2024 朝日杯フューチュリティステークス: G1 レビュー
競馬場:京都競馬場
距離:1600m
総賞金:1億5220万円(約98万9179米ドル)
アドマイヤズームは、騎手・川田将雅、調教師・友道康夫、馬主・近藤旬子氏のタッグにより圧倒的な走りを披露し、その非凡な才能をさらに印象付けた。
川田騎手にとっては2017年以降4勝目となる朝日杯制覇であり、これにより柴田政人やミルコ・デムーロと並び、同レースの75年の歴史で最多勝利を誇るジョッキーの1人となった。また、友道調教師にとっては2018年以来の3度目の勝利となった。
朝日杯フューチュリティステークスは、2014年から阪神競馬場で開催されていたが、同競馬場の改修工事のため、今年は京都競馬場で初めて開催された。
アドマイヤズームは、ナリタブライアン、エイシンプレストン、ドリームジャーニー、ローズキングダム、ドウデュースといったレースの歴史に名を刻む名馬たちに肩を並べるにはまだ道のりが長いが、その第一歩を確かに踏み出したといえるだろう。

レース展開
混戦となったレースを象徴するのは、最初の1000mを60.4秒で通過したスローペースだ。1200mから600mのスプリットタイムも37.2秒と緩い流れで、最後の600mは33.7秒、ラスト400mは21.9秒と急加速する展開となり、後方からの馬にとっては厳しい展開だった。
人気薄のクラスペディアとダイシンラーが先行争いを演じたが、最終的に小崎綾也騎乗のクラスペディアが控え、横山典弘騎乗のダイシンラーがスローペースの逃げを打つ形となった。
一方、アドマイヤズームに騎乗した川田将雅は2番手で折り合い、クリスチャン・デムーロのミュージアムマイルは内から進出して3番手あたりにつける理想的な位置取り。これに対しライアン・ムーアのニタモノドウシやクリストフ・ルメールのアルレッキーノは600m地点で後方2番手あたりを追走、1番人気のアルテヴェローチェも武豊に導かれながら後方に構える不利な展開となった(これについては後述)。
直線に入り、ダイシンラーが早々に失速すると、5番人気アドマイヤズームと2番人気ミュージアムマイルが仕掛ける展開に。しかし、瞬く間にアドマイヤズームが抜け出し、2着ミュージアムマイルに2馬身半差をつけて圧勝した。
後方集団から唯一鋭く脚を伸ばしたのはランスオブカオスで、若手騎手の吉村誠之助が初のG1連対を果たした。逃げ粘ったダイシンラーは単勝150倍の低評価を覆し、4着に健闘した。

勝ち馬・アドマイヤズーム
アドマイヤズームは1歳時に1億2650万円(約82万2150米ドル)で取引され、セリ市の231頭中27番目に高額な馬だった。母ダイワズームは芝1800mのリステッド競走勝ち馬で、アメリカのG1馬ストラテジックマヌーバーやマックスプレイヤーを輩出した血統を引き継ぐ。さらに京都の重賞勝ち馬ジェニュインやアサクサキングスとも遠縁にあたる。
デビュー戦は10月の京都1600m戦で、直線で進路が塞がれた後、追い込み切れず4着に終わった。しかし、先月同じ京都1600mで行われた未勝利戦では、好位からスムーズに加速し、今回のG1勝利を彷彿とさせる圧巻の末脚を披露した。
アドマイヤズームはモーリス産駒として世界で6頭目のG1勝ち馬であり、ジェラルディーナ、ジャックドール、ピクシーナイト、オーストラリアのヒトツやマズと並びその名を刻んだ。

勝利オーナー・近藤旬子氏
アドマイヤズームの勝利は、2020年に「アドマイヤ」軍団の馬主を正式に引き継いだ近藤旬子氏にとって、初の公式G1制覇となった感慨深いものだった。
夫である近藤利一氏は数々のG1タイトルを手にした名オーナーであり、とりわけ朝日杯フューチュリティステークスでの成功が際立つ。アドマイヤコジーン(1998年)、アドマイヤドン(1999年)、アドマイヤマーズ(2018年)で3度制覇している。また、アドマイヤベガ、アドマイヤグルーヴ、アドマイヤムーン、アドマイヤラクティといった名馬を所有した。
近藤利一氏は2019年末、アドマイヤマーズが香港マイルを制する数週間前に癌で亡くなった。
アドマイヤズームは、近藤旬子氏にとって初めてのダービー制覇のチャンスをもたらす馬だ。亡き夫の近藤利一氏は、1999年にアドマイヤベガでこのレースを制している。
敗れた人気馬
アルテヴェローチェは、武豊にとって厳しいレースとなった。ゲート8番からスムーズにスタートし、200m地点では先頭から1馬身差の好位につけていた。しかし、武が馬を抑えると、1000m地点では先頭のダイシンラーから5馬身離れた10番手まで後退した。
ペースが明らかに遅い中で、クリストフ・ルメール騎乗のアルレッキーノが内から進出し、外からは伏兵エイシンワンドが上がってくるなど、レースは武の周囲で動き始めた。結果として、アルテヴェローチェは中盤で不利なポジションに閉じ込められ、京都競馬場の比較的短い直線に入った時点では後方2番手に位置していた。
それでもアルテヴェローチェは5着に追い込んだが、勝ち馬からは8馬身差と大きく離されていた。この結果にもかかわらず、2025年の日本のクラシック戦線における有力馬としての地位は揺るがないことを示唆する内容だった。

コメント
川田将雅(アドマイヤズーム、1着)
「シーズンを良い形で締めくくることができて嬉しいです。前走も非常に印象的でしたし、このレースを勝つ可能性を大いに感じていました。ただ、まだ扱いが難しいところがあるので、そこは注意を払いました。
最後のコーナーでリズムが良かったので、最高のパフォーマンスを引き出すことができ、勝利を確信しました。この馬は慎重に扱う必要がありますが、素晴らしい能力があり、将来は非常に明るいと思います」
武豊(アルテヴェローチェ、5着)
「今日はスムーズなレースができませんでした。最後も伸びてくれず。もっと走る馬だとは思います。折り合いを欠きそうになって抑えたら外から馬群に押し込められた。本来はこんな結果ではないはず」

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すべての道は来年の日本のクラシック三冠路線へとつながる。三冠初戦となるG1・皐月賞(2000m)は4月20日に中山競馬場で行われる予定だ。
朝日杯フューチュリティステークスと皐月賞の両方を勝った馬は、2012-2013年にそれを成し遂げたロゴタイプ以来現れていない。アドマイヤズームと同厩舎のドウデュースも、皐月賞ではジオグリフとイクイノックスに次ぐ3着に終わった。実際、朝日杯フューチュリティを経て皐月賞を制した最後の馬はそのロゴタイプである。
それでも、アドマイヤズームを含む今回の上位馬たちにとって、皐月賞は当然の目標になるだろう。
とはいえ、アドマイヤズームが皐月賞の後、距離を短縮して5月のG1・ NHKマイルカップ(1600m)に向かう可能性も否定できない。アドマイヤマーズやジャンタルマンタルも同様のローテーションを辿り、朝日杯フューチュリティを勝ち、皐月賞で善戦した後、距離を短縮してNHKマイルカップを制している。 ∎