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チャリンの競走馬生活を京都で締めくくるというのは、オーナーであるヌルラン・ビザコフ氏のアイデアではなかった。これはロジャー・ヴェリアン調教師の発案で、欧州のトップマイラーが日本のマイラーたちと、今シーズン最後のマイルG1で対決するという、歓迎すべき稀有な機会が実現した。しかし、カザフスタンの石油王は快くこの挑戦を受け入れている。

わずか2週間前、淡い青地に黄色というビザコフ氏の勝負服が、シドニーのローズヒル競馬場で一躍脚光を浴びた。ジェローム・レニエ厩舎所属のラザットがゴールデンイーグルで半馬身差の2着に入ったのだ。この2着で本馬は200万豪ドル(130万米ドル)を獲得した。

チャリンはマイルCSで1億8000万円(127万米ドル)の1着賞金を競うことになる。これは決して軽視できない額だ。10着でも360万円(2万5000ドル)の出走奨励金が出る。しかし、この貴重な挑戦は賞金以上の意味を持つ。種牡馬価値を高めることが目的というわけでもない。もっとも、勝利すればその面でもプラスにはなるだろうが。

「ヴェリアン調教師が日本に馬を送ることを私に納得させたのです」とビザコフ氏はシドニーでIdol Horseに語った。「ロジャーには日本とのつながりがあり、妻の花子さんは日本人です。彼は日本の競馬が大好きなのです」 

Owner Nurlan Bizakov
NURLAN BIZAKOV / Sydney // 2024 /// Photo by Idol Horse

ヴェリアン調教師がもし勝利すれば、波乱万丈だったこの一年の中でも大きな功績となるだろう。オバイド殿下とアモレーシングという重要なパトロンを失う一方で、新たにゴドルフィンからの支援を得た年だった。

2010年と2011年のエリザベス女王杯をエド・ダンロップ厩舎のスノーフェアリーが連覇したのを最後に、この20年間、日本で勝利を収めた英国調教馬はさほど多くない。マイルCSに限れば、外国調教馬の勝利は未だない。フランスの牝馬サプレザが2009年と2011年に3着に入ったのが最高成績で、英国調教馬は2009年のエヴァズリクエストの10着以来、この試練に挑んでいない。

しかし、ダーレー・ジャパン元取締役でもあるヴェリアン夫人を通じた日本とのつながりが、ヴェリアンに欧州が同レースに送り込んだ最強の候補馬でマイルチャンピオンシップに挑戦する動機を与えた。

ヴェリアン調教師は水曜日の朝に京都競馬場でマイルCSでの鞍上、ライアン・ムーア騎手を満足させた追い切り後に「私たちはいつも大きな野心を抱いていますし、彼を日本で走らせることに胸を躍らせています」とJRA主催の記者会見で語った。

調教師は、これまで唯一の日本遠征歴であるG2勝ちのスリプトラについても言及した。2012年のジャパンカップではジェンティルドンナの後塵を拝し、17頭立ての最下位と大敗した。

「日本で管理馬を走らせることは、とても胸躍る瞬間でしたが、G1で戦うために日本に来るのにふさわしい馬がどれほど優れている必要があるかという、とても厳しい教訓となりました」とヴェリアンは続けた。

「その遠征の後、私たちはチャンピオンホースを連れてこられるまでは日本に戻ってこないと決めたのです」

Roger Varian, trainer of Charyn
ROGER VARIAN / Sandown Park // 2024 /// Photo by John Walton

今や彼はそのチャンピオンを手にしている。チャリンはG1・クイーンアンS、G1・ジャックルマロワ賞、G1・クイーンエリザベスII世Sでの見事な勝利、そしてG1・ロッキンジS、G1・ムーランドロンシャン賞での不運な2着により、欧州ではトップマイラーとして君臨している。これは、日本の現役エリートマイラーたちへの挑戦資格を十分に持っていることを示している。日本勢は史上最強とまではいかないものの、それでも打ち破るには最高のパフォーマンスが必要だろう。

「私たちは日本競馬を尊敬していますし、日本馬は世界中で成功を収めています」とヴェリアン調教師は語った。

その尊敬の対象には、2022年マイルCS覇者で、日曜日の重要な対戦相手となるセリフォスも含まれる。この5歳馬を調教する中内田充正調教師は、園部花子ことヴェリアン夫人の妹の夫でもある。

「日本に馬を連れてきて成功を収めることが、いかに大きな挑戦であるかは理解しています。しかし、今回はチャリンで、そして将来的にもまた、私たちはこの挑戦に取り組みたいと考えています」とヴェリアン調教師は付け加えた。

そして、ビザコフ氏はヴェリアン夫妻のおかげで、シドニーでの惜敗の後、自身の成長著しいスンベから世界の反対側で、もう一つのシーズン終盤の国際レースに挑戦する機会を得た。スンベ・オペレーションは2010年に購入した英国のヘスモンズスタッド、2019年に買収したモンフォール・エ・プレオー牧場、そして2021年に加えたメズレー牧場を所有している。

ビザコフ氏にとっては、かなり急速な拡大だった。2006年にタタソールズのブック2で最初の1歳馬を購入し、その中にはG2勝ち馬のステイヤー、アスカータウも含まれていた。

スンベは現在、ミシュリフ、ブルーエンジェル、ゴールデンホード、ベルベクを種牡馬として所有しており、まもなくチャリンもその仲間に加わる。チャリンは2歳、3歳時の有望馬から、4歳でエキサイティングなチャンピオンへと成長した。

Jockey Silvestre de Sousa and Charyn
SILVESTRE DE SOUSA, CHARYN / G1 Queen Anne Stakes // Ascot /// 2024 //// Photo by David Davies

もし彼が競走馬生活の締めくくりにマイルCSを制することができれば、それは自身の繁殖としての可能性を向上させるだけでなく、世界のトップレースでより多くの馬を走らせようとするビザコフ氏の国際的プレイヤーとしての野心をさらに示すことになるだろう。

「マイルCSの勝利は種牡馬価値には影響しません」とビザコフ氏はシドニーでIdol Horseに語り、チャリンの参戦がスポーツマンシップに基づく決定であることを強調した。また、種付け料はすでに設定され、その週のうちに発表されることも付け加えた。ダークエンジェル産駒の芦毛馬は、フランスのモンフォール・エ・プレオー牧場で3万5000ユーロ(3万7000米ドル)で供用される。

「まあ、勝てば来年の価値に拍車が掛かるでしょうけどね」と、彼は後から付け加えた。

そしてそれは、本国でも日本でも、ヴェリアン調教師にとっても大きな後押しとなるだろう。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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