ドイツのアンドレアス・スボリッチ調教師が日曜日のG1・ドイツダービー(ハンブルク競馬場、芝2400m)に送り出すのは、460kgに届くかどうかの小さな相棒だ。その名はネームロード、大外18番ゲートという不利な枠順を引いても、スボリッチ調教師の信頼は揺るがない。
前走のデュッセルドルフ競馬場では、序盤で位置取りを悪くしたものの、ゴール前で鋭く追い込んで勝ち馬のデルガルドに1馬身差まで迫った。当時の距離は2100mだったが、舞台が2400mに延びる今回、逆転を期す。
「大きな馬ではありませんが、心は大きく非常にタフな馬です」とスボリッチ調教師はIdol Horseに語る。
「前回は少し不運でした。道中で位置を落としてしまいましたが、最後はすごい脚で伸びてきました。今回は100m距離が延びる分、デルガルドを逆転できると信じています」
しかし、ライバルは粒ぞろいだ。中でも注目はイギリスから遠征するカール・バーク厩舎のコンバージェント。
2024年の独1000ギニーを制したダーネイションと同じ、ニュータウンアンナースタッドの自家生産馬。前走のG3・チェスターヴァーズでは後の英愛ダービー馬ランボーン、レイジーグリフに続く3着と健闘した。2着だったレイジーグリフは英ダービー2着、愛ダービー3着と実績十分の馬である。
また、ドイツ国内のトライアル路線からも有力馬が顔を揃える。G3・JRAダービートライアル(バーデンバーデン競馬場)では、イタリアから参戦のジュヴェリエがパスオブソルジャーを退けて勝利。G2・ウニオンレネンではツッカーフートがホッホケーニヒに1馬身差で快勝。
そして6月上旬のG3・ディアナトライアルを制した牝馬のレディシャーロットは、ここまで2戦2勝の無敗馬。牝馬がドイツダービーを制した例は1997年のボルジアまで遡る。
「鍵を握るのは牝馬かもしれません」とスボリッチ調教師。「レディシャーロットはこれまで2戦2勝で、調整も順調。前走も着差以上の楽な勝ち方で、レース後もストレスなく落ち着いていました」
「自分の馬を除けば、ツッカーフート、ホッホケーニヒ、レディシャーロットが有力だと思います」と続ける一方、ドイツダービー8勝を誇る名手、アンドレアシュ・シュタルケ騎手がツッカーフートではなくパスオブソルジャーに騎乗することにも言及。ツッカーフートの手綱は、クリスチャン・デムーロ騎手が取る予定だ。
なお、シュタルケ騎手は今年5月末に東京競馬場のG1・優駿牝馬(オークス)でカムニャクに騎乗し勝利を挙げており、今季2つ目のクラシックタイトルを狙っている。

かつて騎手として2004年のドイツダービーを制し、香港や日本でも騎乗経験を持つスボリッチ調教師。今回は若手のヒューゴ・ブータン騎手に託すが、当日のハンブルク競馬場に恵みの雨が降ることを願っているという。
とはいえ、天気に関係なく、スボリッチ調教師はこれまでのネームロードの成長と調整過程には手応えを感じている。
「2歳シーズンは好調でしたが、当時は距離が短すぎました」とスボリッチ調教師は語る。
「それでも能力の高さは見せてくれて、3回か4回はレースを経験できました」
「今年のプランは明確で、ダービー前に2戦使うというものでした。前走はその通りに使えて、非常に有望な内容でした。ただ、今回の18番枠は簡単ではありません。雨が降って欲しいところです。日曜は雨予報が出ていて、それが本当に降ってくれれば、この馬にとっては間違いなくプラス。ハンブルク競馬場では雨が降れば枠順の不利が軽減されますが、良馬場だと厳しいですね」
「ハンブルクは最大20頭まで出走できますが、今年は18頭立て。それでもこのレースは常に厳しい戦いになります。ハイペースになりやすく、ポジション争いも熾烈です。どの陣営も、このレースのために完璧に仕上げてきていますから」
なお、G1・プリークネスステークスを制したウンベルト・リスポリ騎手は、アレッサンドロ & ジュゼッペ・ボッティ厩舎のジュヴェリエに騎乗予定。この馬はレースに先立って、ドーヴィルで行われるアルカナ・サマーセールにオンライン入札で上場されることになっている。