ロマンチックウォリアーは今年の香港国際競走の主役となった。G1・香港カップで圧倒的、かつ歴史的な勝利を収め、ついに偉大なゴールデンシックスティの影から完全に抜け出し、日本勢は今年の海外G1制覇がゼロに終わることとなった。
「彼は最高の馬です」とジェームズ・マクドナルド騎手は馬上から端的に語った。
ダニー・シャム厩舎のセン馬は、もはやシャティンの2000mで並ぶ者がなく、おそらくそれ以外の距離でもそうだということを証明した。
それは見事なショーだった。1枠を活かした戦術的なペース、バックストレッチで落ち着いたしたペースになるにつれ、気性の良さからプロフェッショナルな走りへと切り替わる様子。4コーナーで3頭分外から前に出て先頭を追撃するスピードと決意。そして最後は一昨年の日本ダービー馬、タスティエーラとの叩き合いを制し、堂々と加速して、後方から追い込んだもう一頭の日本の精鋭リバティアイランドに1馬身半差をつけての勝利。
マクドナルド騎手はゴール前で立ち上がり、後続を振り返ってから肩をすくめた。まるで「それだけか?」と言わんばかりだった。


ロマンチックウォリアーは2分00秒57のタイムで優勝。香港カップ史上初の3連覇を達成し、ゴールデンシックスティの香港マイル3連覇の記録に並んだ。賞金額も引退した名馬の世界記録賞金額を更新して、新記録となる1億7732万2706香港ドルに及んだ。
この勝利は、シャティンの年末の祭典における香港とマクドナルド騎手にとって素晴らしい一日の締めくくりとなった。2日前に『ワールドベストジョッキー』に輝いた彼は、ヴォイッジバブルでG1・香港マイルも制している。
さらに、香港の新たなスーパースター、カーインライジングがザック・パートン騎手の手綱さばきでG1・香港スプリントを制して初のG1勝利を果たした一方、イギリスを拠点とするジアヴェロットがG1・香港ヴァーズを制した。香港の馬がめったに好走しないレースでの快挙だった。
ロマンチックウォリアーのシャム調教師は、マクドナルド騎手と同様に愛馬を「brilliant(素晴らしい)」と称え、その後、なぜレース前のメディア対応を控えめにしていたのかを集まった記者陣に説明した。
「ずっと厩舎にいて、あまり外に出て話をしたくなかったのです」と彼は語った。「かつての師匠であるアイヴァン・アランが、一生懸命働けば幸運が訪れると教えてくれました。それを心に留めて、本当に一生懸命やってきました」

アイヴァン・アラン元調教師(故人)は1990年代後半から2000年代初頭にかけて、フェアリーキングプラウンやインディジェナスを海外遠征に送り込んで勝利を収めたことで知られており、シャム調教師もその足跡を追っている。オーストラリアでG1・コックスプレートを制し、日本でG1・安田記念も勝利。そして今後はさらなる賞金を求めて、ドバイとサウジアラビアに向かうことを表明した。
「オーナーのピーター・ラウ氏は、サウジカップは人生に一度のチャンスだと言っています。世界最高賞金のレースですから。ダートは大きく違うということは説明しましたが、挑戦しなければ分からないですよね…彼は最高の馬ですが、より大きな挑戦をしなければならないですし、私も25年間ドバイに行っていないのでね」
リバティアイランドは、一年のほとんどの間戦線離脱を余儀なくされた種子骨靱帯炎と、本調子でない状態でのG1・天皇賞・秋での残念な結果から、見事に復活を果たした。川田将雅騎手は、昨年の三冠牝馬を後方で控えさせて、直線では外を大きく回って追い込んだ。
「リバティアイランドは自分の走りをしてくれました」と中内田充正調教師は語った。「事前に騎手と、今日は馬のリズムを重視して行こうという話をしていました。彼女らしい末脚を見せてくれましたし、前走の内容を考えても、最後までしっかりと走ってくれたと思います」
「直線を向いて、あぁ前にあの馬(ロマンチックウォリアー)がいるな、伸びとるわ、あれは止まらんわと。むしろタスティエーラも頑張っているなと、でもリバティも伸び続けているからしっかりタスティエーラを捉えられたのかなと思いました」

彼女は最後の200mを10.93秒と11.53秒で駆け抜け、タスティエーラを3着に退けた。これは勝ち馬の10.93秒と11.58秒に比べても遜色ないものだったが、5枠からのスタートで前に付けられない位置取りが響いた。
チャンピオンの証の一つは、状況が思い通りにいかない時でも勝てることだ。その観点から、デイヴィッド・ヘイズ調教師は、ザック・パートン騎手がカーインライジングをG1・香港スプリントで勝利に導いた後、「ほっとしました!」と語った。単勝1.1倍の圧倒的な人気馬は、接戦を制して初のG1制覇を達成した。
カーインライジングは、前哨戦を3連勝し、さらにはセイクリッドキングダムの持つシャティン1200mのコースレコードを更新する走りを見せていたことから、大きな期待を背負っていた。この4歳馬はその期待を裏切ることはなかったが、かといって再び圧倒的な走りを見せて場を沸かせるということもなく、ヘイズ調教師は1月下旬に予定していた香港クラシックマイルへの挑戦について「全てが白紙の状態です」と述べた。
ヘリオスエクスプレスは半馬身差の2着、ジョアン・モレイラ騎手騎乗の日本馬サトノレーヴが僅差の3着に入る結果となり、ヘイズ調教師は考えを改めることとなった。

「1月中旬のセンテナリースプリントカップに出走させ、その後でクラシックマイルに行くかどうかを決めます。今日の走りを見る限り、私なら行かないでしょう。でも、なぜこういう走りになったのかは分かっています。もし負けていたら言い訳になっていたでしょうね」とIdol Horseの取材に対して語った。
これではクラシックマイルまでの間隔が11日しかないことになるが、ヘイズ調教師はそのことについてはさほど心配していない。
「彼は素晴らしい回復力を持っています。毎レース後の食欲は旺盛で、1週間後に走らせることだってできるでしょう。ただ、スプリントで圧倒的な強さを見せない限り、出走はさせないつもりです」と語った。
「2着馬はとても良い馬で、レースがうまく運んだ時は簡単に勝ちましたが、今日はレース展開が良くなかったので弱点が露呈しました。カーインライジングにとって、全てが裏目に出たのです」
カーインライジングは14頭立ての11枠からのスタートで出遅れ、パートン騎手が前目のポジションを確保しようと奮闘する必要があり、さらにビクターザウィナーが左横から圧をかけてきたため、落ち着いたリズムで運ぶことができなかった。
「レースがどのように展開するかという微妙なニュアンスを人々は過小評価しがちです。ビクターザウィナーがレース中ずっと私の横でクビ差で先行していたため、私の馬がリラックスして落ち着くことができませんでした」とパートン騎手は語った。
「そのため馬は興奮状態になり、レース中ずっと多くのエネルギーを使うことになり、それが最後の段階でのパフォーマンスに少なからず影響したのは明らかです」
「しかし、普通の馬ならそれを受け止めながらこのレベルのパフォーマンスを維持することはできません。だからこそ、見た目以上に彼の走りは称賛に値するのです」

ヴォイッジバブルは、ロマンチックウォリアーやカーインライジングが集めたような喝采を知らない馬だが、いずれにしても香港のマイラーを本拠地で打ち負かすためには、相当の実力が必要だということを示した。
リッキー・イウ厩舎のこの6歳馬は、昨年のG1・香港マイルでゴールデンシックスティに次ぐ2着に入っており、その偉大な馬が悠々自適の引退生活を送る中、今年はマクドナルド騎手の手綱さばきでこのレースを制した。これはユー調教師にとって、セイクリッドキングダムが2009年にG1・香港スプリントで2勝目を挙げて以来の香港国際競走でのG1初勝利となった。
マクドナルド騎手はビューティーエターナルに先頭を譲り、その外を2番手で進み、残り300mで前を向いたヴォイッジバブルを促すと、追い込んできた日本馬ソウルラッシュを1馬身1/4引き離して勝利。全て順当な展開だった。
「去年より良い馬になっています。精神的により成熟し…背も高くなって、体格も良くなりました」とイウ調教師は語り、さらにマクドナルド騎手を称えて「彼に乗ってもらった騎手の中で、ジェームズが一番うまく乗ってくれます」と続けた。


しかし、ヴォイッジバブルの後ろは大混戦となり、シーズン序盤にゴールデンシックスティの跡目を狙うとみなされていたギャラクシーパッチは、その期待が消え去る結果となった。前の馬の後ろに詰まって進路なしとなり、挟まれる場面もあり、最後は7着までもつれ込むという、不運で残念な内容だった。
2400mのG1・香港ヴァーズは、紙面上では波乱含みのレースに見えたが、むしろG1よりもG2レースのような様相を呈していた。そして、ニューマーケットを拠点とするイタリア人調教師マルコ・ボッティ厩舎の5歳馬ジアヴェロットが直線半ばで抜け出した時、その印象は確かなものとなった。
G2・ヨークシャーカップ(2800m)の勝ち馬は、実際にはいくつかの好タイムを記録しており、香港国際競走で初勝利を挙げたオイシン・マーフィー騎手の手綱さばきで鋭い末脚を披露した。
ボッティ調教師は「オイシンに賛辞を贈りたい」と語った。「アイリッシュセントレジャー後、最初に彼が提案したのがこのレースでした。彼は断固としてこのレースを推していたので、そのアドバイスに従ったのです」

日本馬のステレンボッシュは、外枠から後方を選択した後、最後方から追い込んできた。モレイラ騎手は外を回して追い込んだが、残り100mで失速し、3着でゴールした。
管理する国枝栄調教師は、ドバイを視野に入れていると語った。「次走はドバイシーマクラシックを検討します」と彼は述べた。「距離は今日の走りで問題ないと分かりました。後方から大きく外を回らなければならなかったのは理想的ではありませんでしたが」