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「即決ではなかった」30歳で電撃引退、サム・クリッパートン騎手が語るその理由

ジ・エベレスト制覇の実績もある騎手、サム・クリッパートンはSNSを通じて引退を発表し、競馬界に衝撃を与えた。その理由を問われると、競馬以外の人生に向けて準備ができていると話した。

「即決ではなかった」30歳で電撃引退、サム・クリッパートン騎手が語るその理由

ジ・エベレスト制覇の実績もある騎手、サム・クリッパートンはSNSを通じて引退を発表し、競馬界に衝撃を与えた。その理由を問われると、競馬以外の人生に向けて準備ができていると話した。

衝撃的な引退決断の後、最も有名な勝ち馬と共に、静かな田舎での生活がサム・クリッパートンを待っている。この決断は即日有効のものとなり、月曜日の夜にソーシャルメディアで発表された。

クリッパートン騎手は12月7日、レス・ブリッジ厩舎のスコーチングレジェンドに騎乗したそのの1鞍が、レースでの最後の騎乗になることを知りながらローズヒル競馬場を後にした。

「仲間の何人かと、私の身近な人たちには知らせていましたが、かなり狭い範囲に留めていました」とクリッパートンはIdol Horseに語った。

「ただ、(引退について)聞かれることが増えてきていました。レースから離れて最初の1週間は大丈夫でしたが、自分から、自分の言葉で公にするのが正しいことだと思いました」

「これには本当に多くの意味がありました。長年一緒に騎乗してきた多くの人たちや、世界中から多くのメッセージをいただきました。本当に特別なことです」

Scorching Legend was Clipperton's last race ride
SAM CLIPPERTON, SCORCHING LEGEND / Rosehill // 2024 /// Photo by Jeremy Ng (Getty)

芝の最高賞金レースである2000万ドルのジ・エベレスト(1200m)でシンクアバウトイットに騎乗して優勝し、キャリアの頂点を極めて以来、クリッパートンの14ヶ月もの間に渡って波瀾万丈な騎手キャリアを送っていた。

30歳の彼は、不本意な秋のシーズンの責任を問われ、ジョー・プライド厩舎のスプリンターへの騎乗機会を失った。また、競争の激しいシドニーの騎手社会で、彼の境遇は変動を続けていた。

2024年は270回騎乗で25勝と、2023年の361回騎乗40勝から減少した。特筆すべき点は、シドニーの喧騒を離れ、ハンターバレーの牧場に移住し、より外での生活に重点を置くようになったことだ。メトロ競馬での騎乗割合が2023年の73パーセントから2024年は50パーセントに減少している。

「引退については1年かけて検討してきたことなので、突発的な決断ではありませんでした」と彼は語った。

「確かに複雑な感情です。人生の大きな部分を占めていたものなので、愛着を感じるのは自然なことですし、確実に恋しく思う部分がたくさんあります。ただ、まったく恋しくないと思う部分があるのも事実です」

クリッパートン騎手は16歳でデビューし、ロン・クィントン氏の指導の下で2度の見習い騎手チャンピオンとなったが、オーストラリアの競馬界での苦労が重荷となっていたことを認めた。

A very young Sam Clipperton with fellow jockey Chad Schofield
SAM CLIPPERTON, CHAD SCHOFIELD / Kembla Grange // 2010 /// Photo by Illawarra Mercury

「身体的にも精神的にも多くのことを要求される仕事で、最高のコンディションでないなら、この仕事は向いていません」と彼は語った。

「こちらに引っ越してきた時は、騎手生活と農場での生活を両立させるつもりでしたが、すぐに支障が出てくることに気付き始め、そのおかげで決断がずっと容易になりました」

では、クリッパートン騎手の次なる道は?

物腰の柔らかいこの騎手は、他の多くの元騎手同様、メディア業界でのキャリアを歩むことも容易だろう。その博識で比類ない洞察力から、大きなカーニバルの際には需要があることは間違いない。しかし今のところ、彼はあえて競馬から離れた道を切り開くことに意欲的だ。

クリッパートン騎手は「まだ30歳ですから、新しいキャリアを築き、自分の情熱を追求するのに何十年もの十分な時間があります」と話す。

「競馬に完全に区切りをつけるまで先延ばしにすることもできましたが、仮にそれが今から10年後だとしたら、その10年は別の道で自己を確立するために使えた時間なのです」

「田舎の不動産業者か農業関連の仕事に就きたいと思っています。いま私が非常に情熱を感じていることなのですが、騎手を始めて以来初めて、色々なことを試してみて、その結果を見守る機会を得ました」

クリッパートン騎手は6802回騎乗で672勝を挙げ、そのうち香港では949回騎乗62勝を記録した。ジ・エベレストでの勝利に加えて、5回のG1勝利を達成した。シンクアバウトイットで2勝(キングスフォードスミスCとストラドブロークハンデキャップ)、そしてマズ(ドゥームベン10000)、イングリッシュ(オールエイジドS)、ピーピング(クールモアクラシック)でそれぞれ1勝ずつだった。

15年のキャリアを通じて騎乗した他の馬には、ホットキングプローン、ワーザー、イッツサムワット、コンプレセント、エクソスフィアなどがいた。

Sam Clipperton celebrates winning The Everest aboard Think About it
SAM CLIPPERTON, THINK ABOUT IT / The Everest // 2023 /// Randwick //// Photo by Jason McCawley (Getty)

クリッパートン騎手は競馬界から身を引くことになるが、平日の条件戦から競馬界の最高峰へと導いた愛馬、シンクアバウトイットが牧場で彼と共に過ごすことになる。

彼は愛馬について「現在、グレスフォードのパリンガスタッドにいて、レジー・ブランデル氏が面倒を見てくれています。ジョーの素晴らしいスプリンターの1頭だったテラビスタもそこを拠点にしているんです」と語った。

「引退生活を楽しんで、近いうちに牛を追いかけ回している姿が見られるかもしれませんよ!」

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの副編集長。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。また、競馬以外の分野では、ナイン・ネットワークでオリンピック・パラリンピックのリサーチャーも務めた。

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