日本最強の3歳ダート馬は誰か。その疑問に一石を投じたのが、火曜日に大井競馬場で行われた3歳ダート三冠初戦、Jpn1・羽田盃(1800m)を圧勝したナチュラルライズ。仮にルクソールカフェやアドマイヤデイトナがケンタッキーダービーを制したとしても、この馬は世代最強の王座を譲らないかもしれない。
単勝オッズは1.3倍。圧倒的な支持を受けた伊藤圭三厩舎のナチュラルライズに対し、前哨戦・雲取賞を無敗で制したジャナドリヤが唯一、そして最大の脅威として立ちはだかると見られていた。
しかし、鞍上の横山武史騎手が中盤で折り合いに苦労する素振りを見せながらも、ナチュラルライズは4コーナーで一気に突き抜け、内ラチにささりながらも後続を5馬身離す圧巻の走り。矢野貴之騎手が騎乗、地元大井のナイトオブファイアが健闘を見せて2着に入り、ジャナドリヤとクリストフ・ルメール騎手はさらに6馬身後方(勝ち馬とは11馬身差)の3着に終わった。
満員の観客が詰めかけた大井競馬場のスタンドからは「タケシ!タケシ!」とコールが湧き上がる一方、鞍上の横山武史騎手は荒削りな愛馬を抑えることの苦労を口にした。
「嬉しいですが、すごく疲れました。スタートが早くないので、速い馬を前に行かせて、前に壁を作れればと考えていました。折り合いは難しかったですけど、よく我慢してくれたと思いますし、最後抜け出してからモタれる仕草はありましたけど、とても強かったと思います」
「本当に荒削りな仔なんですけど、着実に一歩一歩成長してくれていると思います。このまま順調に成長してくれれば、ジョッキーとしても嬉しいです」
伊藤圭三調教師にとっては、これが嬉しいG1(Jpn1)初制覇。これまで重賞は22勝(そのうち21勝がダート)しているが、G1勝ちは無かった。
「(G1に)幾度となく挑戦してきましたが、なかなか勝てませんでした。しかし、今日は気張らずに平常心で臨めたのが良かったです。人気になり過ぎている感じはしましたが、勝ててホッとしています」
ナチュラルライズは次走、6月11日のJpn1・東京ダービー(2000m)で二冠を狙う予定。その後、10月8日に行われるJpn1・ジャパンダートクラシック(2000m)では、今はアメリカ遠征中のルクソールカフェやアドマイヤデイトナと“ダート3歳王”を懸けて激突する可能性もある。昨年のこのレース覇者はフォーエバーヤングだ。
「この後は無事であれば東京ダービーを使いたいです。ゴール後もまだ余力がありましたし、距離は問題ないと思います。レースでの落ち着きが課題なので、今後の調教でしっかり折り合いを身につけさせたいですね。普段から前向きすぎる面がありますので」
父のキズナにとって、ナチュラルライズは産駒初のダートG1(Jpn1)ウィナーとなった。母系はアメリカ由来でダート寄りの血統構成となっており、祖母のドリームライターはG1・ブルーグラスSを制し、ケンタッキーダービーではアメリカンファラオの10着に入ったカーペディエムの半姉だ。