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水曜の夜、ハッピーバレー競馬場で馬券購入者たちが行き交う中、ジェームズ・オーマンはそこにいた。一見すると、その私服姿は競馬を楽しむ普通の外国人観光客のように見える。

人々は彼に気付かないまま横を通り過ぎていくが、実はこの長身の西洋人こそ、たった1時間前にクラス4のレースを勝ち取ったジョッキーなのだ。

「ここにいることすら信じられないのに、勝利まで挙げられるなんて…」とオーマンはIdol Horseの取材に対して話す。

オーマンの携帯電話は祝福のメッセージで鳴りやまず、彼自身もまだ興奮冷めやらぬ様子だった。

わずか2週間ほど前まで、彼は母国オーストラリアのクイーンズランド州にいた。過去3シーズン連続でブリスベン地区のリーディングジョッキーを獲得し、今季もランキングトップを走っていた彼のもとに、香港ジョッキークラブ(HKJC)の関係者から電話が入った。

それは、ザック・パートンやヴィンセント・ホーを含む4人の騎手が負傷により離脱したため、6週間の短期騎乗を依頼したいという内容だった。

「本当に夢のような感覚ですよ」とオーマンは、あまりに急なデビューについて語った。「香港に来てまだ9日目だけど、この話を聞いたのはその1週間前のことです。ずっとここで騎乗したいと思っていたけど、これまで声がかかることはなかったんです」

James Orman celebrates his first Hong Kong win aboard Charming Babe
JAMES ORMAN, CHARMING BABE / Happy Valley // 2025 /// Photo by HKJC

彼が一般の競馬ファンと見分けがつかない最大の理由は、その身長にある。177cmのオーマンは、場内を歩くファンの大半よりも頭一つ抜けている。「僕は本当は馬に乗るよりバスケットボールをするべきだったんじゃないかな」と冗談を交えながら話す。

しかし、その身長にもかかわらず、彼がジョッキーになる道はほぼ運命づけられていた。父のマイケル・オーマンは騎手、母のキャロル・アラーダイスは調教師という競馬一家に生まれ、幼い頃から馬とともに育ってきた。長年の経験が彼を鞍上でリラックスさせ、香港のファンにも響くであろう力強い騎乗スタイルを磨いてきた。

とはいえ、そのスタイルを発揮する機会はまだ限られている。水曜にチャーミングベイブで挙げた勝利は、香港での3開催日目、4回目の騎乗でのものだった。それまでの3戦は、単勝オッズ47倍、235倍、142倍という大穴馬への騎乗だった。

次の開催日、日曜のシャティンでは、さらに2頭の人気薄の馬に騎乗する予定だ。それでもオーマンは、自身の体重を55.3kg(122ポンド)まで落とすなど、勝利を重ねるために努力を惜しまない。水曜の勝利のような成果を出せば、より多くのチャンスが巡ってくると信じている。

「(調教師の)リッキー・イウに感謝したいです。この勝利が新たなチャンスにつながればいいと思います」とオーマンは語る。「122ポンドの体重は僕にはきついですよ。オーストラリアではこの体重では乗らないけど、香港では頑張って減量している。軽くなれば、それだけ騎乗機会が増えるから」

オーマンに残されたのは6週間。その間に短期契約をフルシーズン契約へとつなげ、香港を妻のハイディ、5歳のフロイド、3歳のハリーと共に生活の拠点にしたいと考えている。

「子供たちは学校を休ませて一緒に来たけど、みんな香港を気に入っている。ここで暮らしたいんだ」とオーマンは語る。「契約は6週間だけど、できればずっといたい。そのためにはとにかく結果を出すことが大事です」

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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