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2024 マイルチャンピオンシップ: G1レビュー

競馬場: 京都競馬場
距離: 1600m 
総賞金: 3億8880万0000円 (251万9195米ドル)

日本競馬のマイル路線は混戦模様の年が多いが、ここ2シーズンその熾烈な戦いを渡り歩いた存在、ソウルラッシュについに出番が回ってきた。京都のG1・マイルチャンピオンシップで、待望のG1初タイトルを手にした。

今年のレースは、英仏でG1を3勝しているヨーロッパ最強マイラー、チャリンが参戦。6月のG1・安田記念(1600m)はロマンチックウォリアーが制覇、2024年の国内マイルG1を2つとも海外勢に奪われる可能性もあったが、池江泰寿厩舎のソウルラッシュによってそれは阻止された。なお、これがラストランのチャリンは5着に終わった。

鞍上を務めた団野大成騎手は、金曜日にバーレーンを飛び立ち、日曜日のレースに騎乗する強行スケジュールでの参戦。昨年のG1・高松宮記念(1200m)をファストフォースで制して以来、自身2度目のG1タイトルを大歓声を浴びながら手にした。

レース展開

チャリンはスタートからペースへの対応に苦しみ、鞍上のライアン・ムーア騎手が押っ付けながらの追走となる展開で始まった。これはヨーロッパのレースとの違いでもあり、アジア圏の競馬では通常、最初の100mから速いペースで飛ばすことが多い。チャリンは全体を通して、位置取りに苦しむ場面が目立った。

レイベリング、ニホンピロキーフ、ウインマーベルらが序盤の先行争いを演じる中、人気薄のバルサムノートが先頭に立つ。一見、落ち着いた展開かのように見えたが、実際は最初の600mが33.8秒、1000m地点が57.5秒というハイペースで進行していく。

このハイペースを考えれば、直線に入って様相が一変するのも無理はない。有力馬たちは外を回って加速し、まずはウインマーベルが前に出る。しかし、団野のソウルラッシュが馬の間を抜けて、すかさず捕らえにかかる。

ソウルラッシュはそのままライバルを圧倒、エルトンバローズ、ウインマーベル、ブレイディヴェーグが2着争いを繰り広げる中、チャリンはその後ろの5着で入線した。

ガッツポーズ

ソウルラッシュの鞍上、団野大成騎手はゴール前で立ち上がったため、5万円(324米ドル)の過怠金をレース後に科された。だが、キャリアのハイライトとも言える勝利の興奮に水を差すものではなかった。

Soul Rush wins G1 Mile Championship
SOUL RUSH, TAISEI DANNO / G1 Mile Championship // Kyoto /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

敗れた1番人気

1番人気に支持されたのはブレイディヴェーグ。昨年、京都のG1・エリザベス女王杯(2200m)を制した牝馬だが、レースはそれ以来1回しか使えておらず、これまで経験したレースも全て1800m以上。マイルへの距離短縮は今回が初だった。

ラストの末脚は鋭かったが、マイルのペースに対応できず敗北。距離はもう少しあった方が良いのかもしれない。

アウェーでの挑戦

ロジャー・ヴェリアン調教師と馬主のヌルラン・ビザコフ氏は、チャリンをマイルCSに送り込むという挑戦を決行した。これは2011年に来日したサプレザ以来、13年ぶりの外国馬参戦となる。

チャリンは序盤の速いペースについていけず苦しい展開となったが、レース終盤では追い上げて位置取りを押し上げる。最後は強烈な末脚を見せたが、勝ち馬のソウルラッシュは遙か前。差し切ることはできなかった。

チャリンにとってこのレースは評価を下げるものではなく、むしろ高めたまである。チャリンはこのレースを最後に引退し、ノルマンディーのスンベ牧場で種牡馬入りとなる。

Charyn contests the G1 Mile Championship at Kyoto
CHARYN, RYAN MOORE (second from right) / G1 Mile Championship // Kyoto /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

女王の異変

入線直後、ナミュールのクリスチャン・デムーロ騎手がコース内で下馬するという心配な場面が見られた。ナミュールは終始内側でレースを進めたが、残り250m地点で隣のブレイディヴェーグに突き放され、その後失速していった。

ナミュールの脚捌きに違和感を覚えたとデムーロは説明したが、レース後の検査では今のところ異常は見られなかったと、馬主はキャロットクラブが後に発表した。

前年のマイルCS覇者であるナミュールはその後、香港マイル、ドバイターフ、安田記念でそれぞれ好走。それに加え、3歳時にはオークスと秋華賞で入着の実績を持っている。引退までにもう一度レースを走るかは定かではないが、繁殖牝馬としての素質は一級品だ。

騎手コメント

団野大成騎手(ソウルラッシュ・1着): 「最高の気分です。ゲートを出てから思っていたほどポジションは取れませんでしたが、G1で素晴らしいメンバーが揃っていたので、ある程度、テンで遅れるのは覚悟していました。そこからは馬のリズムでレースを運べたと思いますし、それが最後の伸びに繋がったと思います」

「マイラーズカップのとき、調教師からはソラを使う癖があると言われていましたが、今は大人になって充実期を迎えていますし、今日は先頭に立ってからも強い足取りでした」

「今回抜擢していただいて嬉しかったと同時に絶対に結果を残したいと思っていたので、その気持ちを絶やすことなく、良いメンタルでレースに挑めたことできました。そこも良かったのかなと思います」

Soul Rush wins G1 Mile Championship
SOUL RUSH, TAISEI DANNO / G1 Mile Championship // Kyoto /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

クリストフ・ルメール騎手(ブレイディヴェーグ・4着): 「いいレースでしたが、直線の反応が普段より少し遅かったです。まだ1600mに慣れていなくて、リズムも少し違っていました。コンディションは完璧でした。この馬にとっていい経験になったと思います」

ヌルラン・ビザコフ氏(チャリン・5着): 「今日のチャリン、そしてこれまでのチャリンを誇りに思います。最高の結果で素晴らしいキャリアの幕を閉じることは叶いませんでしたが、真のチャンピオンであると示してくれました。種牡馬としての次の章、その才能と個性は次世代に受け継がれていくことが楽しみです。今日は敗北ではありません、新たな歴史への一歩なのです」

この先は?

ソウルラッシュは香港マイルに登録しているが、出走は未定だ。マイルCSと香港マイルのダブル制覇を達成した馬は、2015年のモーリスを最後に現れていない。

レースリプレイ: 2024 マイルチャンピオンシップ

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの国際担当。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。

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