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名門の血脈、カサンドラゴーの牝系からまた楽しみな2歳馬が現れた。G1・ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルターフの勝ち馬、ヴィクトリアロードを全兄に持つ良血馬、アンダブがカラ競馬場でのデビュー戦を圧勝。ロイヤルアスコットに向けて、視界良好の初戦を飾った。

5月5日、北半球の2歳戦が始まってまだ間もないこの日、カラ競馬場の直線6ハロンで行われたメイドンにアンダブは姿を現した。2024年のタタソールズ・オクトーバーセールにて、29万ギニーでカタールのアルシャカブレーシングに落札された良血馬だ。

とはいえ、単勝オッズは9倍。決して低い評価ではないものの、飛び抜けた注目株というわけではなかった。後のジョセフ・オブライエン調教師が「勝てると確信していたと言えばウソになってしまいますが」と振り返ったのも納得できる。

ゲートが開くと、アンダブはスタートダッシュを決めて前方の位置に着ける。ほとんどの馬が初出走のレースだけあって、大きな動きはなく淡々とレースは進行。後半に入り、ライバルが少しつづスパートを開始する中、ディラン・ブラウン・マクモナグル騎手が騎乗するアンダブは楽な手応えで先頭に並びかける。

残り2ハロンを超えたあたりで、アンダブは先頭に立って突き放し始める。以降は後続の馬を寄せ付けることなく、最終的に2着に4馬身3/4差をつける圧勝でデビュー戦を飾った。

出走馬中トップの斤量(130ポンド・59キロ)を背負いながらの圧勝、まさに文句の付けどころがない完勝デビューだった。

レース後、ジョセフ・オブライエン調教師は「ちょっと気性に不安が残るので、とりあえず一回使ってからだと思っていました。調教では気の悪さを見せていましたから、実戦を経験させたいなと。勝ち方やレースセンスは素晴らしかったですね」とコメント。

今後の目標について問われると、調教師はロイヤルアスコットの初日に組まれる6ハロンG2の名前を挙げた。

「順当に行けば次はG3・マーブルヒルS。目標としてはG2・コヴェントリーSまで行きたいですね」

JOSEPH O’BRIEN / Duke Of Edinburgh Stakes // Ascot /// 2023 //// Photo by Ascot

マーブルヒルSは5月下旬にカラ競馬場の6ハロンで開催される。ブラックベアード、フェアリーランド、カラヴァッジオといった多くのG1優勝馬を輩出してきた出世レースとして知られる。昨年の勝ち馬、アリゾナブリーズもG1で複数回入着している強豪だ。なお、コヴェントリーSとの連勝は2016年のカラヴァッジオが最後となっている。

アルシャカブレーシングと共同でアンダブの馬主に名を連ねる、生産者のトレヴァー・スチュワート氏にとっては嬉しい勝利となったことだろう。同氏が育て上げた牝系、カサンドラゴー(2021年に25歳で死去)から始まった物語は今、新たな章を迎えようとしている。

アンダブの祖母、カサンドラゴーの牝系からは近年多くの名馬が現れている。娘のハーフウェイトゥヘヴンは2008年の愛1000ギニーなど、G1を3勝。その娘、マジカルは愛チャンピオンSを連覇するなど、G1レースを7勝する活躍を見せた。

ハーフウェイトゥヘヴンのもう一頭の娘、ロードデンドロンもG1を3勝。息子のオーギュストロダンはディープインパクト最後の傑作として、英ダービーやプリンスオブウェールズSを制し、2025年からアイルランドのクールモアスタッドで種牡馬キャリアをスタートさせた。

アンダブの全兄、ヴィクトリアロードも活躍馬の一頭だ。ディープインパクトの後継種牡馬、サクソンウォリアーを父に持つ同馬は、弟と違って初勝利までに5戦を要したものの、初勝利から4連勝で2022年にキーンランドで開催されたG1・BCジュヴェナイルターフを制した。

3歳シーズンの後半、9着に終わったG1・コックスプレートを最後にアイルランドのバリードイルからオーストラリアへと移籍。キアロン・マー厩舎の一員として出走した2023年のG1・VRCチャンピオンズマイルは7頭立ての最下位に沈み、それ以降の出走歴はない。

関係者によると、ヴィクトリアロードは現在、マー厩舎が所有するボンボンファームで復帰に向けたトレーニングを続けている。ジャンプアウトでの試走も終えており、近いうちにバリアトライアルでの実戦復帰を予定しているという。

VICTORIA ROAD / G1 Breeders’ Cup Juvenile Turf // Keeneland /// 2022 //// Photo by Eclipse Sportswire/Breeders Cup

興味深いのは、アンダブの誕生にあのエイダン・オブライエン調教師が貢献していたことだ。2022年、スチュワート氏はティックルドピンクの交配相手となる種牡馬を選ぶ際、ノーネイネヴァーとサクソンウォリアーのどちらにするか迷っていたという。

助言を求められたエイダン・オブライエンは、サクソンウォリアーを迷わず推薦した。その背景には、当時デビュー前にもかかわらず、バリードイルの厩舎スタッフから高い評価を得ていたヴィクトリアロードの存在があった。そしてその翌年、アンダブが誕生した。

エイダン・オブライエンの息子であり、アンダブを管理するジョセフ・オブライエンは同馬の距離適性について、将来的には7ハロンまで対応できるだろうと話す。しかし、今は6ハロンの距離がベストのようだ。

「初戦から6ハロンに対応できるスピードはあると思っていましたし、最終的には7ハロンまで距離を伸ばせると思います。その考えは今も変わりありませんが、現時点では6ハロン向きだと言えるスピードの持ち主です」

5月のカラでデビューを勝ち、ロイヤルアスコットまで駒を進めるとなれば、ヨーロッパの2歳路線ではエリートコースを歩むことになる。先述のカラヴァッジオはコヴェントリーSの後、G1・フェニックスSを制し、翌年のG1・コモンウェルスカップまで無敗を貫いた。

アンダブはその期待に応えられるのか?気性には一抹の不安を抱えるが、そのスピード能力の高さに疑いはない。全兄のヴィクトリアロードに続くのか、そして超えることはできるのか、注目に値する有望株だ。

将来の展望: ヨーロッパ・2歳シーズンの間は目が離せない有望株

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