃つのは、世界的な名馬たちだ。キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスの勝ち馬ゴリアット、日本ダービー馬のタスティエーラ、コックスプレート2着のプログノーシス、そして世界を転戦するドバイオナーといった実力馬たちが待ち構えることが想定される。

また、G1・クイーンエリザベス2世Cを3連覇中のロマンチックウォリアーも出走の可能性を残している。ただし、ダニー・シャム調教師は、4月5日のG1ドバイターフ(メイダン・芝1800m)の後は今シーズンのレースを見送る可能性が高いとコメントしている。

「我々はダビデがゴリアテに挑むようなものかもしれませんが、忘れてはいけません。ダビデは勝った側ですので」とマーシュ調教師は自信を見せる。

「世界のトップレベルに名を連ねるのは、誰もが夢見ることです。他の馬たちが招待されるのを耳にすることはあっても、いざ自分の管理馬が選ばれると、その感慨はひとしおです。これはチーム全員にとって、そして何よりエルヴェンセドールにとって、最高の舞台になります」

「彼は、多くの人々の人生を変えた馬です。私たちにとっても、オーナーにとっても、そしてチーム全体にとっても。この香港遠征がどのような結果をもたらすか、今から待ちきれません」

一方、ミスターブライトサイドはG1・オールスターマイル(芝1600m)で好成績を残しながらも、再びヴィクトリア州の名物レースで敗れ去る形となった。土曜日の2着は、同レース4度目の挑戦でのものだった。これまでの成績は、2022年のフレミントンでの4着(勝ち馬ザーキ)、2023年のムーニーバレーでの優勝、2024年のコーフィールドでの2着(勝ち馬プライドオブジェニー)となっている。

トムキトゥンに次ぐ2着となった今回のレース後、ベン・ヘイズ調教師は香港遠征の計画が継続していることを明言した。ただし、香港へ向かう前に、3月22日にローズヒル競馬場で行われるG1・ジョージライダーステークス(芝1500m)に出走する可能性もあるという。意外なことに、ミスターブライトサイドがローズヒル競馬場で走るのはこれが初めてとなる。

「これからはマイル路線に専念します。2000mへの挑戦は少なくとも今シーズンは考えていません」とヘイズ調教師は説明。「スプリント能力を維持することを優先します。土曜日のレースでは硬めの馬場に苦戦しました。ジョージライダーに向かう予定でしたが、やや間隔が短いかもしれないです」

「香港のチャンピオンズマイルに直行する選択肢もあります。その場合、現地へ向かう前に十分な調教を積むつもりです。ただ、ジョージライダーに出走する可能性も完全には排除していないです。いずれにせよ、目標は香港です」

もしミスターブライトサイドがチャンピオンズデーに参戦すれば、ヘイズ厩舎の強力な布陣の一員となる可能性が高い。ベン・ヘイズ調教師の父、デイヴィッド・ヘイズ調教師はG1・チェアマンズスプリントプライズ(芝1200m)にカーインライジングを出走させる予定であり、香港ダービーの有力馬ルビーロットもチャンピオンズマイルまたはクイーンエリザベス2世Cに向かう可能性がある。

エルヴェンセドールとミスターブライトサイドが香港遠征を控える一方で、G1・ニューマーケットハンデキャップ(芝1200m)の勝ち馬ジョリースターは、遠征を見送り国内に留まることが決まった。

クリス・ウォーラー調教師とチャーリー・ダックワース助手は、ジョリースターがニューマーケットHを圧勝した直後、ロイヤルアスコット遠征の可能性に言及していた。しかし、ケンブリッジスタッドのCEOヘンリー・プラムプトル氏は、ジョリースターの欧州遠征は「ほぼあり得ない」と否定するコメントを残した。

「アスコットまでの道のりは長く、彼女なら良いレースができると思いますが、その後オーストラリアに戻し、翌年も万全の状態で戦うのは難しいでしょう」とプラムプトル氏は語った。「その頃には6歳になってしまい、再び軌道に乗せるまで時間がかかってしまうためです。シドニーとメルボルンのレースに専念するのが最良の選択です」

「国内には、彼女のようなスプリント適性のある馬にとって魅力的なレースが豊富にあります。ジ・エベレストに再挑戦する可能性も十分にありますが、アスコット遠征を選択すれば、それは不可能になります」

ジョリースターは昨年のG1・ジ・エベレスト(芝1200m)で1番人気に支持されながらも、勝ち馬のベラニポティナから離された7着に敗れている。

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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